第三話
『『『ギャァァァァァオオォォォ!!』』』
「「「「荒魂!?」」」」
「さっき倒したばかりなのに!」
「三体も!?」
「しかも三体とも強大よ!」
「さぁさぁ、荒魂が来ましたよ?私にはわからないけどきっとあなた達魔法少女はあれと戦う理由があるのでしょう?私のようにただ突然呼ばれて倒すまで帰れないから戦うのではなく、確固とした意志の元に戦う理由が。私は邪魔をしない。好きに戦ってください」
邪魔なんかするはずないんだよなぁ。こんな特等席で魔法少女の戦いが見られるのだから!!
「てめぇが呼んだんじゃねぇのか!?てめぇを消せばあの荒魂も―――」
『やめろ巴。ガオ。この者は荒神に通ずる者ではない。ガオ。それより今は奴らを倒すのだ。ガオ!』
ガオガオ……!!こういう時に味方してくれるキャラがお前だったんだな!いいなぁ相棒マスコット。私にもパンダの相棒マスコットが欲しいなぁ。
「来るわよっ!真木はその男を離れたところに置いてきて!邪魔になるわ!」
「ああ、もう!こんな時に!!ほら、そこでにゃん吉たちとじっとしてて!」
緑色の魔法少女、真木。蔓使い。覚えた。さっきのガサツな口調の娘が金色の魔法少女で巴。覚えた。あとでサインを貰うためしっかり記憶しておかないと。
『それで君は何者にゃ?ああ、にゃんはにゃん吉にゃ』
『うさはウサ美うさ。あなたも魔法精霊と知り合いうさ?』
『オレはガウガウ。さっきは庇ったがお前を信じてるわけじゃないぞ。ガウ』
蔓が解かれたので座りなおしながらなんて答えようか思考する。さっきは本当のことを話そうとしても信じてもらえなかったが、今このマスコットたち相手なら信じてもらえるだろうか?
「私は魔法使いだよ。君たちのようなマスコット……魔法精霊?は、残念ながら君たちしか知らない。私も相棒に欲しいんだけどね」
もし相棒として来てくれるならパンダがいいです。名前は……パン太郎とかどうだ?ちょっとカッコよすぎかな?
『にゃんたちをマスコット扱いするのはやめるにゃ。にゃんたちは魔法少女たちの相方としての誇りがあるにゃ』
「これは失礼」
ならばこれからは魔法精霊とちゃんと呼ぼう。名前も覚えたし困る事はないだろう。にしても彼女たち押されてるなぁ。にゃん吉担当の魔法少女五人が一体、ウサ美担当の魔法少女が一体、ガウガウ担当の魔法少女が一体の配分で戦ってるが、バランス悪くないか?
「戦力を三等分しないのは何故だ?一人で一体を担当するのは辛かろう」
『あれで三等分できてるのだ。ガウ。雫と巴は個で十分に強い。ガウ』
ほーん?確かに見ているとどこも戦況は同じだが……どこも勝てそうじゃない。それより雫というのは流れからしてウサ美担当の黒い魔法少女の娘だな?覚えた覚えた。
『それよりお前は自分のことを話すうさ!うさの雫をじろじろ見るなうさ!!』
「へいへい。私はさっきも言った通り魔法使いさ。この鏡面世界には私の意思関係なく呼ばれ、あの荒魂を討伐するまで帰れない。最近は彼女たち魔法少女が奮戦してるからか私はあまり呼ばれなくなったがね。話せるのはこれくらいかなぁ」
これ以上なにを話せと言うのか。はっきりした質問でもされれば答えるが、自分から話した方がいいことなどわからない。それよりも―――。
「目に見えて押されてるよ?彼女たち。さっきの戦いで力を使い果たしたとかかい?助けないの?」
一番善戦してるのが雫ちゃんかなぁ。次が巴ちゃん。五人組の方は一番辛そうだ。魔法少女の相方を名乗る魔法精霊さんならなにか手助けできるんじゃないのかな?と思って聞いてみたが……。
『にゃん達は今、荒神から呪いを受けてるにゃ。本来自然回復するはずの魔力が、現世で食事を摂らないと回復しないにゃ』
「つまり?」
『……っ!!なにも…できないにゃ……』
七人の魔法少女たちは劣勢で、それを支援できる相方も今は役立たず……と。話しながら戦いを見ていたが彼女たちに切り札のようなものはなさそうだ。もしかしたらこの魔法精霊たちがその切り札となりえたのかもしれないが、今は期待できない。ならば……。
「私が行こう。願いのままに奇跡を起こす、本物の魔法というものを見せてやる」
魔法使いが魔法使いたる所以を教えてやろう。
◇
「ちぃ!さっさと片を付けないと分が悪ぃ、だが、ガオガオの助けも期待できない……」
「……ふっ!……はっ!」
「「「「「はぁ……はぁ……」」」」」
近くで見てみると随分と疲れているのがわかる。巴ちゃんはまだ余力在れど焦りが見える。雫ちゃんは淡々と戦闘をこなしているが有効打は無し。五人組はもうバテバテだ。
まずは五人組の相手しているのから倒す。
「潰れろ」
魔法とは願いの力。願いは口に出したほうがイメージがしやすい。
「「「「「えっ!?」」」」」
一体始末完了。次は巴ちゃんの相手してる奴を倒そうか。
「塵となれ」
同じ倒し方じゃつまらない。それじゃ魔法のなんたるかを示せない。だから倒し方は変える。
「……てめぇ……マジで何者だ?」
巴ちゃんの問いには答えず最後の一体を見る。最後はどんな倒し方がいいか……。
「私に……やらせて……お願い……」
「雫!?何言ってるの!?もう限界じゃない!!」
「『お願い』か……くふふっ!魔法使いにお願いをするとはわかってる。いいだろう、魔力をあげるからやってごらん」
「……ありがとう」
私には魔力と言うものがよくわからないのだが、要するに私の魔法の根源たる願いの力を分け与えればいいのだろう。これくらい……だろうか?
「っ!!はあああああ!!」
「雫が……龍に……!?」
あれぇ?なんでそうなる?雫ちゃんが龍になりたいと願ったのか?あ、よく見たら黒いオーラが龍の形をとってるだけだ。あれが雫ちゃんたちの言う魔力か?私の願いの力と微妙に違うな。
『あれは龍気。魔法の原初たる古の龍王が持つと言われる始まりの魔力。今の雫は、荒神にさえ届きうる!!』
ウサ美さん……?いつものうさうさ口調どこ行ったの……。
「マジかよ……」
「これで……きめるっ……!!」
クライマックスってやつか。ちょっと早くない?まだ顔合わせて一日も経ってないよ?
「「「「「いっけぇぇぇぇぇぇ雫ぅぅぅぅぅ!!!!」」」」」
「ドラゴンブレス!!!」
『ギャァァァァァァオォォォ……』
雫ちゃんの放ったブレスが荒魂を消し飛ばした。後に残るは背中から黒いオーラを吹き出す雫ちゃんの後ろ姿。
…………かっこよ。