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真逆というか、正反対

「実は、────」

 竹原さんが物凄く小さい声で喋るので、聞こえなかった。

「ごめんなさい、ちょっと聞こえずらいです。もう少し大きくお願いします」

 そうお願いすると、僕の耳に近づいて

「……皆さんに、タケちゃんと呼んでもらいたくて……」

 多分僕の解釈が合ってればあだ名が欲しいらしい。

「タケちゃん……ですか」

 それにしても、竹原さんが言ったあだ名が可愛すぎる。僕が自分につけるなら『はやぼー』とかなのに。

 どうやってあだ名をみんなに呼んでもらえるか考えたがいい案が出てこない。すると、タケちゃんが何か閃いたらしい。

「────これとかどうですか?」

「んー、結構不自然だけどやってみましょうか」

 ここから僕とタケちゃんのあだ名を呼んでもらう作戦。題して『みんなのあだ名を決めるついでに作戦』が始まった。

 僕は早速みんなに声をかけた。

「皆さん、呼び方の話なんですが……」

 なんと呼べばいいのかわからないからあだ名をつけたい。的なことを言った。

「俺は好きなように呼んでください」

「私も好きなようにどうぞ……」

 智樹さんと雪さんはこんな感じだった。すると、さっきからチラチラ僕の顔を見ている七瀬さんが

「隼人君緊張してる? もっとラフにいこう。あ、私もなんでもいいよー」

 七瀬さんが言うように僕は今緊張している。初めての人と会った緊張でも雪さんの前で恥をかいた緊張でもない。二人で秘密の作戦をしている緊張だ。

 三人の誰か一人でもあだ名がつけられれば簡単だと思ってたのに、上手くいかない。

 僕はタケちゃんの方を見た。タケちゃんは僕を見つめ神に祈るように手を握っている。

 流石にここまでされたら引けるわけもない。覚悟を決めて強引に話を進めた。

「竹原さんは、えっと、……タケちゃんでいいすか?」

 流石に強引すぎたのか智樹さんが止めに入った。

「ちょっと隼人君、それは流石に……」

 竹原さんに目で合図を送った。

「タケちゃん……、いいですね。皆さん是非そう呼んでください」

「え?」

 智樹さんは少し驚いたがすぐに普通に戻り

「じゃあ、タケちゃん、宜しくお願いします」

 と、あだ名呼びをしてくれた。それに続き他二人もその呼び方に慣れるように頑張っている。

 緊張で冷や汗をかいた。でもどこか楽しかった。とにかく『みんなのあだ名を決めるついでに作戦』が無事成功した。

「タケちゃん、こっち」

 タケちゃんを三人と離れたところに呼び出しそこで色々話をした。

「タケちゃん流石にヒヤヒヤしましたよ」

 するとタケちゃんはこれでもかと感謝してきた。

「隼人君、本当にありがとう」

 いつも感謝されるような生き方をしていない僕にとって、その言葉は死ぬほど嬉しかった。

「……その、僕で良ければこれからも頼って下さい。旅は支え合いで成り立ってますから」

 僕は照れたようにそう言った。

 そういえば、タケちゃんとなら普通に話せる。他の人が話しにくいとかではなく、タケちゃんとは特別な、友達のような感じがする。

「若いのに深い事言うね」

「若いのにって、タケちゃんこそ発言が若者じゃないですか」

「そう? じゃあ逆に隼人君は大人だね」

「僕なんか全然大人じゃないですよ。ただ見栄を張ってるだけです」

「ほら、その発言自体が大人っぽいよ」

 こんな感じに楽しく話せる相手が初めてできた。その相手が旅で会うおじいさんだとは思いもしなかったが。

「そういえばタケちゃんは免許取らなかったんですか?」

「いや、二十年前くらいに返納したんだよ」

「何か病気とかですか?」

「違うよ。高齢者が乗り続けるのはあまり良い印象がないからね……」

 タケちゃんは特に乗れない理由はないが、相手の為に車を返納していた。

 この話を聞いて僕は、タケちゃんのような人がこの世に必要なんだと思った。

 それにしてもタケちゃんと僕は、真逆というか、正反対というか。

 僕は猫背でタケちゃんは真っ直ぐ。

 タケちゃんは発言が若くて、僕は大人びている、らしい。

 タケちゃんは物知りで、僕はこの世界をまだ全然知らない。

 そして一番大きな違いは、タケちゃんはこの世に必要で僕はそうではないということ。

 また意味のない事を考えてしまった。

 そうやって自分を自分で苦しめてしまう。僕の悪い癖。

「おーい二人とも、出発しますよー」

 動けば考えるのを少しはやめられるからすぐに動いた。そして僕達は出発した。これから始まる旅の第一歩を今踏み出した。

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