──は闇(3)
これ昨日の分ね!
だからアウトじゃないから!
ギリッギリのギリでセーフだから!!
記憶があやふやなほど、昔のことだ。
私は黄緑混じりの緑色の草原を全力で走っていた。
目先に見える、同じように息を切らして走ってくる蘭と、手を伸ばして抱き合った。
久しぶりの言葉を交わしてどうでもいいことで笑い合って。
しばらくすると、お母さんとお父さんが追い付いて、隣で話すのを横目に、その日の計画を話し合った。
四人で過ごす時間はあっという間で、いつまでも続けば良いと願うほどだった。
続くことは、叶わなかったけれど。
それでも、戻りたいとは願わない。
願ってはいけない。
戻っては来ない過去に縋ってはいけない。
そのために、過去に手を伸ばす私の目を未来に向けるために、俺がいるのだから。
▷
「あ、高菜起きました?」
気が付いたら弘が側にいて、私は天界の家のベッドで横になっていた。
「弘……私、何で」
「解放状態になって、大変だったんですよ!?まったく……どこまで覚えてますか?」
「えっと……真っ白の景色になったとこ、かな?」
ついいつもの癖で、口角が上がる。
しかし弘はそんな私が気に入らなかったようで、目を細めて何もないところを見ていた。
「……笑えないですよ。気づいてますか?糸、何故か繋がらないんですよ」
「――は?」
なんの冗談かと思った。
顔の筋肉が一気に固まった。
被せていた掛け布団を蹴り飛ばすように起き上がる。
すぐに魔力を伸ばしていったけど、誰とも繋がってはくれない。
「……原因、分かる?」
「解放じゃないですか?」
「嘘……!!」
体の、心の芯から冷えていく。
凍え死にそうなほど寒くて、布団を被る。
「戻す方法が分かっていませんし、ていうかなんで解放状態になったんですか?」
「麗兄から……『欠片』から黒い手みたいなのが伸びてきて……多分、それなんだけど……避ければ良かっただけなのに、大した速さじゃなかったのに、なんであんなので解放になったんだろう……?」
「え?何を言っているんですか?麗華さんは攻撃なんてしてきませんでしたよ?」
「――は?」
噛み合っていたはずの二人の会話はここで完全にズレた。
お互いにそれを認識したからこそ、お互いに気持ち悪さというものを感じるのである。
「ってことは、なんで私は解放になったの?」
そして、またも気持ち悪いくらいにちょうどいいタイミングで、その部屋の扉は開いた。
言えない!
友達とバーベキュー行って浮かれきってたなんて……!!




