水色の宝石箱(2)
二日分ってことでもいーい?
キィー、と。
扉の開く音がした。
やることがなくてぼーっとしていた俺は、誰かが来たことに驚き、その人物の顔を見てさらに驚いた。
「光――?」
「初めまして、貴方のお名前は?」
初対面だと言わんばかりの態度に思わず口をつぐんだ。
まるで別人のようだった。
誰にでもタメ口を改めず、ものすっごくふてぶてしいあいつとは全く違うことが一目で分かった。
頭の上の冠は神々しく輝いていて、彼女の金髪にとても合っていたし、ツインテールは彼女に似合っていて、美しいと思った。
けれど、何もかも違うように見えたが、容姿はそっくりだった。
「渡辺、凛」
「リン……そう、凛。質問をさせてもらいます。貴方は、自身の母親の顔と名前を言うことができますか?」
「え?そりゃ――?」
覚えているに決まっている。
そう言おうとして、固まってしまった。
「――あれ?」
分からない。
遊園地に連れて行ってくれたはずの母は。
俺をあの時叱っていたはずの母は。
玄関で麗華を抱きしめて泣いていたはずの母は。
あの日の。あの時の。あの瞬間の。あの思い出の――!!
記憶にある『母』は、誰だ?
どんな顔だった?どんな声だった?どんな性格だった?
何も思い出せないだなんて、そんなことがあってたまるか。
「嘘だろ……」
光棄の見た目をした目の前の彼女は俺を憐れむような目を向けていた。
と、同時に。
「失礼します」
俺をここまで連れてきた銀髪の彼女が後ろに誰かを連れてやって来た。
「ああ……彼女は『欠片』の隣にでも置いておいて、音和以外は退出してください」
「かしこまりました」
銀髪の彼女が指示を出すと後ろにいた何名かが扉を通って一見ただの人にしか見えない黒髪の女の子を俺の後ろに運び込んだ。
そう、普通の女の子なのだ。
しかし唯一、彼女の背中に生える薄く透けるピンクの羽が明らかに人でないことを分からせていた。
「うぅ……?」
そして彼女が置かれて間もなく、麗華の痣が薄れていく。
麗華は小さく呻いた。
「麗華!?」
「あー、ストップストップ。絶対触んなよ、お前まで死ぬから」
「……は?」
しかし俺が椅子から飛んで麗華に駆け寄ると後ろ襟をぐっと引かれた。
めちゃくちゃ痛いしはっきり言って苦しかったが、それどころではなかった。
物凄く聞き覚えしかない声が聞こえたのである。
幻聴を疑ったが、襟を掴まれたほうを振り向くと、それは間違いであることが分かった。
「おんっまっ……光棄かよ……!?」
「せいっか~い」
この年上すら敬わないウザい喋り方、そして先ほどと打って変わったような雰囲気、声。
おまけにこのムカつく笑い方……。
間違いなく、こいつは、光棄である。
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