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魔法少女のボスになった  作者: 八九秒 針
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第十三話


《ここは我らが地、我らが世界》


 異形の老人はそう言い残した後、姿を消した。油断したつもりはない。だが消える瞬間を捉えられなかった。そして事態は私の反省を待ってはくれない。

 現れる荒魂。その数は知れず、どれも今まで見てきた個体よりも大きな力を感じる。


「だが所詮は荒魂、いくら数がいたところで、私の敵ではない」


《果たしてそうかな?》


 声だけが聞こえる。今この状況もどこかで見ているということなのだろう。私が狙うべきは間違いなくあの異形の老人。しかし目先にいるこの無数の荒魂を放置しながらというのも難しい。


「幸いここに巻き込んで困るものなどない。故に、派手にいかせて貰おうか!」


 願うは殲滅、手段は爆破。自身を中心に辺り一帯を吹き飛ばす。魔法少女メガ☆キラちゃんの技、借りさせてもらう!


「愛の爆発♡マジカル☆ビックバン!!」(裏声)


 ドゴオオオオォォォォォン


 ふぅ。死ぬまでに一度はやりたかったことの一つが今、達成された。なんと清々しい気分か。荒魂くんたちもまさか魔法少女メガ☆キラちゃんの愛で滅べるとは思っていなかっただろう。いや、これは私の愛というべきか。


《ふざけた真似を。だがこれで終わりと思うな、まだまだこれからよ!》


「ふざける?私は至って真剣だ。魔法少女メガ☆キラちゃんに誓って生ぬるい覚悟で愛を爆発させたりしない」


 吹き飛ばして見通しがよくなった赤い世界からまた荒魂が現れ視界が塞がる。これはまだ愛の爆発が必要なようだ。


 二回目「愛の爆発♡マジカル☆ビックバン!!」(裏声)


 ドゴオオオオォォォォォン


 三回目「愛の爆発♡マジカル☆ビックバン!!」(裏声)


 ドゴオオオオォォォォォン


 四回目「愛の爆発♡マジカル☆ビックバン!!」(ガラガラ声)


 ドゴオオオオォォォォォン


 五回目「あ゛、愛の爆発♡マジカルごっほごっほ……くそぉ!すまないメガ☆キラちゃん……!!私の拙い愛でメガ☆キラちゃんの愛を真似なんてできなかった……!!」


『『『グルオオオオオ!!』』』


 吹き飛べ


 ドゴオオオオォォォォォン


《ふん、腐っても龍王、やはりしぶといな。このままじわりじわりと追いつめてもいいが、そろそろ決着をつけたいとは思わんかね?例えばこんな方法で、な!!》


 私は言ったはずだ。真剣に愛を爆発させていると。ずっと考えていた。この世界からの脱出方法は?私の生まれた現実世界の状況は?鏡面世界に残してきた魔法少女たちは?この異形の老人を倒すには?そう、すっと考えていたのさ。私は至って冷静だった、今この瞬間までは。


 私の目の前に投げ出される白黒の魔法少女。


 私は怒りにこの身が支配されていくのを感じた。


(リリネット……くそ……くそっ!クソがああああ!!)


「滅べえええ!!絶望郷(ディストピア)!!」


 崩壊が始まる。世界のありとあらゆるものが徐々に消滅する、終焉の始まりだ。


《ははははは!!それがお前の憎しみか!怨嗟か!いいぞ、いいぞ!!もっとその悪意をこの世界に満たせ!この我らが世界に!!》


 満たされる世界などない。すぐこの世界は消滅する。これはお前の罪。お前への罰だ。


「リリネット……」


 意識はない。全身血だらけで痛々しい。脈を確認するのが怖い。でも。


《ふははは……は?な、何故だ?なぜ悪意が溜まらん?これほどの憎悪があってなぜ!?》


 でも。これはお前の罪だ、お前への罰なんだ、日目自 白。

 信頼してくれたのに。

 共に戦ったはずなのに。

 ボスになったのに。

 守ると誓ったはずなのに。

 罰だよ、罰。これはお前が罪深いから起きたことなんだ。

 

「憎しみも後悔も、全部私が背負う。これは誰にも譲らない、私が背負う罰だ」


 リリネット、もし君が死んでしまっていたとしても、君の夢は私が叶える。今度こそ、世界を正義で守り抜いて見せる。でも、もし君が生きていたなら。


 脈をとる


 生きていたなら、私と一緒に―――


「―――夢を追ってくれる?ボス」


 リリネット……っ!!


「はぁいボス。アタシは元気よ、そんな顔しないで」


「……あぁ!ごめんよ、リリネット。守ると、誓ったのに……!!」


「アタシが勝手にボスと呼んだだけよ。それに、こうして助けてくれた」


 リリネットは生きていた。あんなに血だらけだったのに、さっきまで意識もなかったのに、もうピンピンしてる。


《ば、バカな!確かに始末したはず……息の根を止めたはずだ!!》


 異形の老人の声がする。今ならお前が何処にいるのかわかる。きっと奴はこの世界そのものなんだろう。かつては私たちのような人が住んでいたこの世界を滅ぼし、荒神として神格を強く持った存在。

 果たしてこれが真なる神なのかはわからない。だが、私にはどうでもいいことだ。要は


「滅ぼせるか否か。それだけわかれば問題ない」


《ひっ!》


 そして私はこいつを滅ぼせる。この世界を滅ぼせる。今も私の魔法でこの世界は崩壊を続けている。直に消滅するだろう。


《……滅ぶくらいなら、お前たちも道連れにしてやるぅぅぅ!!!》


 世界が形を変える。それは悪意の星だった。


「やりましょ、ボス。私たちの正義で、世界を滅ぼすの!」


「ふふ、それはなんだかとっても悪い言葉の響きだね。でも、やってみようか」


 リリネットと両手を合わせる。私とリリネットの間でなにかが循環しているような気がした。気持ちが通じ合う。心が通じ合う。夢が通じ合う。今の私たちは一心同体だった。


「ボス!」


「リリネット!」


「「愛の爆発♡マジカル☆ビックバン!!」」


 世界が私とリリネットの愛という正義で満たされる。


《い、嫌だ!死にたくない!嫌だぁぁ!!おのれぇぇぇぇ!!!》


 そして世界から悪が消えた。


「「勝利のV!!」」



 その後の話をしよう。

 まずリリネットと協力して滅ぼした世界だが、実は滅んでいない。私の魔法や荒神の力によって大分小さくはなったものの、世界の核は綺麗に浄化され今後長い年月をかけて復活するだろうとのこと。これは荒神の消滅によってもとの世界に戻った私とリリネットが、涙を流しながら抱き着いてきたパン太郎に聞いた話だ。

 パン太郎と一緒に熊田先輩がいたので、日本の魔法少女について尋ねると、彼女たちも私が消えたあと無数の荒魂の戦ったらしい。数こそ多かったが龍気のおかげもあって順調に倒しきったとのこと。

 そして問題はリリネットの前に現れた異形の若者。そいつは荒魂の大軍を率いてリリネットを襲ったらしい。こいつともいつか戦う時がくるだろう。


「「「ボス!!」」」


 だがそれでも、今はこの日常を噛みしめよう。


 私は魔法使い。魔法少女のボスだ。

 

 

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