撮影中断
無理矢理話題を変えて、七瀬さんの気を引いた。
「あっ、そうだね。撮ろっか!」
椅子に座ったままポーズをとるらしく、そのまま話を聞いた。
「えっとまず、顔を少し上げてくれる?」
言われた通りに、座ったまま少し上に顔を向けた。
次の瞬間、七瀬さんが目の前まで迫って来て、顎を指でクイッと持ち上げた。所謂、顎クイというやつをやられた。
急に近づかれ、顔が燃えるように暑くなる。
「え……」
声を出そうにも、緊張で思うように出せない。
「ちょっと、何してるんですか⁉︎」
近くで見ていた雪さんが僕の元に駆け寄り、僕の唇にあたるように手を当てた。
柔らかくて微かに石鹸の香りがする。
雪さんは、今まで聞いたことのないくらい大きな声で、話す。
「未成年に手を出すのは犯罪ですよ! それに隼人君に同意とりましたか?」
それに対して七瀬さんは
「別に手を出そうとはしてないけど……」
とニヤニヤしながら言う。それに続けて
「それに隼人君は同意したけどなぁ」
と言い出した。
同意? なんとことだろう。
もちろん僕には、覚えながない。
「えっ、そうなの?」
雪さんが顔を覗き込んで訊いてくるので、僕は首を横に振った。
「してないって言ってま……」
「いや、言ったよ。『資料写真』を撮っていいって」
雪さんの話の途中に、遮るように七瀬さんが入る。
*
その後、約五分間も七瀬さんの説明を無言で聞いた。
簡単にまとめると、七瀬さんは恋愛漫画家で、さっきのはキスシーンの写真を撮ろうとしたらしい。ちなみに僕が同意したというのは、今日の昼に車内で、漫画の資料の撮影を承諾したことらしい。
色々言いたいことがあって、久しぶりに口を開く。
「いや、さすがにあれが同意だとしても、会って初日の人にこんなことします⁉︎ 普通」
雪さんの手を顔から少し離して、唾が飛ばないように注意して喋った。
「別にいいんじゃない? だって、声は今日が初めてじゃないし」
流石の発言に唖然とした。
やっぱり、そういう職業の人は、僕らと少し考え方が違うのかもしれない。
「じゃあ、撮影開始しよっか」
そう七瀬さんが明るく言った。
また、さっきみたいな、いや、さっきより過激な写真を撮られると思うと、先が思いやられる。




