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第3話 採取

 一度冒険者ギルドに戻ったローアンは、日課となった依頼ボードの確認をする。


「今度は何かいいやつあってくれよ」


 そんなことを思いつつ、ギルドの中に入る。毎度の通り、ローアンを見る目が厳しい。

 その視線を受けながらも、依頼ボードを見てみると、ある依頼が目に留まる。


「イングラシェントマンゴーの収穫依頼か……」


 イングラシェントマンゴーは、この地域の特定の場所にしか自生していない、かなり希少性の高い果物である。

 現在でも栽培しようとする野心家は数多くいるものの、全員成功した試しがなかった。

 そのため、皇帝陛下に献上されるほど珍しい果物になっている

 今回は、献上用のイングラシェントマンゴーを傷めずに数個回収してきてほしいとの依頼だ。


「でも、前のパーティが失敗しているみたいなんだよな」


 そう、依頼書の下のほうには、1週間前に回収に向かったパーティが依頼を失敗したとの情報が記載されている。

 しかも、メンバーの数が多いことで知られる有名なパーティが、である。


「でも、これなら何とかなるかな……」


 そういって、依頼を受付に持っていく。

 すると、それを見た他の冒険者がわざとらしく声を上げる。


「おいおいおい!まさか大規模パーティでも不可能だったマンゴーの採取にたった一人で行く間抜けなんていねぇよなぁ!?」

「そんなやつがいるなんて聞いたことねぇよ!」

「本当だとしたら相当馬鹿だな!」


 ガハハと笑う冒険者。

 ほかの冒険者も、影で笑ったり、嫌な視線で見てくる。

 そんな声なぞ聞かないふりをして、ローアンは受付に持っていく。


「これ、お願いします」

「はい。……でも大丈夫ですか?」

「何がです?」

「これ、大規模パーティで受けることを推奨している依頼です。お一人ではとてもじゃないですが不可能だと思われます」


 受付の人に心配されている。しかし、それでも出来そうなものがこれしかないのだ。


「大丈夫です。何とかします」

「そうですか……」


 そういって、受付の人は依頼の受理を行う。

 ローアンは早速、イングラシェントマンゴーがあると言われている森へと向かった。


「さて、目的の森まで歩いて1日か……」


 1日程度であれば、何も問題はない。

 問題があるとすれば、仮にイングラシェントマンゴーを持ち帰ることが出来たとして、その鮮度を保ったまま持って帰ることができるのかという点である。

 実はローアン、身体強化の魔法を使うことが出来ない。考えれば必然である。もともと召喚魔法を使う冒険者は、後衛に回ることが多い。さらに移動の際は馬車を使うことが多いため、召喚術者は身体強化を行えないのだ。

 目的地までの概略図を見て、ローアンは少しばかり後悔する。


「ま、今後悔しても遅いか」


 そういって森まで歩いていく。

 一度野宿を挟んで、目的の森にたどり着くことが出来た。


「さて、マンゴーはどこにあるかな?」


 しかし、この森は広大だ。たった一人で歩き回って探すのは現実的ではない。

 そこで召喚魔法の出番だ。


『召喚したるは、幾億の働き者。女王のために今ここに現れよ!』


 地面に展開される魔法陣。


10億の働き蟻(ビリリオン・アント)!』


 地面から無数の蟻が出現する。

 ヒイロオオケアリという種類の蟻だ。大きいもので体長5mmにもなる。

 この蟻は、砂糖や蜜を好んで食べる吸密性の蟻で、とりわけ果物などを探すのに長けているのだ。


『召喚虫に命ずる。イングラシェントマンゴーを探し出せ』


 ローアンは召喚した主であるため、蟻たちに命令を下すことができる。


「じゃ、行ってらっしゃーい」


 数億にも及ぶヒイロオオケアリが、一斉に森の中へと消えていく。

 ローアンはこのまま蟻たちがマンゴーを探し出すのを待つのみである。


「しかし、その間が暇だな……」


 その間に、ローアンは帰り道の準備をすることにした。

 まずは、召喚したヒイロオオケアリを使って帰る方法だ。しかし人間と蟻の移動速度は比べものにならない。だったら歩いたほうが早いだろう。

 なら空を飛ぶのはどうだろうか。

 確かに、空を飛ぶ虫もいる。しかし、人間の体重に虫が対処できるかが問題である。


「やっぱり歩いたほうが早いかな……」


 そんなことを考えている内に、ヒイロオオケアリの1匹から何かを発見したという感覚が飛んでくる。


「マンゴー見つかったかな?」


 ローアンは、感覚がする方向へ移動する。

 人が通れないような場所をいくつも通り抜けること約1時間。

 それは突然現れた。


「……これがイングラシェントマンゴー……」


 そこには、まさに黄金色に輝くマンゴーが複数個実っていた。

 ローアンは実っている木から、丁寧にマンゴーを収穫する。

 その時、ローアンに邪な考えがよぎった。


「……もしかしたら、別のマンゴーかもしれない。ちょっと味見してみよう」


 ナイフを使って丁寧に実を切り出すと、そこには黄色い果実があった。

 そのまま果肉を頬張ってみると、口の中で果実がとろけるような感覚を覚える。舌触りもよく、程よい甘さが口の中全体に広がった。


「うっまぁ……」


 本物であることを確認したローアンは、そのままマンゴーを5つほど採取したのであった。

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