【第1章 アラン】 第1話
初めて小説を書かせていただきます。
拙い文章ではありますが、読んでいただけたら幸いです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
—それはすべてを照らす光だった—
—それは世界を飲み込む闇だった—
—彼らは目に焼きつける—
—青い瞳はその背中を—
—赤色の瞳はその背の先を—
—彼らは目に焼きつける—
—星が闇に沈む様を—
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「よし、昼飯だ!」
「また水みてえな薄い粥かよ。肉が食いてえぜ。」
「飯が出るだけ、俺たちはまだマシな方さ。おい!新入りの~・・・あいつ、なんだっけ?」
「アランですよ。ったく、まじめでいい奴なんすから、早く覚えてやってくださいよ。」
「う、うるせぇなっ。おいアラン!さっさとてめえも来やがれ!」
ここは商業都市ラグドアより歩いて20日も東にある辺境の町クマラ。
アランはここで日雇いの仕事をしながら毎日を生きながらえていた。
アランの村は1年半前に魔物の襲撃を受けた。
その後、ラグドアにたどり着いたアランだったが、
周辺各地から避難民が集まってしまい、受入が困難になってしまった。
町も限界ギリギリまで受入をしたが、やむなく立入不可とされてしまった。
魔物から逃げる時にはぐれてしまった兄のカイルは幸運にもラグドア入りができたが、
アランは間に合わず、町に入ることができなかった。
二人は衛兵に頼み込み、どうにか面会する許可をもらい今後について話をする。
「アラン、よく聞いてくれ。母さんとファラは魔族に連れていかれた。
一生かけてでも俺は必ず二人を助け出す。行方不明になった父さんも同時に探す。
そのためには俺はラクドアを離れるわけにはいかないんだ。
街に入れないお前を一人にさせてしまうが、分かってくれ。」
そう言いながら、カイルは自分で自分を嗤う。
(家族を救うため・・・か。ふん、目の前の弟を見捨てようとしておきながら笑わせる。)
カイルは目の前で母と妹を魔族に連れ去られ、目の前で兄が死ぬのを見た。
その怒り、悲しみ、悔恨、憎悪―。
自身に渦巻くあらゆる負の感情に身をゆだね、ある決意をする。
―母と妹の救出と兄ヴァンの復讐を―。
しかし、
(本当に俺は、アランを見捨てるのかっ?)
その決意はアランの存在の前に容易く崩れかける。
幾度も自身の中で感情が右往左往する。
目の前のアランの顔を見ることができず、カイルはうつむく。
「そっか・・・。うん、大丈夫!一人でやってみるよ。まずはお互い生き抜かないとね。」
「・・・すまないな。多くはないが、これを使ってくれ。
いくらかはお前も持ってるだろうが、足しにしてほしい。
少し遠いがクマラは比較的安全な街だと聞いている。お前ならやれるはずだ。」
「ありがとう!さすがに自分の手持ちだけだと野垂れ死にだったからね。助かったよカイル兄さん。」
兄の葛藤が透けて見えていたアランは、
できるだけ明るく軽口をたたく。
そして、兄の心の負担を少しでも軽くするため、
アランは気持ちよく旅費として出された銀貨を受け取ることにした。
「お前は、本当に・・・。」
(昔から優しすぎる。)
言葉には出さない。
彼らの長兄であったヴァンを含めたこの3兄弟は、以心伝心というか、相思相解というか、
昔から心の深いところで相互に思いやり、理解しあうことがあった。
兄の 弟を突き放してでも厳しくあろうとする痛み
弟の そんな兄をいたわる透き通るようなぬくもり
口には出さずとも、その思いやりが漏れ伝わっていることすら
お互いに分かってしまう。
「ア、アランっ。どうしようもなくなったら冒険者ギルドを通じて手紙を出すといい。必ず力になるッ。」
「心配しないでよ。でも連絡手段があるのはいいね。冒険者ギルドか、覚えておくよ。」
そこまで言ったとき、
一人の警備兵が申し訳なさそうに近づいてくる。
「悪い、そろそろ面会を終わらせてほしいんだが・・・。」
「すみません。無理を聞いていただき、ありがとうございました。」
二人は警備兵に頭を下げた。
「じゃあ、もう行くね。」
「あぁ、気をつけてな。」
「カイル兄さんも。」
カイルは弟の背中が見えなくなるまで、そこに立ち尽くしていた。
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