第3波~箱舟~
数日が経った朝、“博士”から手紙が届いていた。
ーユキ君へ
例の遺物の2割ほどの解析が終わったよ。
報告したいことがあるから一度来て欲しい。
もちろん都合のいい日で構わないよ
“博士”よりー
「はぁ・・・俺、ユエなんだけど・・・」
届け先を間違えていたようだ。
ユエは頭を掻きながら着替える。
外に出てユキノが住むテントに向かう。
「おーい、ユキー。居るかー?」
返事が無い。
ユエがテントの中に入るとユキノの姿は無く、整理整頓された机の上に書置きが置いてあった。
どうやら先に“博士”の所へ向かったらしい。
ユエは溜息を吐きながら“博士”の所へ向かう。
「おーい。“博士”ー。来たぞー」
「あ、ユエ!おはよう!」
「おうおう、ユキおはやーさん」
テントの中には嬉しそうなユキノと自信たっぷりな顔した“博士”が待っていた。
ユエはガラクタだらけの長椅子に座る。
“博士”が例の遺物を手にしながら話し始めた。
「君たちが持って帰って来てくれたこの謎の箱状の遺物。
とても調べてみたらとても興味深い物だったよ。
前時代の遺物である事は確かだが発掘例を我々はまだ見たことが無い。
これも1つしかない為に安易な分解は出来ないんでね。丁寧に調べてみている所なんだ。
それでまず一つ目の発見だがこれを見てくれたまえ。
この円形の目のような物。実はこれに非常に近い物を“学者”達が所有していてね。
数もそれなりに出てきて使い方なども判明している物だ。
それに類似してる物だ。ならばこれは恐らくだがその遺物と同じく目の前にある物、風景などを複写。もしくは転写するからくりではないだろうか??
そして、ここに注目していただきたい。
この穴が開いたような形状。
恐らくは音声通信のシステムだろう。軍が用いている遺物で似たようながあったのを私は思い出した。
つまりはこの箱。記録と通信媒体なのではないのか??
そうなれば色々と用途も解りそうな物だと助手と共に似たような遺物が無いかを現在進行形で探しているところだ。
良いかい?この箱はつまるところ“小さな箱舟”といったところだな」
ユキノとユエは呆気にとられていた。
長すぎて何を言っているのか解らなかった。
特に難しい用語も無かったのに目の前の変態の言葉が理解出来なかった。
ただ歴史的にも価値のある便利道具なのだけは二人には理解出来た。
「な、なぁ“博士”。そんな価値ある物ならあいつらに預けた方が良いのか?」
「ユエ君。確かにこれは価値があるが。これ1つしか無いうえに我々の生活や戦いを根本から覆してしまうかもしれない恐ろしい物でもあるんだ。もっと詳しく調べて解るまでは秘匿にしておく方が良いだろう」
「ユエ・・・僕もそう思うよ。もしも僕たちの発見のせいで全てが崩れていったとしたら恐ろしくてたまらないよ」
「ユキ君の考えはもっともだ。ユエ君。君たちの身を思えばこれは私たち4人だけの秘密にしておいた方が安全という物だ。勿論、私も一切口外しない」
ユエは深く考えて、確かにそうだなと納得した。
この小さな遺物はひとまずは“博士”と助手とユキノとユエの4人だけの秘密となった。