旅仲間
いつもよりも四時間も前に起きて、一時間くらい悩み考えた結果、旅を共にしてくれる人が必要な事に考えついた。
朝は頭がスッキリしていていつもより頭が回る。そして旅仲間を探す方法も思いつく。
少し前まで青い鳥のアイコンのアプリーーSNSで旅を共にしてくれる人を募集した。
名前風見隼人、性別男、年齢17、住み長崎。必要最低限書いた。だけど旅の目的は何にするか迷った。
なんせ「ある日不気味な声が聞こえ、それが災害の予兆で、早く安全な場所に家を借りなければいけない」なんて誰も信じてくれない。
考えを落ち着かす為にひとまず昼食を食べに自分の部屋を出た。
台所に行くと母がご飯を作っていた、こっちに気がつき驚いたように
「隼人⁉︎ 今日はどうしたの?こんな早くに」
と声を上げた。
正直言っていつもと比べ早いだけであり、普通の人から考えると遅すぎるぐらいだ。
「……別に」
無口な僕はそれから特に話そうとはしなかった。
昼食を食べ終わり部屋へ戻り反省した。
本当は話したかった、相談したかった。でもいつも無口なのに急に色々話し出すとイメージが崩れる。
ーー小学生の頃、無口で澄ました態度がクールで、人気になると思っていた時期があった。学校でも家でも、どこでもそんな態度をとっていた。
だが、気づいた時には初めはいた友達さえもいなくなり事の重大さに気づいた。
一度は「イメージを変えよう」と思い試行錯誤した事もある、しかし一度貼ったイメージは簡単には消せなかった。
その仮面を外せたとしても、もう元の自分はいなかった、寧ろ今よりも中身の無い人間になっていた。
それからイメージを変えるのが恥ずかしくなり、怖くなった。
例え相手が家族であっても。
「……あ、そうか」
全く知らない人なら新しいイメージを作れるのかもしれない事を考えついた。
「色んな人と旅を楽しみたい」にする事にした。
「よしこれで一旦OK」ここ最近考えすぎて疲れてたのもあり、発送用の段ボールしかない自分の部屋で独り言を吐いた。
疲れにより眠気が襲ってくる。とりあえず昼寝をする事にした。
昼寝なんていつぶりだろうか、いつも昼に起き暇つぶしにパソコンでゲームばっかりしてる。
そんな事も考えられないほど眠たくなってきて眠りについた。
ーー15時半に起きスマホを見ると通知が来ている、ともちーという人からのダイレクトメッセージだった。
文だと伝えにくいし、お互いを知れるから。という事で通話アプリで話す事になった。
「初めまして」声を聞くところ若そうな感じがした。
名前すら知らない相手とは少し話しにくい、からまず名前を聞く事にした。
「初めまして。その名前とかって……」
「あぁ、すみません。俺、相川智樹といいます」
お互いに軽く挨拶を済まし本題へ入った。
「えっと、あー、えっと、あの」
人と通話する機会が特に無い僕にとってこの状況で何を言えばいいかわからず、もじもじしていた。すると智樹さんが話しはじめてくれた。
「名前しか言って無いから色々話しますね。年は19、今は車中泊していて宮崎あたりにいますーーーー」
それから色々聞いた。19で車を持ってる、しかも働かずに車中泊中。
「どんなに金を持ってるんだ」と本音が溢れそうになった。
「そして旅の目標は無いんだよね」
旅をするのに目標が無いと言う、旅をしようとした理由を強いてあげると言えば暇だったから、らしい。
だが、その時の智樹さんは少し寂しそうな声をしていた。