予期せぬ種族との出会いと大粒の涙
東の大陸にある人間の村が活気づいてきた、まずはヘリが大活躍、
何度も往復して森から腐葉土を運びそれを村人と俺達が畑に蒔く、
畑を耕した後様々な種を蒔き木人形の土魔法で一気に成熟させた。
米や小麦・大麦やトウモロコシ等に加えミカンやリンゴ等の果物系、
白菜やホウレンソウ等の野菜系、ショウガやワサビ等の調味系、
大根やジャガイモ等の根菜類が瞬く間に成熟し収穫で大忙しとなる。
急ぎ大地を操るアースドラゴンに村を囲う大きな石垣を造ってもらう、
これで魔物たちは畑に入ることが難しくなり安全性がより高まった、
石垣を乗り越えてきた魔物は戦車の木製弾等で追い払った。
村長のヤマダさんに聞いた話だと・・
魔物たちは作物目当てで畑には入るが人は襲わないそうだ、
村人が追い払おうとすると魔法等で攻撃してくるが・・
それでも過剰な攻撃はせず作物だけ奪って逃げるそうだ。
なにか意図があるのだろうか?
どこかで調べる必要があるかもしれない。
考えてる俺にアグニたちが尋ねてきた。
「作物を仲間に届けたいのだが・・いいかな?」
「ああ必要な分を持って行ってくれ、急いでな」
「わかった、ありがとう」
ドラゴン達は畑の収穫物を急ぎ自分の領地に運び仲間に与えていた、
各地のドラゴンもかなり衰弱していたようでとても喜ばれたそうだ、
人間の村も一日3食が出来る位作物が充実して感激の涙を流していた。
各種族から欲しい物はあるかと聞かれ飲み水とオリハルコンを頼んだ、
飲み水は各艦で料理や風呂等に使いオリハルコンは砲弾に加工した、
それらを各艦に配備してエニウェアドラゴン対策として備えた。
ある程度落ち着いたので一旦帰ろうかと思った時・・
「山の方から魔物たちが攻めてきたぞ~~~!」
山に目を向けると・・
ものすごい数の魔物たちがこっちにくる・・
「全員戦闘体制に入れ、航空母艦に連絡して艦載機を出撃させろ!」
俺達はすぐさまヘリを飛ばし戦車を前に出し銃を構え戦闘態勢、
射程距離に入ったら一斉射撃・・・って・・あれ??
一番前にいるのは?
白旗をもった髪の毛が蛇の魔物・・メデューサがこちらに来る。
「私達に戦闘意思はありません、お願いです話を聞いて!」
魔物とはいえ白旗を持った相手を攻撃するわけにはいかない。
「わかった、話を聞こう、まずはそちらの進撃を止めてくれ!」
「わかりました!」
メデューサは合図を出し魔物の進撃を止めた。
俺デーヴィドが意図を聞きに行こうとしたが・・
メデューサは相手を石化する能力があるので皆が猛反対した、
だが目の前のメデューサは痩せ細り後ろの魔物たちも衰弱してる、
村人を殺さなかった意図も尋ねたいので俺は反対を押し切った。
「私も行きます!」
クリスティーナが声を出す、皆が反対したが彼女の気持ちは揺るがない、
こういう時の彼女の意思はテコでも動かないから止めるだけ無駄だ、
俺達2人は石垣の外に出てメデューサとの話し合いを始めた。
「俺が総司令官のデーヴィドだ」
「私は総司令官の妻クリスティーナです」
メデューサ達は総司令官夫妻が出てくるのは想定外らしく驚いていた、
すぐさま頭を下げ・・そして尋ねてきた。
「どうして・・魔物の私達をそこまで信じてくれるのですか?」
「君たちが村人を殺さなかったことを尋ねたいのが理由の一つ、
それと君たちを見て相当厳しい状況なのは容易に想像がつく、
そこまで君たちを追い詰めた要因を教えてほしいからだ」
「わかりました、ご説明いたします」
メデューサの話によると・・
100年程前までは彼女たちの住む山奥は比較的豊かな土地だった、
当時そこを統治していたのが彼女の両親だった。
両親は魔物ではあるが人間の会話や考え方も理解できていた、
そのため娘のメデューサに先で役立つかもとそれらを教育した、
彼女が俺達との会話や白旗を理解してるのもその時学んだらしい。
両親はエニウェアドラゴンの部下だったが殺戮は好まなかった、
豊かな土地に住んでたこともあり他を攻める理由もなかった、
その為相手を見つけては追い払う程度で戦いを極力避けていた。
だが・・
その行動が殺戮を好むエニウェアドラゴンの逆鱗に触れてしまう。
ある日突然エニウェアがレッドフェルリンを引き連れ攻めてきた、
両親は反撃したが敵わないと悟り彼女と魔物の子供達を集めた、
すぐさま転移魔法で他所に飛ばした後ブレスで焼き殺された。
メデューサ達が転移先から帰ってきたのは一週間後のことだった、
既に故郷は焦土と化し住んでいた他の魔物達も皆殺されていた、
仲間を埋葬した後に彼女が統治者となり故郷復興に全力を注いだ。
だが土地は荒れ果てていて草木も生えず生活は困窮を極めた、
耐えきれず魔物達が人間の村の作物を盗むことで何とか生きのびた、
人間達を殺すと自分達の食糧も絶えるので襲わなかったそうだ。
ところが・・
俺達が村に来たことで彼女達の食糧調達が絶望的となった、
しかし俺達が魔物を殺さなかったことで会話が通じるかもと考えた、
かすかな希望を胸に白旗を持ち一人で村に降りる決意をしたそうだ。
「経緯はわかった、だが魔物たちが一緒なのは何故だ?」
「どうせ死ぬなら一緒にと私の反対を聞かずついてきました、
でも彼らは私の指示で動いてたにすぎません、だから・・
統治者である私があなた達の怒りを受け止めます」
「どうか・・この子たちは助けてください」
メデューサは目を閉じて膝をつき降伏の仕草を見せる、
周りの魔物たちは喋れないが・・俺に彼女を助けてくれと目で訴える、
俺とクリスティーナは彼女に向かってゆっくり歩きだした。
そして・・
メデューサをゆっくり立ち上がらせ・・
左右からしっかり抱きしめた。
この行動に皆が驚いた、いや一番驚いたのがメデューサだ。
「ど・・どうして抱きしめるの?私には石化の能力があるんですよ!
私に触るとあなた達が石になるんですよ?」
「ああ・・石にしたいんならすればいいさ、だが一言言わせてくれ」
「えっ?何を?」
「よく頑張ったな、君は立派な統治者だ!」
「お父様とお母様・・立派な方だったんですね」
メデューサは訳が分からなかったが・・なぜか涙が溢れてきた、
昔習った中でわからなかった「人の心」を何故か思い出した。
「あっ・・ああ・・」
彼女の涙は止まらない。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・!」
この会話はクリスティーナが持っていた無線機で皆が聞いていた、
急ぎ木人形と村人たちは近くにあった食料を抱え石垣を出る、
皆が涙を流しながら魔物たちに食料を配り始めた。
魔物たちは・・
驚いてはいたが与えた食料を無我夢中で食べていた。
メデューサは大粒の涙を流しながら与えた食料を食べ始めた、
余程空腹だったのだろう、汚れた手も気にせず必死で食べている、
ある程度腹が満たされた彼女はそのまま崩れて眠ってしまった。
俺は彼女を抱きかかえ村の部屋を借りて彼女をそこに寝かせた、
空腹と緊張で疲れきった顔をしているが体調に問題はなさそうだ、
魔物たちが心配していたが寝顔を見て安心していた。
俺達はこの時点では夢にも考えてなかったが・・
彼女メデューサと出会ったことで・・
さらに強力な力を得ることとなる。
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