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携帯小説の噂

作者: 庄垣彬

  携帯小説の噂


 (1)


携帯の3インチの黒い画面の真ん中に赤い文字で「A」と書いてある。


前田秋穂はドキドキしながら決定ボタンを押そうかどうか迷っていた。


最近、噂になっている携帯小説の画面


信じてはいなかった、最初は


友達の清水沙世に教えてもらったサイト


始めは、アクセスすると繋がらなかった。


何度か挑戦してみたが、やはりだめで、その日は仕方なく諦めたて寝る事にした。


次の日、友達とのメール交換をしてる時、ふと、思い出し気軽に繋いでみたら・・・。


 (2)


数日後、学校での昼休み、友達との会話で「携帯小説」の話が出て


「この間、アパートで女の人が妹に殺されて、殺した妹も自殺した事件あったでしょ、あれ、妹が噂の「携帯小説」を読んでいたって」


秋穂はその話しを聞いて


“どうしよう、繋がっちゃったけど、大丈夫かな?でも題名見ただけだし、最後まで読んでないから・・・”


不安な気持ちを誰かに訴えたくて近くに座っていた沙世の方を見ると、沙世はうつむいたまま、何かに怯える様な目をしていた。


“もしかして、沙世も”


帰り道、沙世と一緒に歩いていた秋穂


「ねえ、秋穂、読んだ?」


沙世が不意に聞いてきた。


例の携帯小説の話みたいだ、昼休みに聞いた話の事が秋穂の脳裏によみがえる。


「秋穂、私読んじゃった。秋穂に教えた後、繋いでみたら、見る事ができたんだ」


秋穂は興味深々の目で、伏せ目がちの沙世の唇を見る。


少し震えているように見える・・・“どうして?”


「私、死んでしまうかも」


沙世の声は恐怖に押しつぶされそうに、小さく震えていた。


秋穂の心臓の鼓動は胸が痛くなるくらい激しく打ち始める。


秋穂と沙世の家は川にかかる橋を渡った向う側、前日の雨で川は少し増水していて、流れが速くなっている


橋の歩道は、数人の人と自転車に乗って走りすぎる人も数人いた。


2人は横に並んで、秋穂が車道側がを歩いていて、橋の真ん中辺りに来たころ


「秋穂、これ、これ見て」


沙世が携帯の画面を開き秋穂に手渡そうとした。


キィー・キィー・キィー


「あぶなぁい」


自転車が2人の後から近づいてきていて、ブレーキが効かないようで、大声で叫んでいる。


「えっ?」


沙世と秋穂が声と音に振り向いた時


ドン


ガシャーン


「キャー」


自転車が沙世にぶつかり、沙世は勢い余って橋の欄干を飛び越えてしまって増水している川に落下して、黄土色に濁った流れの中に消えていった。


沙世を引いてしまった男はあたふたし、訳の分からない事を小さな声で言いながら座り込んでいる。


目撃していた数人の人々は流れる川面を覗きこんで沙世の姿を探してしるようだった。


秋穂は何が起こったのか分からない状態で呆然とし、そして座り込んでしまった。


その手には手渡された、沙世の携帯が握りしめられている。


「君は大丈夫?」


1人の男が秋穂に声を掛けてきた。                     


小さくうなずいて秋穂はヨロヨロと立ちあがり、周りを見る、沙世の姿を探すように


すると


ブー・ブー・ブー


沙世の携帯にメールの着信が


『小説の更新のお知らせです』


震える手で、メールボックスを開ける、そこには


『あなたの小説《沙世》の最後の更新をしました。読むのであれば更新ボタンを押してください』


秋穂は戸惑いながら更新ボタンを押す


「死」の文字が画面の真ん中に大きく書いてある


数秒後、画面が自然に下に動き出しもう1つボタンが現れた、そこには


『次に画面』


そう書いてあり秋穂が決定ボタンを押す


『ご愛読、ありがとうございました、次はあなたの番です』


そう書いてあり秋穂が叫び声を上げ沙世の携帯を投げ出すと


軽やかなメロディーが流れ始める。


秋穂のメール受信の着信音


恐る恐る秋穂は自分の携帯を鞄から取り出し、メールを見ると


『携帯小説の更新のお知らせです』


そう書いてあり、秋穂がメールを開くと


『あなたの小説《A》の更新のお知らせです』


その下に書いてある文章に秋穂は驚愕した、それは


『この小説を、あなたが読まなくてもストーリーは進んでいきます、止める事はできません、あなたの命が尽きるまで』 


 (3)                     


“イヤァー”


狭い部屋に女の子の叫び声が響く


「もう、静香はうるさい」


「だって、めちゃ怖いやん、その話し」


ここは高校のテニス部の部室。


練習を終えた前田香、牧野静香、木村範子、3人の女子


香が仕入れてきた怖い話を聞くために、誰もいなくなった部室に残っていた


香が話終えてすぐに静香が叫び声を上げるものだから香が文句を言った


「香、その話しって本当にあったん?」


静香が聞くと


「噂だよ、噂、私も中学の時の友達に聞いたの、この間」


「ふ〜ん」


香と静香がそんな話をしていて、ふと横を見ると範子が耳を両手で塞ぎうつむいている


「何してるの、範子?」


香が範子の肩に手をあて揺らしながら言う


「えっ、終わったん?」


「もしかして、範子聞いてへんかったん?」


香が不満そうに言うと


「聞いてたよ・・・途中まで」


「途中までって、もう、怖がりやね、範子って」


そう言って、香と静香が笑っていた。


ふと、静香が腕時計を見て


「やばい、もう6時回ってるやん」


「ウソ、帰らなきゃ」


外はもう暗くなりかけている。


3人はワイワイ言いながら部室を出て校門に向かって歩いていた。


そして、校門に近づいた時


ブー・ブー・ブー


範子の携帯がメールの着信を知らせるバイブが震える。


範子は足を止めメールの内容を見て目を見開いた。


「範子、どうしたん、もしかして彼氏からとちゃう?」


静香が冗談めかして言う


範子のメールの内容は


『あなたの小説「N」の更新をしました。このストーリーはもう止められません、あなたの命が尽きるまで』


                           End


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