涙の正体
雪さんは、反対でもないが賛成でもない。そんな感じに見えた。けど、少し反対に気持ちが向いてるようにも見えた。
雪さんは行きたくないのかなぁ、と思い、僕が出来る限りの優しい声で
「えっと、雪さん? あの、嫌だったら、嫌って言ってもらっても構いませんよ」
と言った。すると、雪さんは慌てて、涙目になりながら
「え、その、嫌とじゃなくて……」
と答えにならない返事をした。
僕はこういう場が苦手で、何をすればいいか分からず戸惑っていた。そしたら七瀬さんが助け舟を出してくれた。
「ほら、雪ちゃん言ってみ、誰も雪ちゃんの事を責めないよ」
その言葉を聞いて、雪さんは話してくれた。
「その、早く清水寺に行きたいなぁって……」
雪さんは誰よりも清水寺を楽しみにしてたらしい。
「じゃぁ、やめ」
「いやー、私なんかの為に止めれるわけないですよね、皆さんごめんなさい。隼人君もごめんねぇ」
やめると言おうとしたのに、雪さんに遮られた。それに雪さんは、少し笑って平気みたいにしてるけど、多分作り笑顔だった。
まぁ、雪さんが嫌ならやめるか。そう思い
「雪さんがそう言うなら止めましょっか。清水寺楽しみですね!」
僕がそう言うと、雪さんは涙目で僕の目を見つめてこう言った──
「え、なんで……」
その言葉の意味を理解出来なかったが、多分理由が知りたいと言ってるんだろう。
だから僕は理由を話した。
「だって、どんなに綺麗な景色より、仲間の方が大事ですから。皆さんが笑顔で見れない景色なんて綺麗とは言えませんしね」
僕が言い終わる頃には雪さんの頬に涙が流れていた。その涙はどんな景色よりも綺麗だった。
──え、言い方強かったかな。どうしよう。何処ら辺が悪かったんだ。
「あの、大丈夫ですか?」
僕がそう聞くと、雪さんは頬に流れる涙を服の袖で拭き
「大丈夫」
と言い頷いた。
今は冬だけど、あまり寒くない。それなのに腕まで隠れる服を着てきたのは涙を拭く為なのかもしれない。
そう思ったが、多分それはない。だけど、涙を拭く以外にこんな服を着てくる理由があるとしたら、日焼け防止か腕にある何かを隠したい。この二択した考えつかない。
── 目元は赤いが涙をもう引いていた。
「……さっきはごめんね、神社行こう」
雪さんの心の中で何かが変わったのか、神社に行く事を賛成してくれた。
「え、良いんですか?」
心の汚い僕は裏があると勘ぐり、理由を聞き出そうとした。でも雪さんの口から出た言葉はとても眩しいものだった。
「うん! 神社とか色んなとこ行って、この旅を楽しもう」
心の汚れも消える様な笑顔でそう言った。
雪さんは一気になった。でも、一瞬見えた表情に悲しさが混じってる事を僕は気づいてしまった。
「あの、やっぱ、だいじょ」
僕は口から言葉を発する事を止めた。これ以上、雪さんの心に踏み込んではいけない気がした。今は──
*
「皆さん、着きましたよ」
智樹さんがコンビニの駐車場に車を停め、声をかけてくれた。
僕らは
「ありがとうございます」
と言い、智樹さん以外がコンビニに入って行った。
智樹さんはまだ車内にいるので話をするのに好都合だ。
僕は三人に
「忘れ物したので取ってきます」
と声を掛け、不自然に見えないように車に戻った。
車のドアを開けると、泣いてはいないが浮かない顔をしている智樹さんがいた。
僕は助手席に座り、智樹さんの方に体を向け、頭を下げた。
「さっきはすみませんでした、つい気になって、みんなが見てる前なのに……」
すると智樹さんは優しげな声で
「いいんだよ、泣いてた俺が悪いんだし」
と言った。僕はその言葉をそのまま受け取れるような人間じゃない。かといって否定すると、次は罪の取り合いになる。それだけは避けたい。
僕に残された選択肢は一つだけ。偽善者だろうが何だっていい。
「僕は一番年齢が低いですが、他の人より智樹さんと長く話してました。……だから何かあったら相談してください。話せば楽になる事もあります!」
「……ありがとう。なんかあったら相談させてもらうね」
智樹さんは車を出てコンビニに向かった。僕もそれを追いかけるようにコンビニに向かった。
後ろから見える智樹さんの後ろ姿はいつもとは変わらない。




