幸せな文化祭(2)
おっそ!私やる気出すのおっそ!
「だ、大丈夫……?」
光棄はどこか不満気な顔で睨む。
「……どこをどー見てそう思ったのか、聞いてもいー?」
「いや、まずなんでここにいるの?」
落ち着いてきたのか、尻餅をつくような形から体育座りに直したあと、顔にかかっていた髪を手で耳にかける。
「高菜と姫が気持ち悪かったんだもん、他のも全部」
「……?よく分からないけど戻ったら?残っている人が困るよ?」
「もう十分やったよ!?時間は過ぎてるのにずうっと居させようとするんだもん」
「シフトが終わってるならいいけど……」
「あ!ねえねえこのあと暇?」
ちらりと右腕の時計を見る。
「え?あと一時間くらいなら……?」
「愛香先輩とスイ先輩のメインステージあるから、見に行かない?」
▷上江くん
一方その頃、2―C。
「兄様が逃げました」
「え?あ、ほんとだ!」
光棄もうシフト過ぎてるよな?
だから逃げ出したんじゃないのか?
「探しに行きます?」
「ついでにまわろっか」
「そうですね」
度が過ぎたシスコンは鬱陶しい、ってことだろ。
「ちょっと抜けまーす」
「お前ら居すぎ、はよ行け」
「よろしくお願いしますー」
「バイバイ~」
……てか何で高名さんずっと此処居たんだろ?
▷姫花(弘)
「あれ、高菜?」
「なに?」
「お気に入り、居ますよ?」
「え、どこどこ!?」
「ほら」
「あ、ホントだ!」
「行ってきたらどうですか?」
「いい!?」
「はい、しばらく休んでます」
「ばいっ」
「……フー」
歩きまわって疲れてきた頃、丁度良く近くに『お気に入り』がいました。
少し休んで、次はどこを探そうかと考えていると。
「あ、弘?」
嫌な時に嫌な人と会いました。
こうなると分かっていたら高菜と行動していたのに。
「……」
「弘だよな?おーい?」
「はぁー……」
これは無視できないですよね……。
切実に時間を巻き戻したいです。
「弘ー?」
「煩いですね、今は«姫»ですよ」
「何やってんだ、弘?」
「……嫌がらせですか?」
「さあ?」
露骨に嫌な顔をして見せましたが、伝わらなかったようです。
「……二番目様こそ、ボッチですか?」
「二番目?……ああ、次男ってことか。ってかお前もボッチじゃん」
「はい、それが?」
「メンタル強いな、お前」
「?」
「恥ずかしがったりするもんじゃねえの?」
「恥ずかしいんですか?」
「……そうでもねえな」
意味が分かりません。
自分が恥ずかしいわけでもないのに何故私が恥ずかしいと思っていると考えたのでしょう?
「まあ、誉め言葉は受け取っておきますが、何の用ですか?」
「暇ならまわらねー?」
「はあ?私の格好が見えないんですか?」
私はメイド服のまま。
流石にこのまま一緒にまわるのは嫌です。
「ん?あーお前も女子なんだろ?」
「いえ、そうではなくてですね?彼女だとか勘違いされますよ?」
「兄妹ですって言や良くね?」
「……私が嫌です」
何故伝わらないのでしょう?
断られたということが受け入れられない人なのでしょうか?
だとしたら、少し甘やかされ過ぎでは?
「暇なんだよ、やることもねえし」
「それに、結構まわって疲れたんです」
「なら、近いしメインステージ行かね?」
──え?はい?え、何て言いました?え……
「は?いえ、すいません聞き間違いですよね?私、さっきからずっと、あなたとは行きたくないと言っていたつもりだったんですが」
「間違いじゃねえっての、いいだろ別に、すぐそこじゃんか」
「なるほどお断りします、私には行く価値もメリットもありませんし。逆に言ってどうするんですか、二番目様?」
「ダンス部の友達が出るんだよ、それ見に行く」
ダンス部?
つまり兄様の先輩では?
「フム、それなら付き合ってあげないこともないです」
「急に元気出たじゃん」
「価値とメリットを見出だせたからです。兄様が来るかもじゃないですか」
「なるほど分からんが、まあ行くぞ」
「はいっ!」
「……ところで弘、お前疲れてたんじゃねえの?」
しっかり笑顔で返事をしたのに、ひきつった顔をされました。
可能性があるなら行った方がいいと思うのは当然では?
「吹き飛びました!」
「……そうか」
▷
またまたその頃。
「悠人君ー!」
「あ、高名さん!」
「久しぶりっ」
「お久しぶりです」
「ところで今、暇?」
「はい、一通りまわって、ブラブラしていたところです」
「そっか!それなら、この後あるダンス部のメインステージ、見に行かない?」
そう、高菜は、姫花と別れても別れなくても、次はダンス部を見に行くつもりだったのだ。
「ダンス部?」
「うん、そろそろでしょ?」
「そうです、ね……?」
「どうしたの?」
「あれじゃないですか?ダンス部」
悠人が指を差した方を見ると、ダンス部と思われる団体と、一人の少女がなにやら言い争っていた。
「本当だ……ちょっと行ってきていい?」
「あ、僕も行きます」
「ありがとっ」
そう言って、高菜はこれでもかというほど息をたっぷり吸い込んだ。
「彩絢先輩ー!」
めっちゃ叫んだ。
周りの人が驚いて……いや、引いてるのか?
相手も気づいたようで、手を振ってきていた。
ダンス部の方は引いてたけど。
「高菜ちゃん!久しぶりだね!」
「何かあったんですか?」
チラッとダンス部の集団を見ると、彩絢も察したようで。
「あーっとね……愛香ちゃんとスイちゃんがインフルっちゃって」
「えっ」
「インフルっちゃ?え?」
ただ、悠人の方は分からなかったようだ。
逆かな?分かる方がおかしい?
「インフルったっていうのは、インフルエンザにかかったってことだよ」
「なるほど……?」
うん、分かる方がおかしいね。
なんだよ、インフルっちゃったって。
「代役をいろんな子に頼んでるんだけど、断られっぱなしで……」
「彩絢先輩は出られないんですか?」
「シフト入れちゃっててね……ていうか、そもそも学年でインフル流行ってるから、人が足りてなくて、引っ張りだこだよ……」
「うわあ」
「まだ決まってないんですか?」
悠人はなんとか解決できないかと考えを巡らす。
「一、二年生から出せないんですか?今回出るのって三年生だけでしたよね?」
「あーそれはね」
「この文化祭で踊るのは引退した三年生の最後の舞台で、他の一、二年生は四月の発表会に向けて頑張ってるから完成してないの」
彩絢に代わり高菜が説明する。
「そうですか」
行き詰まったようで、悠人は諦めた顔で俯いてしまった。
しかし、高菜は違うようで。
「うん、ピッタリだね」
「何か良い案ある!?」
「その時間、貰わせていただきます」
「……え?」
読んでくださってありがとうございます!
なるべく週一は頑張りますぅ!!




