最後のはじまり
「ようやく見つけた」
7月のある日、通学途中の改札の前。
僕の元に駆け寄ってきた女の子は、あまりにも美しくて。
僕はその現実味のない光景にただただ飲み込まれていた。
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僕は自分のことを主人公みたいだな、と思っている。
自分の人生の主人公は自分自身だろう、とかそういう話ではく、本当に、自分は主人公っぽいと感じるのだ。よくあるラノベのどこにでもいる平凡な男子高生なんて実際には全然よくいるものではない。どこにでもいるならクラスに1人なわけないし、どこにでもいる平凡な男子高生はむしろその他大勢の名前さえもついていないクラスメイトのほうだろう。
僕は、頭も見た目も、おそらく普通にしていて75点くらい。よく描かれる、平凡と表現されながら実際は平均よりやや高い、少し美化された少年。それが僕だった。
主人公みたい、ただそれだけ。
それは呪いのように、何を試しても75点くらい、がんばれば85点くらいは取れても秀でることはできない。
これは、そんな僕に訪れた、主人公みたいな夏の出来事の記録だ。
「君に殺されにきたよ、勇者くん」
そう笑う君は、夏のすべてを纏っているようで。