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魔法少女のボスになった  作者: 八九秒 針
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第四話

 雫ちゃんが降りてくる。やっぱ衣装とかがあると魔法がばえるな。まぁ流石にこの年でコスプレしようとは思わんが。


「雫!すごかったよ!一人で倒しちゃうなんて!」


「……一人じゃ、ない」


「悪い奴じゃないってのはわかったけどよ、あんたが何者か聞くまで帰すつもりはねぇぜ?」


 視線が私に集まる。お話したい気持ちはこちらも同じだが、多分もうそろそろあれがくるはずだ。


『荒魂の消滅を確認。鏡面世界の崩壊まで10、9、8、7……』


 ほらきた。最後に挨拶くらいしていくかね。


「私が何者かなど知らなくていい。私はいつか君たち全員の名前を聞きたいがね。ではさらばだ。また会おう」


『……2、1、崩壊。お疲れさまでした』


「ちょっとま―――」


 待てないよ。だけどまた会えるさ。私はまだ君たちのサインを貰ってないしね。


「生の魔法少女はインパクトが違うなぁ!色紙は鏡面世界でも消えないし用意しとくべ」


 魔法少女が実在する世界とか最高か?この調子なら魔女っ娘もいたりしてな。ははは。

 その日は魔女っ娘ドラマを見てから寝た。密度の濃い一日だったぜぇ。


  ◇翌日◇


「また呼ばれた……最近はあんまり呼ばれないから二日連続は懐かしいなぁ」


 なんにせよ呼ばれたからにはするべきことをしよう。魔法少女に会いに行く。自宅には色紙が用意してある。自宅にいる夜に呼ばれたのは僥倖だ。問題はこの色紙が鏡面世界から出ても残るかだが……。


「考えても仕方ない。戦闘音は……あっちか。待ってて魔法少女たち!」


 サイン貰いに行くから!!


  ◇


「……はっ!……ふっ!……しっ!」


「雫、すごい強くなったね。もう私たちじゃ足引っ張るだけだよ」


「これもあの古の龍王さまの力を分けて貰えたからなんだよね?いいなぁ」


『古の龍王はかつての荒神との戦いで滅んだはず……あの男が本物かどうかはまだ確信がもてないにゃ』


『仮に本物でなかったとしても、力を継いでいるのは間違いのない事実だ。ガウ。彼には我らに協力してもらいたい。ガウ』


 戦闘音に直行したら雫ちゃんが一人で荒魂と戦っていた。これはいじめか?と思ったが、雫ちゃんは危うげなく戦えているし、どこか楽しそうだ。望んで一人で戦っているのかもしれない。それはそうとサインを……。


「私が何者かなど考えなくていいと言ったろうに。私自身この力の出どころなどわからないのだから。や、こんばんわ」


 緊張してサインくださいって言えないよぉぉぉ。


「!!てめぇ!昨日は何勝手に消えてんだ!今日こそは逃がさねぇぞ!」


 魔法少女に腕を掴まれる……幸せだ……。


「丁度あなたとお話がしたいと思ってましたの。私は雪音。まずはあなたのお名前から教えてもらえるかしら?」


 赤色の魔法少女、雪音。覚えた。この子は五人組のリーダーのようなポジションにいることが多かった子だ。キリっとした赤い目からは強い意志を感じる。


「私の名前か……日目自(ひめじ) (しろ)だ。先に言っておくが私に話せることなどほとんどない。私自身、なぜ私が魔法使いになれたのかさっぱり心当たりがないからな」


 本当は自分の名前を明かすのも気が引けたが、名乗られて名乗り返さないというのも失礼かと思って名乗った。ただ私は魔法少女のような特別な存在ではなく、現実ではただの会社員だ。そこはわかってほしい。


「白さんは古の龍王じゃないのかい?あ、僕は秋ね。よろしく」


 名前呼びだとぉぉぉぉ!?魔法少女に名前で呼んでもらえるなんて涙がでそうだ……。銀色の魔法少女、秋。覚えた、覚えましたとも!


「古の龍王……昨日ウサ美が言っていたやつだな。残念ながらそんなかっこいい存在に心当たりはない。私はしがない、会社員だ」


「会社員があんなでたらめな魔法を使えるわけねぇだろ!てめぇ本当のこと言わねぇと……」


「ひえぇぇぇぇぇ」


 巴ちゃんは相変わらず怖いね……眼力だけでも圧が凄いのに腕を握る力が強くなってもう幸せだ……。


「巴ちゃん白さんが怯えてるよ。もっと優しくしてあげなきゃ。あ、私は飛鳥だよ!白さんよろしくね!」


 優しい……白色の魔法少女、飛鳥。覚えました……陽だまりのような笑顔をする人だ。


「騙されないでね白さん?飛鳥は腹黒だから、心の中で何考えてるかわからないよ。私、愛子。よろしくね」


 えぇ……飛鳥さんのそんな一面信じたくないよ……いやむしろ騙されたままでよかったかも……。ともあれ青色の魔法少女、愛子。覚えました。

 これで魔法少女たち全員の名前がわかったな。

 赤色の魔性少女、雪音。

 緑色の魔法少女、真木。

 銀色の魔法少女、秋。

 白色の魔法少女、飛鳥。

 青色の魔法少女、愛子。


 ここまでが魔法精霊にゃん吉担当で。

 ウサ美担当の魔法少女が。


 黒色の魔法少女、雫。


 ガオガオ担当が。


 金色の魔法少女、巴。


 と。魔法精霊含め抜かりはない。絶対サイン貰うぞぉぉぉぉ!!


 ドゴォォォォン……


 おや、雫ちゃんがデカい一撃を放ってとどめを刺したようだ。改めて見るとやはり今の雫ちゃんは纏う空気が違う。いやそのままの意味で。あれは龍気だとウサ美は言ったが、やはり私の願いの力とは少し違うんだよなぁ。まぁ細かいことはいいか。


「……ボス!」


 ん?ボス?雫ちゃんが私を見てボスと呼ぶ。いつから私は魔法少女のボスになった?


「雫がね、あなたのことをボスとして認めたって。だから一緒に戦ってほしいって。これは雫だけじゃなくて私たち全員同じ意見。白さん、私たちのボスになって下さい。そして、荒神を討つため力を貸してください」


 七人の魔法少女が私の目を真っ直ぐ見据えてくる。私の力を頼りたいのだろう。確かに今まで見てきた感じこの娘たちはあまり強くない。いやそれは私を基準に考えたらの話だが、今後も荒魂と戦うのならば今のままでは危ない。そこに雫ちゃんと言う目に見えて成功した例があるが故の判断か……。

 これは困った。何故なら私は自分の意思でここに来れない。私の魔法をもってしてもこれだけは叶わない。きっともうすぐ送還されることだろう。


『荒魂の消滅を確認。鏡面世界の崩壊まで10、9、8、7……』


 これだ。だから私はボスの責任を果たせない。だけど……。


「君たちを助けたい……。私にそれが一時でもできるなら、私はボスになろう」


 この答えをきっと私は後悔しない。


『……2、1、崩壊。あなたの決断に感謝を』


 何故なら私は魔法使いだから。願いを叶えるのは私の得意とするところだからだ。

 

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