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勇者は星に夢を見る  作者: あしぬ
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第二章 四話 スーパーチョモランマブレインレス主人公

 「わざわざこんな牢屋にまで騎士様が起こしになるなんて珍しい。どんなご用件で?」


 危なかった~。カイネに兜をつけさせといてよかった。

探してみたらあるもんだな。

なんせ獣人だとバレただけでもゲームオーバーなのだ。てか、それでよく潜入しようとしたなこいつ。


「全くだぜ。獣が侵入したかと思えば、殺さず奴隷にしろと言うし...。ロームの考えもイミフだしな~。まあ粗方、愛玩動物にでもしたかったのだろうぜ。本人はケモナー?を自称してたらしいしな~。正直、きもりんちょパスタだな!」


 手には槍を手にし、全体的にチャラい。

 てかきもりんちょパスタ?独特な感性をお持ちのようだな。マジワロス(笑)

 風貌から見ても戦士であることには間違いなさそうだが...



 「っと、そうだったそうだった。俺はその愛玩動物に用があるんだったぜい。」


 そう言って、槍男は薄い空色の石を取り出す。


 「あの獣人が所持していたと思うのだがな~。起動方法がチンプンカンプンプンプンプンでな。獣どもの兵器となれば、危険だからな。尋問なり、拷問なりして聞き出そうと思っているんだ。」


 プン多いわ!


 カイネと目を合わせる。


 どうやらビンゴのようだ。


 ワープ石

 この敵だらけの地帯を抜け出せるための方法であり切り札。

 城の最奥部まで侵入しないといけないように思ったが、向こうからやってくるなんて、主人公補正もいいとこだ。

 どうやら簡単に済みそうだな。(フラグ1)


 「そういうことでしたら、我々にお任せを。私たちは拷問のスペシャリスト。必ずやお役に立つことでしょう。」

 機能に気付いてないとはいえ、兵器の疑いのある魔道具を下級看守に渡したりはしないだろう。だから、身分を高くする。そもそも牢屋まで見られてしまったらすぐに変装していることがバレてしまう。ここでやり過ごすことが勝負の鍵だ。


「あ?拷問の専門家?そんな話聞いてねえぞ?怪しさゴリアテギガマックスじゃね?」


 ギガにマックスつけてきたよ...小学生が考えた必殺技みたいだよ...


 「この度ローム様に秘密裏に雇われたのでございます。あの獣人には殺さずに生かしておくメリットがあったことと、繋がってくるのではないでしょうか。」


 敢えて、周知の事実を交えることで説得力を増させる。


 「確かに、一理あるな。そもそも獣人如きが城の最奥部に侵入できたところも不可解だ。ロームの考えは謎のままだが、信じるとするか~。」


 やったか?(フラグ2)


 「はい、ですからここは私たちにお任せください。」


「何言ってんだ?俺も牢屋に行くぜ。ロームが気にかけている獣人を見てみてえ。ついでにお前らの拷問技術もなあ。」


なんだこの勤勉なチャラ男は。そこは不真面目であれ不真面目で。

 いやいや落ち着け。大丈夫大丈夫。カイネが石に触れて、起動するだけでバイバイバイバイキンキンキンなんだ。ハヒフヘホなんだ。うん。いけるいける。


 「分かりました。ご案内します。まず石の方を渡していただけますか?」


 「おう。分かった...」


 まだいくらでもチャンスはあるんだ。

 焦らすに行こう。


 




 「いや...なんでそこの鎧が触れた瞬間にお前らが消える?」


 「「へ?」」


 背筋に寒気が走る。殺気。


 さっきまでただのチャラ男だった者に戦士の気概を感じさせるには充分であった。


 キンッ!


 静かだった空間中に金属音が響き渡る。


間一髪。カイネの頭を狙った鋭い一撃を辛うじていなすことができた。


 カンッ...カンッ...

兜が床に落ちる音がした。


 「ハッハー。やるじゃねえの。鎧野郎は例の獣人だったわけだ。それにしても完全に虚を突いたつもりだったんだが、こりゃあわくわくさんライザースペシャルトローニャだな!」


 新しい玩具を手に入れた子供のように邪気なく笑う。


 もう突っ込まない。


 ここで突っ込んだら、相手の空気に流されてしまいそうだ。


 絶対もう突っ込んでやらないからな!ゼッタインターネットロンゴリアンマキシマム!



 「おい!無事か?頭吹っ飛んでないか?」


 「ああ。なんとか無事だ。走馬灯が見えかけタンスシネマエンコ...」


 「OK。戻ってこい。まだ夢の中だ。」


 完全に憑りつかれてやがる。


 「いやはや、こんなことで見つかっちまうならあそこの箱にでも隠れておけばよかったぜ。あんた、カイネちゃんレーダーにも反応しねえんだもん。気配消す訓練でもしてんのか?」


 今は考える時間が欲しい。魔力でも、おそらく身体能力の面でも劣っているんだ。

 何か逆転しうる一手を...


 「カイネちゃん?ああ獣人は耳がいいとは言うな。それは失礼。クセになってんだ、音殺して歩くの。」


  どこのキ●アだよ!


 (おい、俺ら勝てそうか...数的には有利だが...)


カイネに声を殺して訴えかける。


 (まあまず無理だろうな。私は今、魔力を使えない。そうなると魔力を体に循環させることもできない。これでは肉体強度も能力も劣ってしまう。)


 (循環?体に纏わせることか?魔力量が身体能力に関わるってのはそういうことか?)


 (ああ、魔力を循環させればさせるほど、能力は上がる。拳に魔力を乗せた一撃と乗せないものとでは大きな差が出る。まあ、金的とか体の細部に行きわたらせることは難しいがな)


 (金的って…オブラート働かせろよ…とは言え、今戦えるのは、能力を使える俺だけってことか。)


 (肉体強化は使えんのだろう。ここは隙を見て撤退を...)


 「おいおい。二人で何楽しく話してんだあ。」


 待ち飽きたのか槍男は戦いの継続を促す。


 (撤退はないな...奴が石を持っていることが明らかで俺たちの存在を知っている者がいない今がチャンスだ。)


 (頼らせてもらうぜ。相棒。)


 (分かった...)


 「クハハ!ここまで徹底的に無視されちまうと、悲しみのロストアレキサンダーになっちまうじゃねーか!」


 「その割にはうれしそうだけどな!」


  即座に左手で銃を作り、応戦する。


 キンッ! キンッ!

 

 放たれた弾丸は容易に弾かれる。


 「おうおうおうおう、そんな弾じゃ能力なくても避けれちまうぞ~。」


 秒速400メートルの弾丸だぞ!?


 ほんと、嫌になるな!この世界!


 「隠れてろ!」


 カイネは少し戸惑った表情を見せたが、俺の意図を理解し、後ろの看守室に向かう。


 そして、槍男は最短距離で俺達との距離を詰め...


 カイネのがら空きの背中に向けて突きを放つ。


 「ま~~~ず~~~は~~お前だ!」


  左手でアサルトナイフを創造!小さい物の方が時間は短縮できる。


 即座に右手に持ち替え...

 シャリン!


 鉄と鉄がこすれる音がする。


 ナイフが槍の軌道をそらし、攻撃をいなすことに成功する。


 が、


 「グアッ!」


 いなし切れなかった槍の矛先が俺の肩を掠める。


 ひるむな!次!

 この至近距離だったら、さすがに!


 左手で新たに創造した銃をそのまま放つ。


 「器用だね~。だけどその未来は予見済みだ。」


 まるでその弾道を知っていたかのように、数センチの挙動でかわし、

 後ろにのけぞり、俺との距離を取る。


 今のまま押し切られてたら、完全にやられていた。なめられてるな。明らかに手を抜かれている。


 「騎士様はお優しいなあ。手を抜いてくださるだなんて、このまま逃がしてもらうことなんてできませんかね~。」


 「ハハハ、逃がすわけねえだろ。ミスしたらもう女と遊べねえからな~。そんなドンタコスタスタロイアルハイツになるわけにはいかねえからな~。な~に大したことじゃねえんだ。少し聞きたいことがあってな。」


  やっぱこいつ女好きだったか...


 「聞きたいこと?」


 「なんで獣なんかと、つるんでいやがる。人間だろ。目が見えねえのか?」


 「生憎、目は見えてるよ。なんだ?人間様はそんなに獣が嫌いなのかね。お前女好きだろ。奴もハズレではないと思うのだが?」


 胸でかいし。


 「おいおい!まじうける(笑)。うけたん生え散らかしブンブン丸だわ(笑)!獣人なんて獣臭くてかなわねえよ!」


 ああ。この世界の認識はそれが常識らしいな...


 「だが、お前は違う。人間だ、獣じゃない。そうだな~あの獣人を裏切ってこちら側に付け。」


 「は?少なくとも俺は捕まってた身だろ?結局殺されるだけじゃねえか。」


 「いや、お前の牢屋報告は受けてないし、この奴隷小屋は獣を扱うが人間は扱わない。獣人との関係を解消すればお前は晴れてシャバに出られるというわけだ。ゴッドアンサーウエディングカイザーだろ?」



 そうだな...

 奴の提案に嘘はないだろう。目が本気だ。

 そして、奴の提案に乗れば俺は万全とはいかないがこの危機を脱却できるだろう。

 外の全てを見たわけではないが、この世界で獣人側に付くということは困難を極めるだろう。

 獣人側が力を持っていたら、獣人が奴隷になるなんてことがあるはずがない。

 そもそも獣人側が俺という人間を受け入れるのかも謎だ。普通に考えて迫害の対象となるだろう。

 両陣営の板挟みを食らってはよもや生きてはいけない。

 そうだ、俺は生きなければならない。なにも成さないままここで死ぬわけにはいかない。

 生きるために、俺がここで生きていくために正しい答えは自明なのだ。


 「だけど...俺はあいつの手を握った。」


 そう...あいつに求められ、あいつを求めた。


 理由はそれだけで充分だ。


 「悪いな。主人公というのは頭の悪い動機で行動するものなんだ。例え世界の半分をくれても変わらねえ。」


 「ハハ!そうかそうか。こんなバカがいたとはな~。多分俺はお前のことを一生忘れキョンシーエンドレスエイトだろうぜ!」


 「俺も忘れねえぜ!その癖の強い言葉遣いはな!」


 


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