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龍宮の潮吹

 僕はそこで海の写真を撮り、下からの画角で、通ってきた鳥居にシャッターを切る。

 皆が見にきてるのは百二十三基の鳥居だけではない。この突端部でたまに見られる『龍宮の潮吹』という、海水が吹き上がる現象を見にきてる人も多いと思う。

「めっちゃ……風、吹いてるね」

 風で少し遮られながらも七瀬さんがそう言った。

 海が近いからか、上にいたときより冷たい風が吹いて、肌寒い。

 僕は海で削られた荒々しい断崖を目の当たりにして、思わずシャッターを切る。

 風が吹いているということは、もしかして。

 そう思った次の瞬間、僕らが今いる一番下の鳥居近くから、少し離れた海に触れてる崖から海水が少し吹き上がった。これが所謂、龍宮の潮吹なんだろう。

 さすがに写真で撮っても迫力がないので、カメラからビデオに切り替えた。

「すごいね」

 撮影し始めて数秒経ったとき、両肩に軽く手を置かれ、後ろから女性が話しかけてくる。

 誰かと思い、後ろを振り返ってみると、肩を置いているのはゆきさんだった。

 僕は素直に「そうですね」と返そうとしたが、あることに気づいて言うのをやめた。

──肩に置かれた彼女の両手はとても震えているのだ。

「雪さん⁉︎ それ大丈夫ですか?」

 心配する気持ちが、考えるより先に口を開かせた。

「えっ、それって何?」

 彼女の反応からして、本人はまだ気づいてないらしい。

 僕は震えている原因が寒さだと思い、バッグからカイロを取り出して雪さんに渡した。

「これ、よかったら使ってください」

 冬なのに昨日は暖かかったから僕は半袖でいたが、そんな中、雪さんは長袖だった。

 多分、冷えや寒さに弱いんだと思う。

「あっ……ありがとう」

 カイロを受け取り、震えてることに気づいたのか少し驚いていた。

 海が近いから、ここにいると常に冷たい風を浴びることになる。だから僕はある提案をした。

「僕らだけ先に、上行ってきます?」

「え、別にここでいいよ。隼人君これ見るの楽しみだったでしょ」

「いや、でも、雪さんが寒そうですし」

「それなら私だけ戻るよ」

 雪さん一人で戻ると言ったが、僕はそれが心配でしかたない。

「雪さんが体調悪そうにしてるなんて、見過ごせませんよ!」

 少し引かれそうな発言をしてしまって。

 あくまで旅仲間としての発言。でも変に誤解されてしまう言い方かもしれない。

 周りのみんなが吹き上がる海水に夢中になって顔を上げる中、雪さんだけが俯いた。

──やっぱり誤解されたんだ。早く訂正しないと。

「あっ、その」

 焦って言葉が詰まる。

「……実は寒くないし体調も悪くないんだ」

 雪さんは僕らの距離だからこそ聞こえるくらいの小さい声を出した。

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