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その祝福は世界を変えるか  作者: クラノ恩樹
第1章 アラン
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【第1章 アラン】 第6話

「…何だソイツは。」


サクの前にはなぜか、アランのほかにもう一人見知らぬ姿があった。


祝福名を授かるべく、洗礼の間に向かう前に、一度クマラの町に戻って食料を買い込んでいたアランは、

再度町を出るところをスタンに見つかった。

スタンとすれば、すでにカンノビ迷宮に行っているはずのアランを見かければ心配になるのも当然であった。


いろいろと事の成り行きを説明するうちに、自分もついていく、という話になったのだ。

ちなみに、なんとなくだが家族のことについてはまだ話していない。


「そんなこんなで、ついてきちゃったの・・・。」


「お前サクって言うんだろ?俺も行くぜ、よろしくな!それにしてもこんなガキにしか見えないやつが、ほんとに精霊なのかよ?俺の精霊のイメージって、もうちょっと賢そうな―。」


スタンの言いたい放題の暴言に、

サクの額に青筋が立ち、顔はみるみる赤くなっていく。


「アラン!なんだこの無礼な奴は!?お前も名前が長いとか大概だったが、世の中こんな奴しかいねえのか!」


突然現れたどこの馬の骨かもわからない少年に、ガキ呼ばわりされたサクが怒るのも無理はない。

話が進まないと見かねて、アランが宥めに入る。


「いいじゃん、サクは僕の友達でしょ?許してよ。」


(…友達。)


「ま、まあ百歩譲ってお前は良いとして、この無礼な・・・。」


アランに友達と言われ怒りが収まりつつあるサクにスタンが余計な一言を浴びせる。


「おおっ。友達って言葉に反応したな。さてはお前友達少ねえな、うはははは!」


サクの顔が怒りで頭から煙が噴き出し、顔は赤を通り越して黒ずんでいく。


「こんのクソガキッ。もういい、お前は洗礼の間には連れて行かん!!」


「な、なんでだよ。図星だからって仕返しするとか、マジでただのガキじゃねえか!」


「そもそもだ!てめえには何の恩も受けちゃいねえ!行き倒れのところをわざわざ見つけて食い物の一つも差し出すようなやつならまだしも、初対面のただの無礼者には天罰以外くれてやるもんはねえんだ!」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ。悪かったよ。頼むから許してくれよッ。」


「やかましい!」


サクは相当に怒っていた。

付き合いはほんのわずかだが、アランの人柄も大方分かっていて、それこそ恩もある。

同じ無礼があったとしても、受ける心象は月とスッポンだ。


「ふん。大体関係ないお前がなぜ力を欲しがる。魔物と戦う目的があるような奴には見えんがな。」


そう聞かれたスタンは、突如口が重くなり答えに詰まってしまった。


「どうせ、冒険者になって金持ちになりたいとか、くだらねえ理由だろう」


「…アランだよ。」


「「は?」」


アランとサクが面白いようにハモった。


堰を切ったようにスタンは話始めた。


「アランについていくって決めたんだよ!アランに会った瞬間に、なんかこう、コイツとは離れちゃなんねえって思ったんだ!アランがカンノビ迷宮に向かった後、一緒に行かなかったことをすげえ後悔してよ。あれから親方に仕事辞めるって言って、カンノビ迷宮に行く準備をしてたんだ。そしたら、偶然見かけてよ…。」


二人はスタンが話す間、黙ってそれを聞いていた。


「頼むよ!きっと俺はアランと離れちゃダメなんだ!よく分かんねえ感覚だけど、こいつの役に立ちたいんだよ!」


「スタン…。」


アランとしては嬉しさはあったものの、出会ってからの期間も短く気の合う友人とは思う程度だったので、そこまで考えてくれていたのかと正直驚きでしかない。


しばらく何も言わず、目をつぶって何かを考えていたサクが口を開く。


「分かった。お前を連れていく。壊れても知らんぞ。」


「…あ、ありがとう!絶対に力を手に入れてアランについていくぞ!」


二人で話が勝手に進んでいくその隣で、

戸惑いながらもスタンの気持ちをうれしく思い、アランは一人頬をポリポリとかくのだった。


―。


三人は3日ほど歩き森の奥深くまで来ていた。


「ここが洗礼の間の入口だ。」


サクが立ち止まり指をさすが見えるのは木ばかりで、他には何もない。


「ここだって言われても…。」


「何にもねえぜ?」


あきれるようにサクが息を吐く。


「ふん。結界で次元の狭間に繋いであるんだ。俺が許可したもの以外立ち入りできないようにな。」


そう言って、サクが手をかざすと蜃気楼のように景色が揺れ、見事な装飾の銀の扉と何もない真っ白な扉が現れた。


「「おおっ!?」」


アランとスタンは突然目の前に扉が二つ現れ驚きの声をあげる。


「銀の扉にはアランが、白の扉にはそこの無礼者が入る。」


「別々に入るんだね。」


「ま、まだ俺は無礼者なんだな。」


自らが蒔いた種とはいえ、スタンは少し寂しく思った。


「連れてきてやっただけありがたく思え。本来なら逆さづりにしてガタ鳥の餌にされたっておかしくねえぞ。」


「うぐっ。」


うなだれるスタンをよそに、サクが説明を始めた。


「いいか。お前らは今からこの扉から洗礼の間に入り、試練を受ける。試練を乗り越えれば祝福が授かるというわけだ。」


「試練かぁ。どんな試練なのかな?」


「それは人によって違う。中に入って自分で確かめろ。おれも管理をしているだけだから、全部分かってるわけじゃねえ。」


「出たとこ勝負ってやつか!やってやるぜ!」


アランとスタンが気合を入れたところで、水を差すようにサクが言う。


「それと、当然だが中で死んだらホントに死ぬからな。」


それを聞いた二人は、それでも自信を漲らせて言い放つ。


「大丈夫!任せてよ!」


「望むところだ!」


二人の試練が始まろうとしていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今後の励みになりますので、感想やアドバイスなどお待ちしております。

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