第十六話
◇喫茶店もぐら亭◇
「モグリン、その人本当に信用できるの?もし危ない奴、例えば敵だとしたら、この場所を教えるのはまずかったんじゃ」
「でも恵、仮に敵だどしたらモグリンがその悪意を見逃すはずないよ。私は信じてもいいと思うな。その人も助けてほしくて接触してきたんだろうし」
「甘いなぁ柚子は。でもうちもその謎の魔法使い、正直気になるわ。モグリンがええ判断したならもうええんちゃう?あとは当たって砕けろや」
『恵、柚子、京子、おいらもあの自称魔法使いを信用しきってるわけじゃないモグ。ただこちらの正体諸々を知られていて、それが現実世界にいることを考慮すれば、戦いになった際にはこの場所である必要があるモグ。……味方であって欲しいモグね』
私は今この会話を少し離れた席で聞いている。私以外にも客はいるようなのにモグラの魔法精霊改めモグリンは堂々と話している。このことに私は少なからず驚いているが、これはなるほどそういう展開か、と納得している部分もある。
要するにこの店自体が魔法少女たちの秘密基地のようなものなのだろう。ならば今ここにいる客たちは全員身内か。そして先程のあの会話。私が敵だった場合、ここにいる総員で攻めてくるということだろう。
……なんで私何事もなく入れたんだ?いや、別に普通に開店してたしウエイトレスさんからも何も言われなかったからこの状況に戸惑うばかりだ。
「君、見ない顔だな。前、座ってもいいか?」
「え?ああ、どうぞ……」
これからどう切り出すか悩んでいたら軍服姿の美人さんに話しかけられた。……軍服?……まぁ、いい。それより悩み事が増えたことに私はまた戸惑うばかりで……。
「私はイクサ。今日緊急事態ということでこのもぐら亭に呼ばれたのだ。君もそうだろう?見たところ若いのに大変だな。その年でその見た目ということは、もしかして君、外国の魔法少女か?そういえば君の名前は?」
むむ。これはなんと答える?私はモグリンに既に白と名乗っている。ここでその名をだせば確実に正体がばれるだろう。でもそれでいい気もする……よし。
「私は白。あなた達が用がある、件の魔法使いだ」
その言葉を発した途端、私に視線が集まる。これは白という単語に敏感になっていたのか最初から私は疑われていたのか……どっちだ?
「ふふ、君が件の白という魔法使いだと?モグリンの話では男だということだったが……まぁいいだろう。君は白の協力者といったところか。君のような可憐な少女なら、確かに我らの警戒心も薄れる。白とやらはなかなかやるね」
何やら勝手に勘違いが進んでしまったけれどこれは訂正しなくてもいいかな?どうやら二十五歳のお兄さんより十五歳の少女のほうが受け入れやすいらしい。ならばこのままでいくとしよう。
「では正体を明かしたところで私の話を聞いて頂けますか?」
「その前にあなたの名前を教えてよっ。私は恵よ!」
「私が柚子で」
「うちが京子やな」
おっと流れで話す相手を間違えそうになった。私が話すべきはまず魔法少女。このイクサという女性やこの場にいる魔法少女でない人間たちが何者かは知らないが、優先度は低いだろう。
私は魔法少女に向き直る。ここで名乗るべきは白ではだめなのだろう。今の私は白の協力者。だがこの外見は白色をイメージしたし、ここは安直に。
「私はホワイト。君たちに用あってが来た。よろしく頼む、恵、柚子、京子」
これから私は白ではなくホワイトだ。
「ホワイト……それって偽名よね?まぁいいわ。よろしくホワイト。それじゃ聞かせて、私たちに用ってのを」
「では傾聴願おうか。私がどこから来て、どうしてここに来たのかを」
まずは私がここではない世界線から来たという話からしようか。魔法精霊からいくつもの並行世界が存在することは聞いているだろうけど驚くかな?
「私は―――」
「―――別世界線から来た、だろう?」
「え?」
驚いた……。イクサが話に割り込んできた。そして見事に私の言葉の続きを言い当てた。彼女たちの事情は後回しにしようと思っていたが、段々と気になってきたぞ。先にこの場にいる大人たちは何者なのか聞いてしまおうか……。
「ふふ、割り込んですまないな、ホワイト。だが先に言っておくことがある。私たちは君の話を聞く。だから君も私たちの話を聞いて欲しい。いいだろうか?」
「あなた達も訳ありということですか……いいでしょう。ギブ&テイクでいきましょう。では先にあなた達の事情から……」
「いやいやホワイト、君から話したまえよ。もともと私が割り込んでしまったんだ」
「いやいや……」
「いやいや……」
くっ!先に話してしまったら後で彼女たちの話を断れない気がするっ!イクサもそう感じているのだろう。お互い引けぬ戦いがここにある……!!
「ではこうしましょう。私はここであなた達から聞いた話をボスに持っていきます。私のボス、即ち白に。返答は後日ということで」
なんとなく勢いで身分を偽ったがここにきてそれが生きた!もちろん彼女たちの話を断るつもりはないが、保険は必要だ。(ドヤッ)
「くっ……!いいだろう、では確実に持って行ってくれよ?君・の・ボ・ス・に!!」
ふっ。勝った。この人も男勝りな口調だが可愛いところもあるじゃないか。
「では改めて、私から話しましょう。私……とボスは、先ほどイクサが言ったように別世界線から来ました。すべては強く神格を持った荒神共を討伐するため。我らの世界を守るため。私たちが歩んだ話を聞いて欲しい」
それから私は今までの出来事を話した。ボス(私)は魔法使いで、その力で雪音たち魔法少女に龍気を分け与え戦っていたこと。彼女たちのボスであること。悪意を除けば人間と変わらない思考を持つ荒神の存在とそれらとの戦いのこと。……狙われたリリネットのこと。そして私が旅にでた理由も。
「強く神格を持った荒神……世界を滅ぼした存在……それが、あと九体もいるかもしれないっての?ホワイトのボスが世界丸ごと吹っ飛ばしてようやく倒せたんでしょ?これは確かに、団結が必要ね……私たち魔法少女と……」
「我ら『連聖』も、な」
『連聖』……それがイクサたちの組織名いうわけか。
「私の話すべきことは話した。次はそちらの番だ。聞かせてくれ、『連聖』とやらのことを」
「では、傾聴願おう」
あ、因みにホワイトは白の腰巾着という扱いにしました。同一人物だと過去話で困るね。




