水色の宝石箱(6)
昔から、それはそれはぼーっとした子だった。
寝るのが大好きだったし、別に魔法の練習もお母さんと遊ぶのも、楽しくないわけじゃなかったが、ぼーっとしているといつの間にか嫌なことを全部忘れて、湖の底に沈んでいける気がするのだった。
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「……ぁ」
ゆっくりと、それでも確実に背中を押されて湖から出た。
起きる瞬間は苦痛だと、鈴は思う。
寝なくちゃ眠い、寝るのは楽しい、起きるのは痛い。
なら、寝かせてくれないかな、と考えるけれど、これも長く眠っていたせいなのだろうか。
「ぉ母さん?」
ぼやけた視界の中。
白く色の抜けた髪と赤い目が、見えた気がした。
何故か、自然に、いとも簡単に。
涙が溢れ出てくる、けど。
(なんで私は泣いている?)
理由のない涙って、どうしたらいいんだろう?
仰向けの状態から起き上がり、辺りを見回すけど、当然その姿は見えない。
(何に私は泣いている?)
懐かしいと思ったのかな。
羨ましいと思ったのかな。
(悲しいのかな)
なんで?
お母さんがいなくなったから?
(後悔してる?)
してないよ。
だってお母さん泣いていたの。
あんなお母さんは、お母さんじゃないの。
(でも、お母さんはもういないよ。君が殺したんだから)
……うん、知ってる。
この世の、全ての、誰よりも。




