第十話
ただひたすらに願い続けた。それで一体どれ程の時間が経ったのだろうか。
「ようやく終わりが見えてきたな……!この調子でいけばあと少しで悪意を粗方追い出せる。魔法少女たちが心配だが、なぜかな?彼女たちが負ける姿が想像できない。ふふ、今回の一件、なんとかなりそうだ……」
私が守ってやらなければならない彼女たちではない。私から力は借りれど、彼女たちは己で戦える。
勝鬨をあげる時は近い。そう感じた。
◇sideリリネット◇
いける!魔法少女が八人もいれば荒魂なんていくらいたって怖くない!それもこれも白の力あってこそだけど、アタシも自分の成長を実感できる!このまま押し切れば―――
『っ!?まずいにゃ!この反応は―――!!』
《憎い…恨めしい…欲しい…!よこせ…その力ぁ!!》
「「「なに!?」」」
どこからか頭の奥に響くようなどす黒い声が聞こえる……っ!!この咽返るような憎悪は一体―――!?
『荒神……うさ』
「「「!?!?」」」
これが、荒神だというの?まだ姿も見えないのに、これほどの威圧感を感じさせるなんて……!!
……倒さなきゃ。荒神を倒して、世界を救わなきゃ。
「かかってこい荒神!アタシが相手だ!お前の悪意をアタシにぶつけてみろ!全部吹っ飛ばしてやるっ!!」
さぁ、姿を現せ!いくらでも相手になってやる!荒神は全部―――
「落ち着いて」
―――後ろから、抱き着かれたようだ。誰に?この声はこの戦いで覚えた。たくさん聞いたから。
「雪音……?」
「私たちは一人じゃないの。忘れないで」
「……以前、ボスから聞いた。誰に知られるでもない魔法少女たちは、誰の記憶にも残らない。だから、お互いを知る魔法少女だけは、忘れるなって。……魔法少女メガ☆キラちゃんの名言……らしい」
「雫……そうね、ごめんなさい、取り乱してたみたい。戦いましょう、みんなで!!」
「「「うん!!」」」
《よこせ…!よこせぇ…!よぉぉこせぇぇぇ!!!》
荒神が姿を現す。それは天を衝くほど大きくて。でも。
「「あなたにあげるものなんてなにもない」」
「「あなたはみんなを傷つけた」」
「「それでもまだ欲するというのなら」」
「「私たちが滅びを与えてあげる」」
「「「「かかってこい!!」」」」
でも私たちに、恐れはなかった。
◇saide白◇
「悪意が消えた……やったか?いやまだ安心するには早い。現実世界から消えた悪意は鏡面世界で荒魂となっているはず。私も向かいたいところだが、まだこちらの状況も悪化しないとも限らない。大丈夫、彼女たちは強い。信じて任せよう……」
悪意はもう感じられないのに目を覚まさない、というのが気がかりだ。どうにも嫌な予感なする……何事もなければよいのだが……。
「(これは荒神の反応!?日目自くんを向かわせた方が……いえ、荒神が現実世界になにか仕掛けてこないとも限らない。今は魔法少女を信じて耐えるしかない……)」
「なにか言いましたか?熊田先輩?」
「……いえ、なんでもないわ。油断はなしでいきましょう」
「?はい」
◇sideリリネット◇
「「「ドラゴンブレス!!」」」
オオォォォォン……
《よこせぇ!その龍気をよこせぇぇぇ!!》
「ダメ、全然効いてない!」
「なんで!?龍気を纏えば荒神にも対抗できるって前にウサ美が言ってたじゃない!!」
『龍気を正しく扱えてないんだうさ!今の雫たちは龍気を染めているだけ。真の龍気はもっと色鮮やかと聞いたことがあるうさ!』
「真のってなに!?」
『ウサたちだって詳しくは知らないうさ~!!』
覚悟確かに挑んだ荒神戦は、膠着状態が続いていた。それというのもアタシたちの攻撃が通らないのだ。荒神の攻撃も大振りだから今のところ避けられてるけど、このまま龍気を消費するだけだとそのうち雌雄が決する。龍気を失ったら私たちは避けることすらままならなくなる。
「だからって諦めたりなんかしないけどねっ!!アタシはみんなを守るんだぁぁぁぁ!!」
グサッ!
「……え?」
お腹が痛い。熱い。焼けるようだ。これは一体、なに―――?
「「「リリネット!!!」」」
みんなの声が…聞こえる……あれ?お腹になにか…刺さってる……?
『リリネット!しっかりして!死んじゃ嫌だよ!リリネッ―――!―――!!―――!!』
パン太郎?声が聞こえない。ああ、そっか。アタシ、死んじゃうのか……そっかぁ……。
(………まだ死ねない……っ!死にたくないっ!だってまだアタシは―――!!)
「恩返しできてないんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その時だった。天からアタシに向かって何かが落ちてきたのは。
ドンッ! グルゥオオオオオオオ!!!
「……本物の……龍……?」
『真の龍気が色鮮やかなのは、本物の龍をその身に降ろすから……?』
なんだろう?体が変わった気分だ。みんながあんなに下にいる。あんなに大きかった荒神がそんなに大きく見えない。
いける
「グルアアアアアアア!!」(ドラゴンブレス!!)
《アアァァァァ!!痛い、痛い、痛い!憎い、憎いぃぃぃ!!》
「き、効いてる!効いてるよリリネット!」
「凄い……」
(あんなに強大に思えた荒神がこんなに簡単に……)
これが白がいつも見ていた景色だろうか?白は願いを願いに留めない、神のような存在だ。常にこんなに強大な力を持っているのなら、彼にとって世界はどこでも理想郷だろう。
(白……そう、白。アタシが目指すべき人の鏡。彼はこの力で驕ったりしない。もっと高みにいながら人を捨てない。白ならきっとこう言う!神を語るなら、人をみんな神にしてから言えって!だってそうじゃなきゃ皆幸せになんてなれないもん!!)
アタシがこの力ですべきことはあの荒神を倒す事!力に酔って傲慢になるこなんかじゃ、ない!!
《よこせぇ!その力をぉ!我にぃ!!》
あなたも生まれ方さえ誰かが正せば、救いの道もあったかもしれない。
(でもごめん!アタシはあなたを、倒すから!)
「グルアアアアア!!」
《オオオォォォォ!!》
激突する龍と神。勝ったのは
「「「リリネットォォォォ!!」」」
「……ふふ。さぁ、勝鬨をあげましょう!!」
勝利のV!!




