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PLANET:E(仮)  作者: 語楽 文章
2章
14/18

第14話 錯綜

多目的輸送艦ホライゾン CIC(指揮所) 9時頃

「島津隊長補佐、チャーリーのスパイダーの制御パルスが途絶えました」

「ササエル、再度スパイダーにコンタクト。それと交信途絶前のアルファとブラボーのアルマジロ、スパイダーの映像をチェック。不審な箇所をリストアップして隊長が戻る前に提出。

 尚美主任。その…すまない。これで2機目だ。もう1機も恐らくは…」

 モニターに忠美の浮かない顔つきが映る。

「仕方ありません。でもスパイダーが押し潰された様になるなんて原因が思い当たりません。島津さん前に言っていた不審生物の話について何か知ってませんか?」

「私も就任後に探してみたんだが映像や画像はない…。記録として残っているのは立入禁止になる前の救助者と作業を行った防衛隊員の証言のみだ」

「証言の内容は、どういった物だったんですか?」

「当時の音声を文字に起こしたものだ。確か大きな蛇を見た証言が多かったと思う。後は鬼の様な人と言うのがあったな。他の災害でも怪異的なたぐいの話は少なからずある。正直よく理解できん」

「参考になるかと思ったんですが、それだけでは何とも言えないですね。あっ隊長」

「隊長、方針は決まりましたか?代表は何と?」

 勇仁は首を横に振ると二人に歩み寄った。


「代表の秘書室に通信ログを流す様にした。クライアントの本部長(島津官房長官)は本会議中(国会)だ。浅沼氏に事態の説明をし、暗号通信で現状えいぞうを送る段取りをした。

 それからホライゾンにシーファルコン(マリナイズヘリコプター名称)で孤立した隊員を回収するよう要請、BS部隊のガンナーを1名搭乗させてある。LCAC-2も念のため浜辺に向かわせる段取りだ。

 島津隊長補佐、送ってくれた通信ログは確認した。間もなくホークのメンテナンスが終わる。アサシンブレードとヘルアローⅢミサイルをそれぞれ4発持たせてある。ホークをモニターしてくれ。堀石主任は既存チャンネルでデルタのスパイダーのモニターをチェック。追って指示を出す。

 現時刻を持って調査を一時中断。これより現地の調査隊員をホライゾンへ撤退させ体制を整える。なおMIA(作戦行動中行方不明)は認めない。全力で協力して欲しい」

「「はい、了承しました」」


 ホライゾンの飛行甲板から1機のヘリコプターが飛び立った。

「こちらシーファルコン、ハイパー・シックス・ワン(61)。ホライゾンを離艦した。以後そちらの指揮下に入る。CIC星守隊長指示を乞う」

「了解ハイパー61、こちら星守。指定したポイント上空に着いたら大きく旋回し周囲を把握。状況が全く分からない。スパイダー、黒い蜘蛛型ロボットの辺りだ」

「61了解。もう目の前だ。旋回し状況を確認する。頂上付近は開けている。近くに停止しているロボットを確認。倉庫の近くにも隊員1名を発見」

「了解61、先行したアルファとブラボー隊の姿は?他にもチャーリーが近くに居るはずだ。ガンナーからも何か見えないか?」

「こちらガンナー。61と同じだ。引き続き周囲を伺う」

「星守隊長、こちらホーク。ポイント上空に到着しました。念の為交信を中継します。島津隊長補佐、引き継ぎをお願いします」

「了解ササエル。チャーリーこちら島津、ホークにて頂上周辺をモニターしている。チャーリー姿が見えないが通信が聞こえるか?応答されたし」

「星守隊長、デルタのスパイダーの映像回復しました。補佐、チャーリーのアルマジロの映像ほうはどうですか?」

 三人はお互い顔を見合わせると頷いた。

「こちらホーク。チャーリー、アルマジロの映像が回復しモニターしている。映像が暗いが何処に居る?チャーリー応答せよ」


「こちらチャーリー、浜田です。連絡が取れてよかった。陽子隊員が倒れたため派出所内にて待機中。外傷はなし。恐らく貧血だと思います。倒れる前に自分で薬を飲み…ちょっと待って下さい。意識を取り戻しました」

「ホーク了解。頂上まで向かって欲しい。ヘリが上空を旋回している。撤退し体制を整える。

 61、こちらホーク。1分隊が頂上に向かう。近くにいる隊員と一緒に回収してくれ。まだ他の隊員も居るはずだ。61・ガンナーは引き続き周囲を捜索」


「チャーリー了解、陽子隊員。聞こえるか?本部一旦無線を切ります」

「この音は?ここは?」

「慌てるな。ゆっくり起きるんだ。ここは派出所だ。倒れる前の事を覚えてるか?」

「浜田さん?何も…おぼえてないです。どのくらいのあいだ」

「10分も経ってない。ヘリコプターが近くまで来ている撤収だ。自力で歩けそうか?よし、みんな頂上に向かうぞ」

 浜田分隊長はアルマジロを陽子に渡すと立ち上がった。


「ホーク、61了解。降下ポイントを探しながら捜索する。何だガンナー。倉庫がどうした?

 うわっなんだ。スティック(操縦桿そうじゅんかん)が急に…重い…ちっくしょう。コントロールがきかない。繰り返す。コントロール不能。メーデーメーデーメ…」

 シーファルコンの音声と警報アラームが途絶えた。

「隊長、近くの倉庫に人影が。61のテイルローターから黒い煙が、きりもみ回転しながら降下してます。61機体を立て直せ墜落するぞ61…。

 シーファルコンダウン。シーファルコンダウン。地面と接触…ハイパー61の墜落を確認」

 胴体から火花を散らしシーファルコンは道路を滑る。ガンナーが飛び降りると斜めに傾き、ローターブレードがへし折れ辺りに煙が舞った。

「ホーク!倉庫の手前5mにヘルアローを発射しろ!今すぐだっ!」

「はっ、はい!目標設定。ヘルアロー発射します」

「ホークは倉庫周辺を注視」


「こちらチャーリー。本部、今の爆発おとはなんです?」

「浜田分隊長、星守だ。頂上でヘリが墜落。近くの倉庫にミサイルを撃った。今デルタをトラックでそちらに向かわせている。チャーリーは墜落現地に急行し隊員の保護、捜索に向かってくれ。状況に応じて発砲を許可する」

「発砲?本部、ちょっと待って下さい。こんな状況では承服しょうふくしかねます」

「チャーリー言いたい事はわかるがこれは命令だ。責任は私が取る。頼む。」

「…チャーリー了解っ、墜落現場へ向かいます。ホーク援護を」


 チャーリーが一列縦隊で煙が立ち昇るヘリコプターへ警戒態勢で歩み寄る。

「チャーリー、星守だ。分隊を確認した。浜田分隊長と陽子隊員はヘリに向かえ、残りは孤立した隊員を保護して分隊長に合流。上空はホークが警戒しているが注意されたし」

「浜田了解。陽子隊員ついて来てくれ。そっちは頼んだぞ。あそこに人が、ガンナーか?おい大丈夫か、立てるか?パイロットは中か?一緒について来てくれ」

 浜田分隊長は斜めに倒れたヘリのフロントガラスを叩くと覗きこんだ。

「まだ意識があるぞ。これより救出する。俺が登って中に入る。

 あった担架だ。先にこの隙間から出す。陽子隊員広げておいてくれ。

 大丈夫か?よし今外してやるぞ。俺を台にして操縦席の後ろにしがみ付け早く。よし支えてるから手を放していいぞ。パイロットを隙間から出す。引っ張ってくれ」

 浜田分隊長は操縦席を登りヘリから出ると息を切らして座り込んだ。

「本部、こちら浜田、救助者2名を保護うち1名負傷。陽子君容態を診てくれ。本部デルタはまだですか?」

「こちら本部星守、現在向かっている。陽子隊員、負傷者の怪我の具合は?」

「…意識はありますが、大腿部だいたいぶ(ふともも)からの出血が酷く止まりません。どうしたらいいか」

 陽子の声色から興奮し今にも泣き出しそうな様子が伺える。


「こちら本部、陽子隊員メディックは君しかいない。対応して欲しい。少し待て…」

「陽子君、ハンナだ。いま分隊長と君のカメラをモニターしている。ハハっずいぶん酷い顔じゃないか。美人が台無しだぞ。大丈夫落ち着いて、初めてのオペを思い出すんだ。あの時と同じ私も一緒にいる。分隊長、彼女の医療ポーチを全部出して」

「わっ私のポーチにも薬が入ってます。手が離せないのでお願いします」

 ハンナは出された医療用具を見ると口元がほころんだ。

「流石私の助手だ。よし分隊長。錠剤の右から2番目の抗不安薬を意識のあるうちに彼に半分飲ませて、それから彼のドックタグを見たらベルトを緩めるんだ。大腿部の付け根をスカーフ(クーフィーヤ)にボールペンを挟んで緩めに縛ったらペンを時計回りにまわして、その位でヘアピンで固定して。それから彼の口に医療ポーチのベルトを噛ませて両腕に肘を乗せて押さえてくれ。そこのもう一人は足を押さえて。

 陽子君は血だまりをナプキンで拭きながら傷口を探して」

「んっんーんーーっ!」

「こっからだ。先輩ありました。何かの破片が刺さってます」

「こっちでも見えたよ。何とかなりそうだな。よ~しいいぞ。シザー(医療用はさみ)で傷口周辺の服を大きく切るんだ。陽子君もついでに手を拭いて、ビニール手袋をしてシザーと包帯を用意。分隊長、彼の名前は?」

「タグはマイクと書いてある」

「いいかいマイク、これから君の傷口に入った破片をハサミで取る。とにかく我慢するんだ。よし、陽子くん破片を取ろう。みんなしっかり押さえて」

 マイクは大きく頷くと口元のベルトを噛んだ。

「んんっんーーーーーーんっふぢこ!」

「マイクさん我慢して…先輩取れました」

「急いで包帯を少しきつめに巻いて。少しペンを緩めたら破片を包帯の上に乗せてくれ。大きいけど大腿動脈だいたいどうみゃくまでは達してないと思う…他に出血はないか確認。陽子君よく頑張った。みんなお疲れさま」


 デルタのトラックは緩い上り坂に差し掛かった。

「…状況の説明は以上です。司隊員、リールアンテナに絶対ぶつけないで下さい。それから少し心拍数が高い様ですけど大丈夫ですか?」

「はい!少し緊張してるだけで、でも大丈夫です」

「司隊員、私も同じです。お互い頑張りましょう」

「…フゥそうですか。それを聞いてちょっと楽になりました。ありがとうございます尚美主任」

「はい。四差路が見えてきました。あのスパイダーの前で一旦車を止めて降りて下さい。

 カドリさんは私と一緒に止まっているスパイダーの復旧を試みます。他の人は今接続されているケーブルをリールアンテナから外して下さい」

 司たちは止まっているスパイダーのケーブルを先頭のリールアンテナから引き抜く。

「尚美先生質問、俺すげー不安になってきたんだけど、どうしてこっちに状況が入ってこないんだよ」

「ちょっと待って下さいカドリさん。それは…私が…作業に集中したいからです。合流したらチャンネルを切り替えます我慢して下さい。はぁこれじゃあダメだ勿体無いけど復旧は諦めます。みなさん急いでこっちに集まって下さい。

 これから電源をバイパスしてスパイダーのメモリから直接データを抽出します。カドリさんそこの2つのレバーを反時計周りに…出来たらカバーが外れるので気を付けて下さい。ルーカスさんは同じ様にこっちをお願いします。上手くいきそうですね。

 二人はその間にこちらのスパイダーのケーブルをリールアンテナに接続して下さい。これでまた音が鳴ってもスパイダーの近くなら通信出来ると思います。それから状況に応じてですが発砲許可が出ています。みなさん気を付けて下さい。それでは急いで現場に向かいましょう」

 トラックに向かう途中頂上の先から銃声が響く。みんな顔を見合わせると急いでトラックに乗りスパイダーの後に着いた。目の前には道路の頂上と地平線と空に煙が上がっている。匂いと共に煙が立ちこめる。

「みなさん、頂上に出ます。状況は錯綜さくそうしていますがチャンネルを切り替えます。誤通信に気を付けて下さい」

 トラックは頂上の地平線の上に出た。


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