左大臣と愚痴酒 その弐 と、変動
いやー・・・しかし酒が美味いね。
「今日は俺のお気に入りの・・・(ゴソゴソ)・・・この米酒、いっちゃおうか」
あ!これ神戸に本店をかまえるという、幕州酒造の?
「そう!幕州の名酒、菊前酒だ!高かったぞこれ・・・何せお取り寄せだから」
お取り寄せ?いくらしたんだ?
「俺の今月の金、半分はつぎ込んだ!」
はぁっ!?勿体ねええ!そんだけあったら俺の小説買う金に使わせて!源氏草子読みたい!
「小説なんて・・・(ゴクッ)、酒に比べれば所詮、タダの紙よ!」
なんだとコラッ!ただの紙が人を感動させるからこその小説だろ!バリッ(つまみを食べる)!
「まあとにかく、今は菊前の美味さってもんを・・・」
ドタドタドタッ!
「左大臣様!左大臣様!申し上げます。今日の昼ごろですが、紀伊国の海岸に見たことも無い
ような言葉を話す人々が上陸したようです!」
「何?じゃあ、その人々は?」
「今しがた、そこの大部屋に到着いたしました。
身振り手振りで会話したところ、どうやら遠い遠い南方から命からがら逃げてきたようで。
どうも、外敵が来たとか?」
「なるほど・・・なら急がねば」
「左大臣様!また何かあれば、すぐにご報告いたします。
大根麻呂様もご同行ください!」
お、分かった・・・
左大臣の後を追い、大部屋に到着すると、たくさんの役人と肌の黒い、涼しげで豪華な
格好をした人々が数十人ほどいた。
何か覚えがある。
「南方研究書」に載っていた、ジャワの国の人々だ。
しかし、果てしなく離れているジャワの国の人々がここまで来るとは、どういう事だろうか。
大根麻呂は悟った。この人々は日本に救いを求めている。
何か強大な敵が、東進を続け、日本にも迫っている。とすると、次は・・・
「左大臣様!朝鮮の国から、至急の使いが参りました!」
「何?朝鮮からも・・・?」
世界が、日本が動こうとしているのではないか・・・大根麻呂は時代の動きを感じたような、
大いなる思考をめぐらせているのであった。
いきなり急展開です。大根麻呂の本領発揮はまだまだです。