【第1章 アラン】 第9話
本日3話目の投稿です。
ようやく、心の枷が解き放たれとと思うや否や、待っていたかのように試練が突きつけられる。
「兄さんを、消す?」
『ああ、そうだ。お前のことだから、なんとなくわかっていると思うが、この世界はお前の心の世界を反映してる。これまで何も考えないように、現実から目を背けてきたお前だが、そろそろ自分を解き放ってやれ。どんな方法でもいい。お前の考えたやり方でこの世界から俺を消滅させるんだ。』
ヴァンの死と家族の別れは、心の世界を真っ白に塗り替えるほどに、アランを奈落に突き落とした。
両親は行方が知れず、兄からの援助もなく、守るべき妹も自分のそばにはいない。
そんな絶望的な状況でも、アランの心が闇ではなく光に包まれていたのは奇跡である。
彼自身の心根と、家族やクマラの仕事仲間達の温かさが、闇に堕ちることを許さなかったのだろう。
『これから、お前が何を成すのかは分かんねえが、自分をごまかしたままでは絶対に前には進めない。自分を取り戻し、そして解き放つ。それがお前に課せられた試練なんだ。」
最愛の家族の悲劇を乗り越えることが、今のアランに対する最大の試練だった。
アランはヴァンから視線を離して少しだけ考える。
が、すぐに顔を上げて力強く言った。
「よし!じゃあ行くよ、兄さん!」
今度はヴァンが驚いた。
『も、もういいのか?で、できれば…いや、何でもないが…。あんまり痛いのはちょっと、っていうか…その…。』
何やら汗をダラダラ垂らしてブツブツ言っているが、
アランはヴァンに近づいていく。
『こ、心の準備が…うぬう…。』
アランはヴァンの目の前で立ち止まり、厳かに両手を組んで跪きこう言った。
「英雄『ヴァン』の気高き魂を天にお還しします。アーガス村の陽気に抱かれ、安らかにお休みください。」
アランが祈りをささげた瞬間、ヴァンの体が光に包まれふわりと浮き上がった。
真っ白だった世界はいつの間にか、アランたちの故郷・アーガス村で見た景色と、どこまでも続く青空が広がっていた。
『アラン…お前。』
刺されても切られても文句は言えないこの状況で、苦痛を覚悟していたヴァンは周囲を見渡し、唖然としている。
「何?その顔は?まさか僕が暴力で解決するとでも思ったの?」
してやったりのニヤケ面をしながら立ち上がり、両手を広げてヴァンを空に昇らせていく。
ここはアランの心を反映している。
願えばどんなことでもできる世界であった。
『ったく、やってくれるぜ。まあ…やっぱお前も、自慢の弟だよ。』
―お前も。
カイルのことも大好きなアランは、
ヴァンがカイルも自慢の弟だと言ってくれたことが嬉しかった。
「それじゃあね、兄さん。」
満面の笑みでアランは別れを告げる。
『ああ、じゃあな。…とその前に、お前の友達がちょっと大変そうだぜ。手伝ってやるから、助けに行ってやれ。』
「友達って…スタンのこと!?」
『がんばれよ、アラン。」
その言葉を最後にヴァンは光の粒となり、一陣の風が吹き抜け、あたりには再び静けさが訪れた。
と同時に目の前に黒い渦の空間が現れた。
『その中を通っていけば会えるはずだ!しっかりやってこい!』
「ありがとう、兄さん!スタン、今行くよ!」
異様な渦に臆することもせずにアランはその中に飛び込んで行ったのだった―。
『試練ヲ乗リ越エシモノニ、祝福ヲ与エヨウ。其方ニ【リベランサ】ノ名ヲ授ケル。』
無機質な声だけが響き渡っていた。
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◆リベランサ
・加護の器(大)
・基礎能力値減少(大)
・成長値(超大)
【アラン=リベランサ】
・風魔法の素質 取得
・浄化の素質 取得
・勇者の卵の血統 取得
・勇者の卵の支援(※期間限定効果)
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