ヒロイン、そのまえ
むかしむかしのお話です。
1人の女の子がいました。
たいへん美しい女の子でした。
ある時、世界に危機が訪れるのです。
世界に穴があき、そこからの爆発のせいで世界が滅びてしまう。
しかし、その穴には埋められるピースがありました。
それがその女の子でした。
美しい女の子は不思議な力を持っていて、その子がその穴を埋めれば世界は何も変わらず平和なままでいられる。
1人の犠牲。
かわいそうだ、そう思いながらもみんな彼女に託し、彼女もそれを受け入れました。
彼女に後悔がないように、なるべくなんでもしてあげたい、とみんな出来る限り彼女に尽くしました。
彼女ももう一生分のぜいたくをしたから思い残すことはないかもしれない、そんな風に思いはじめました。
けれど、彼女と幼い頃から仲がよかった男の子はそれを受け入れたくありませんでした。
あれを壊せば彼女は死ななくて済む。
彼女が穴を埋める日。
彼は世界に抗いました。剣を持ってそれに立ち向かいました。けれどそれはあまりにも強大でした。
彼女は言いました。
もういいよ、ありがとう。
しかし、穴に飛び込む直前、彼女の体がふわりと浮いたのです。
彼が、彼女を突き飛ばして、剣を穴に投げ込んだのです。
そうして世界は光に包まれました。
残ったのは、彼女だけでした。
不思議な力で守られた彼女を残して、世界は滅んだのです。
勇者が世界とヒロインを天秤にかけて救ったヒロイン。
それが、私です。