表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女のボスになった  作者: 八九秒 針
17/21

第十七話

「ではまずこの場にいる大人たちの正体から明かそうか」


 イクサはまずそう切り出した。この場には私を除いて大人が十人ほどいる。イクサもその一人だが、その正体は確かに気になる所だ。

 基本的に魔法少女はその正体を隠し通さなければならない。これは彼女たちの力は荒神から世界を守るために振るわれるものであって、人間同士のいざこざには関わらないようにするためでもある。故にこの場に事情を知る大人が十人でもいることはかなり稀な事態といえるだろう。果たして彼らの正体は……?


「結論から言えば、私たちは元魔法少女か、その相方たる魔法精霊だ」


「そうきましたか……」


 これは予想していた答え。だけど魔法少女はその役目を終えたら記憶を失うと熊田先輩から聞いていたから、この可能性は少し頭を過ったに過ぎない。故に私はまさかありえないと一瞬否定しそうになったが、なるほどこのイクサという女性はそういうことかと納得する。


(似てる……熊田先輩と、このイクサという女性は)


 熊田先輩は自称魔女っ娘だがその実正体は魔法精霊である。ただにゃん吉たちと決定的に違うのは「人間として生きる道を選んだ」ということ。似てるのだ、そこが。この女性と熊田先輩を重ねて見てしまうのはそれが理由だろう。


「イクサ、あなたは魔法精霊、なのか?」


「その質問に答える代わりに、私の要求を呑んでもらう、と言っても聞きたいか?」


「ああ」


 意外だ。イクサがいきなりこんなことを言ってくるのも意外だし、それに即答で「はい」を返している自分にも意外感を感じる。イクサの話を聞いていなかったわけじゃない。イクサの言う要求を軽んじているわけでもない。だが考える前に答えは出ていた。これもあなたの影響ですかね、熊田先輩。


「……ふふっ。即答とは驚いた。その返答、もう聞かなかったことにはしないからな。ふふふっ。さて、いいだろう、では私の正体を明かそうか」


 あの返答にやり直しなど望んではいないが今のイクサの顔を見るとちょっとトイレに行きたくなる。ホットミルク飲み過ぎたかな……?それに……。


「あのイクサさんが!」

「伝説の世代の生き残りが遂に……」

「忙しくなりそうね」

「きゃー!!」


 この騒ぎ様である。伝説の世代ってなにさ……。なんにしても覚悟を決めねばならないようだ。


「私の正体は―――」


 イクサが口を開く。と同時に。


『お腹空いたー。これ頂戴ー』


 ずっと鞄の中に入れていたルルが腹を空かせて出てきた。ルル、今いいとこだからメッ!あとにしなさい。


『食べる―』


 私のアイコンタクトなどルルに通じるはずもなく、ルルはイクサの前に置いてあったサンドイッチを食べ始めた。こら。


「……ホワイト。この黄色いスライムはなんだ?」


 ええと……元荒神だなんて口が裂けても言えない……。ここはなんとか誤魔化すしか。


「私の枕です。魔法的ななにかで使ってるうちに普通の枕がスライムになったんです」


「そうか……」


 ……厳しいか?


『もぐもぐ』


「……かわいい。うむ!可愛いから良しとしよう!そうか可愛い娘が使う枕は可愛いスライムになるのか。よしよし、こっちのも食べていいぞ」


『食べるー。もぐもぐ』


 ほっ。なんとか誤魔化せたか。イクサが可愛いもの好きでよかった。この場にいる他の者もルルが危険なもの、ましてや元荒神だなんて考えていないようだ。騙すようで悪いがルルは私の枕ということにしておいて貰おう。


「それでイクサ。あなたの正体は?」


 ルル突然の登場で遮られてしまったがまだ答えを聞いていない。まぁ私の中ではもう確信に似たなにかがあるのだが。


「ああ、私は魔法精霊だよ。かつてある魔法少女たちと共に戦った、ある意味で誉れ高き、ある意味で無様な魔法精霊さ」


 やはり魔法精霊。しかし無様とは?誉れ高き、は共に戦えたことが誇らしいのだろうと思うが、そこから無様なんて言葉がでてくるということは……死なせてしまったのだろうか。あなたもそうだったのでしょうか?熊田先輩。


「ホワイト。私の要求は一つ。私を君の相方として認めてほしい。これだけだ。君と共に行けば私は何かが得られどうな気がする。約束だ、構わないな?」


「それは私としても願ってもないことだ。よろしく、イクサ」


 熊田先輩の顔がまだチラつくが、私は前を向きイクサに手を差し出した。これからの旅でずっと同行する魔法精霊の相方が決まった瞬間である。


『話の途中だけど、鏡面世界に荒魂が出たモグ。おいら達は出動するモグよ!』


「「「!!!」」」


 荒魂か。私がこの世界線の鏡面世界に行くのは初めてだな。


「行こうか、イクサ」


「ふっ。当然のように行くのだな。ホワイトは白の腰巾着ではなかったのか?いいだろう、その力、見極めさせて貰おうか」


 そういえばホワイトの戦闘力の話はしていなかったな。では見せてあげよう。


『「結界起動『鏡面世界』!!」』



  ◇


 

「じゃ、今回はホワイトの実力を見るってことで、危なくなったら助けるから」


 鏡面世界に恵たち魔法少女と一緒に来て、目的の荒魂を見つけた現在、恵はそう言って私に戦闘を振る。今回の荒魂は数も一体だけで、感じる強さもそこそこといったところ。つまるところ何も問題はないとうことだな!


「任せロリ」


「「「セロリ??」」」


「ホワイトは何処かおっさん臭いな。だがそこもまた許される。その可愛さがあればな!」


 くぅ!私はおっさんじゃない!おのれ荒魂!この怒り、悲しみ、嘆き、お前にぶつけよう!!


「感情発作!ドキドキ☆ラッシュ!!」


 ドドドドドドドドッ!!


『グオオオォォォ……』


 勝利のV!


「「「えぇぇ……?」」」


「なんて出鱈目な強さや。これあかん。うちらの影が薄なる」


「むしろ上手く区分分けされてるんじゃない?変な技名叫んでるし」


「柚子、変な技名とは聞き捨てならないな。これは魔法少女メガ☆キラちゃんの必殺技が一つ、感情が心の限界を迎えた際に発作が起こりすべての攻撃に補正がつくというある種のパッシブモード。今回は君たち若い世代にメガ☆キラちゃんの後ろ姿を微かでも見せられたらと紹介の為にこれ一つを実演したが、本来であればこの技は―――」


「ああっ!わかった、わかったから!私が悪かったですごめんなさい!!」


 むぅ。まだメガ☆キラちゃんの一割も説明できていないんだが……そういえばこの世界線にも魔法少女メガ☆キラちゃんはいるのだろうか?いないのであれば私が持ってきたDVDの視聴祭でも開くか……ん?


「どうしたイクサ?涙なんか流して。メガ☆キラちゃんの背中に感動したか?」


「……いや、目にゴミが入っただけだ。気にするな」


「そうか」


 イクサはメガ☆キラちゃんのファンになれるな。隠したって無駄無駄ァ!私の目は誤魔化せない。


「……懐かしいな」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ