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魔法少女のボスになった  作者: 八九秒 針
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第九話

「これ怪しくない?」


『姿は魔法で消すんでしょ?変装の必要あるかな……』


「これは必要なことだよ。魔法を頼り切ってはいけない。万が一を考えるんだ」


「『はぁ……』」


 気が重いって顔をしてるな。なにがそんなに気に入らないのやら。やってることはただパンダ三兄妹になっただけじゃないか。


「せめて着ぐるみ用意してよね。これただのパジャマじゃない。パンダ柄なら許されると思ってるの?仮面までもこもこだし、なんなのよアナタ……」


『僕これ着る意味あるかな?仮面だけつければよくない?ちょっと動きずらいよ……』


「二人とも文句を言うな。私だってパンダになってるんだ、お互いこれで高めあっていこう」


「アナタはパンダの着ぐるみだけどね!アナタだけ!」


『なにを高めあうのか小一時間問いただしたいね』


 さて、準備は整った。ここから魔法で姿諸々消しての隠密行動になる。ロンドンで起きた荒魂が原因の諸々、白黒つけようじゃないか。パンダだけに。


「……んふふ!」


「『変な人……』」


 行動開始!


  ◇


「ここが病院。人が入りきらなくて野戦病院みたいになっちゃってるけど。……この人たちはみんな、悪意に抗って戦った善い人達なのよね。……待ってて、きっと、助けるから」


 ……リリネットの生き方は辛そうだな。赤の他人でもその人が善い人なら理不尽に苦しんで欲しくないのだろう。他人の苦しみを自分も味わうというのは、果たしてどれだけ過酷な試練か。


『リリネット、そんな泣きそうな声をしないで。泣いて喜ぶのはいい、だけど悪意に負けて泣いたらダメなんだ。こんな悪意なんか吹っ飛ばしてやるって、リリネットはいつものリリネットがいいよ』


 悪意に負ける、か。なにかの悪意で傷ついたものを悼んで泣くのは、悪意に負けたことになるのだろうか。その涙は果たして、その悪意が知ることはあるのだろうか。

 リリネットが負けたんじゃない。リリネットはただ善いものに寄り添っているだけだ。


「悪意に苦しむ者がいたとして、その者に寄り添うことをするのなら、それは悪意に抗っているということ。悪意に負けず、近づいているということ。大丈夫、リリネットの涙は敗北の証なんかじゃないさ」


 さぁ、奇跡を起こし勝鬨をあげよう。


「魔法は願いの力……私の願いは魔法という形で具現化する……ただ願えばいい……悪意からの解放を……」


 いつものように、いやいつもより強く願ってみる。私にできることなど所詮この程度。これで叶わないなら私に打つ手はない。さぁ、どうなる?


「「「ううぅぅぅ……」」」


 昏倒した人たちが呻きだしている?これは効いているのか逆にまずいのか……。続けるべきかどうかの判断がつかない。やはり私は無知だな……。


『!!鏡面世界に荒魂の反応あり!しかも、凄い数だよ。これは……悪意が鏡面世界に逃げ込んだ……?』


「なんにせよアタシの出番ね!白が悪意を追い出すなら、その悪意はアタシが責任をもって倒す!私は……魔法少女なんだから……っ!!」


 私の魔法に意味はあったと捉えるべきか。だが鏡面世界には恐らく過去にないほどの荒魂が出現している。それをたった一人で相手にしようというのか?それはダメだ。私も一旦鏡面世界で共に戦うべきだ。


「私も行く。往復にはパン太郎の力を借りることになるが、その方が確実だ」


『白……ごめんよ……往復は、できないんだ。魔力の問題じゃない。魔法精霊には世界の秩序を守るための縛りがかけられているから。だから、この戦いは……』


「アタシとパン太郎で戦い抜くわ。アタシは、世界を正義で守り抜く、愛と平和のジャスティスガール、魔法少女リリネットだもの。この力に誓って、逃げたりなんかしない!!」


 昏倒した人たちからまだ悪意は完全に追い出されていない。往復ができない以上、私はここに残り願い続けなければいけない。だが、それは同時に鏡面世界に荒魂を送るのと同義。追い出された悪意は鏡面世界で荒魂となるのだから。それをパン太郎がついているとはいえ実質一人で相手にするなど……無茶と言いたい……だが彼女は、私が知る魔法少女たちは、こんな逆境でも諦めたりしない……!!


「私は私にできることをしよう。リリネット、やっちまえ」


 限界まで願いの力を分け与える。それは龍気となり彼女の力になる。戦えと、彼女に言っているのだ。私は酷い奴かもしれない。


「ふふ、任せなさい!私は世界を正義で守り抜く!愛と平和のジャスティスガール!魔法少女リリネット!アタシの涙は、勝利のためにあるのよ!」


『行くよ!結界起動!『鏡面世界』!!』


 二人は行った。戦いに向かったのだ。


「私は私のするべきことをしよう」


 私は動き出す。魔法少女のボスとして。


  

  ◇sideリリネット◇


「はああぁぁぁぁぁぁ!!ジャスティス!タックルゥゥゥゥ!!」


 今ので一体何十体目かしら?もしかしたら何百かも。それでも一向に荒魂の姿は消えない。普段こんなにいたら現実世界が危ないけど、今は白がいる。現実世界から悪意を追い出してるから今は時間がかかっても倒しきればいい。白から貰った龍気のおかげで一体倒すのにも苦労しないしね。


「まとめてかかってきなさい!全部ぶっ飛ばしてあげるんだから!」


「あら、それ私たちも手伝っていいかしら?」


 だ、誰?こんな時に。声は後ろから聞こえた。振り返ってみると―――


「私たちのボスは日本の外でも戦っているのね。見習わなきゃね、私たち日本の魔法少女も」


 赤、青、緑、白、銀、金、黒。龍を纏う七人の魔法少女の姿がそこにあった。


「助太刀するわ。共に戦いましょう!」


「……!!ええ!!ありがとう!!」


 共に戦う仲間がいてくれることが、こんなに心強いなんて。今まで一人で荒魂と戦ってきたから忘れていた。人とは本来、そういうものだった……!!


 

  ◇side白◇


 今頃鏡面世界では日本の魔法少女たちも加わってリリネットと共に戦っていることだろう。


「ありがとうございます、熊田先輩」


「いいってことよ。私にできることはこれくらいだもの」


 リリネットが鏡面世界に行ったあと、私は熊田先輩と連絡をとり日本の魔法少女に助力を願いないか頼み込んだ。熊田先輩がにゃん吉たちに連絡を、にゃん吉たちが日本の魔法少女を鏡面世界の一か所に集め、魔法で呼んだ熊田先輩に私も鏡面世界に連れて行ってもらい、日本に飛んだ。そこで彼女たちに願いの力を分け与え、また彼女たちを連れロンドンに飛んだ。

 私の役目はそこまで。ロンドンではリリネットが大量の荒魂と戦っていたが、私はすぐ現実世界に戻り悪意を追い出す作業に戻った。


「彼女たちなら、この悪意を晴らせられるはずだ……!!」


 私は信じている。彼女たち魔法少女を。

 

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