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デーヴィドの未練とクリスティーナの一途な想い




俺はソニアとの結婚式の翌日祖父木人形と祖母木人形と話をする、

ただ・・



「もう祖母木人形じゃないわ!昔のようにナターシャと呼んで!」



スター●ャ繋がりかと思いがちだが・・これは祖母木人形の本名、

俺は小さい頃から面識があるので名前は知っていたが・・



てっきり別の名前を使うかと思っていた。



「それじゃナターシャおば・・いやいやお姉さん話とはなに?」



あやうくゲンコツが飛んできそうだった。



「デーヴィドの事よ、あの子まだ前の世界に未練があるようね、

クリスティーナちゃんが泣いてたわ、全然相手にされないって・・

いい加減割り切ればいいのに・・未練がましいにも程があるわ」



それは俺も感じていた。



思い浮かべれば俺達2人は強制的にこの異世界に召喚された身だ、

軍務で見知らぬ所を調査中に俺達はこの異世界に舞い込んだ、

突然の出来事だったので未練が残るのは当然のことだ。



だが俺コウは・・



前の世界に帰る気はもうない。



しかしデーヴィドは付き合い始めた彼女がいたし友人も数多い、

口には出さないが一番楽しい時に突然リセットされたのと同じだ、

戻れるのなら・・今すぐにでも戻りたいのは当然だ。



その時・・話題のデーヴィドが部屋に入ってきた、ただ・・?

相当ナターシャお姉さまに言われたようで落ち着きがない、

彼のやりようのないイライラ感が傍目でも感じ取れた。



「お祖母さん・・改めての話ってなんだい?」





デーヴィドの頭に小さなたんこぶが出来た。



「ナターシャお姉さまとお呼びなさい!」



「その気になれないよ」



かなりイライラしてるようだ・・



ここで祖父木人形が話し出す。



「大和と武蔵のことなんだが・・」



「どうしたんだいお祖父ちゃん?」



「武蔵に関してはある程度の目途がついたが・・問題は大和だ、

デーヴィド君が今の状態のままだと大和の力がフルに出せない、

それに彼の負担が大きすぎるから分散を考えていたんだが・・」



「分散?」



「お前・・、コウに関しては優れた嫁さんが複数いるから問題ない、

彼女達がサポートしてくれるから武蔵の力をフルに引き出せる、

だが大和に関してはデーヴィド君の心境が揺れてるからな・・」



「俺はどうすればいいんですか?」



「君がクリスティーナ君達の気持ちを受け入れれば解決する」



「すみません・・まだその気になれません」



気持ちはわかる。



「なら試してみる?」



「試す?何を?どうやって?」



「あなたは・・本当に前の世界にいた方がよかったのかしら?

むしろこっちに来た方が幸せなのかも・・でも前の世界には戻れない、

でもね・・ある禁魔法を使えば夢の中だけど前の世界に戻れるわ」



そんなのがあるのか?



「この禁魔法はカオスさんから聞いたの、本来の目的とは違うけどね、

元々は本人が忘れた昔の出来事を調べるための魔法、でも問題がある、

夢の中である域を超えるとその夢から逃げられなくなる・・・」



この言葉を聞いたデーヴィドが興味を示す、そして質問。



「もし・・前の世界の方がいいと俺が決めたら?」



「眠り続けて目覚めることはないわ、寿命が尽きるまで夢の中よ」



俺は反対・・は出来なかった。



小さいころから彼と一緒に過ごしてきた時間が長いからな・・

彼の苦しみは痛いほどわかる、出来れば元の世界に帰らしたい、

夢の中でも彼がそれでいいと思うのなら・・背中を押すよ。



「お祖母さん!その禁魔法を俺にかけてくれ!」



「そう言うと思ったわ、でも目覚めることがない可能性もあるわ、

大事な人たちに挨拶ぐらいしたら?その位の時間はあるでしょ?」



「その必要はない、今すぐやってくれ!」



ため息をつくナターシャ、だが俺は彼の気持ちを尊重したい、

俺は立ち上がり彼の背中をポンと押す、彼は握手を求めた、

お互い無言で握手を交わし・・別室のベットに彼は横たわる。



「始めるわよ!」



ナターシャが禁魔法をデーヴィドにかける、彼は光り輝き眠りにつく。



・・・



デーヴィドは前の世界、夢の中で目覚め召喚前の世界に戻る、

喜びの雄叫びを挙げた後急いで家に戻り今までの生活を送る、

だが・・彼が俺コウの名前を呼ぶ・・当然俺コウはもういない。



禁魔法の前の出来事は夢の中でも鮮明に覚えているデーヴィド、

得るものもあれば失うものもあると自分に言い聞かせ生活に戻る、

そして彼女と結婚、2人の子供に恵まれた。



だが・・



デーヴィドの心は・・・



なぜか晴れなかった。



ある程度完成された前の世界では無難路線に人生が進んでいく、

その結果変化を嫌う世代と貧しさから逃げられない世代との衝突、

出口の見えない混沌と希薄になっていく人間関係・・



デーヴィドの家族は軍務で別居が多くなりそのまま離婚となる、

大国同士の脅しあいの最前線に立つデーヴィドは心身ともに疲れていく、

軍を辞め会社に勤めるも長続きせず転職を繰り返す。



その後彼は会社を立ち上げ皆の生き甲斐となる場を設けようとした、

だが新型コロナなど予期せぬ出来事に翻弄され自転車操業を繰り返す、

その中で・・彼を慕いついてきた部下のおかげで何とか持ち直す。



会社はその後発展を続け・・上場の一歩手前まで拡大していった、

だが彼が描いていた理想とは程遠く時だけが過ぎていった・・



・・・



すっかり年を取り歩くこともままならない自分の顔を鏡で見る、

生活には不便はないが・・達成感を感じない自分の顔を見て考える。



その時・・



自分の両腕、そして両足になぜか温かさを感じた。



「戻ってきて・・」



空耳か?いや違う、誰かが俺を呼んでいるんだ!



デーヴィドは老いた身体を振り絞り車いすから離れ自分の足で歩く、

どこからの声だ?と歩きながら周辺を探す、だが何もなかった、

デーヴィドは車いすに戻り・・ため息をつく、そして独り言。



「俺の人生も・・もう終わりか・・あっけなかったな・・

こんな中途半端な人生なら異世界の方がよかったかもしれない・・」



人生の終わりを悟り・・彼は車いすに座ったまま目を閉じる。



・・・



「戻って・・・お願い・・・」



・・・



デーヴィドは思い出した!



この声はクリスティーナだ!



そして・・彼女の幻影がデーヴィドの前に現れる。



クリスティーナの幻が老いたデーヴィドに近づき手を差し伸べる、

老いた俺でもいいのかと尋ねるデーヴィド、彼女は笑って答える。



「私・・ずっとデーヴィドさんの妻ですから・・」



・・・



「あぁぁぁぁ・・・」



デーヴィドは両手を広げクリスティーナを迎え入れようとする、

裏切った自分を一途に思ってくれるクリスティーナを・・

彼女の幻覚はデーヴィドに飛び込むように抱きついた。



次の瞬間・・・



デーヴィドが目覚めると・・・



涙を流しながらデーヴィドの右手を抱いているクリスティーナ、

左手にはジセルとルミナ、両足はマミーとサクラが掴んでいる、

5人とも大粒の涙を流しながら・・怒りだした!



「もう・・・離れないでください!」



「なんで私を置いていくのよ!この薄情者が!」



「心配したんだから・・・」



「もうこんなことやめて!」



「寂しかった・・・」



デーヴィドは起き上がり彼女達に返事をする。



「すまないな、もう俺は大丈夫だ、この世界で生きていくよ」



彼も大粒の涙を流しながら・・・



5人をまとめて抱きしめていた。














次回更新は4月30日(金曜日)夜の予定です。


いつも閲覧ありがとうございます。励みになってます。


出来ればブックマークと評価の方も応援頂ければありがたいです。


何卒よろしくお願いします。



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