周りと噛み合わない軍師候補と厄介払いの受け皿
俺の目の前に立つ一人の人間女性、名前はティーラーというらしい、
感じとしては可愛らしい雰囲気で例えると堀●真希さんのような印象、
俺と猫2匹は痩せるためのトレーニングを中断して3人を席に招く。
「お忙しい中お時間いただきありがとうございます」
「いえいえ大丈夫ですよ、それで?何かのご用ですか?」
まだこの女性は日本語や英語が話せないようで俺には翻訳魔法で話している、
そのためか少し疲れた感じなので俺はポーション飴とサイダーを用意した、
これにアイスを追加して・・なんでかルアとアメリーが喜んで食べていた。
「こ・・これ美味しいですね」
ティーラーも気に入ってくれてなにより!
ちなみにポーション飴とはこの異世界にある魔力回復系の植物を使用、
例えるとアロエのような感じでこれを食べると魔力がある程度回復する、
各種族も愛用していたらしく俺達はこれを加工して飴のように仕上げた。
この植物は無味無臭だが俺達はこれにメープルシロップを追加し味をつけた、
これは感染症対策として開発したワクチン効果のある飲み薬と基本考えは同じだ、
甘味は疲れ軽減の効果もそうだが子供でも飲みやすくするため甘くしている。
だが・・・
飲み薬と同様各種族はおやつ感覚で食べるのでこれも無味にしようかと考えた、
だが全種族猛反対、きちんと管理するから味はそのままにしてくれと訴える、
だが何かあるとチャンスと考えなんだかんだと理由を付けて隙見ては食べている。
・・・
この話は置いといて・・・
ポーション飴とサイダーを飲んだティーラーは少し落ち着いたようで・・
姿勢を正し・・改めて今日伺った訳を話し出した。
「実は・・我が王から総司令官であるコウさんの元で働けと言われました、
私は小さい頃両親を亡くし天涯孤独でしたが王に拾われ育ってきました、
その王からの紹介を受けこの達こちらに伺った所存でございます」
俺は・・ティーラーが政略結婚目的でここ来たのだと当初は感じた、
だがアメリーはサイダーに夢中なので・・事の本質は理解してないようだ、
ルアも似たような感じ、なので2人は単純な道案内役らしい。
しかし・・・????
意図が分からないので俺はティーラーに配慮した返事をする。
「私の元で勤めて貰うのは構いません、希望があれば極力配慮しますよ」
「ありがとうございます、では早速ですが・・・」
・・・
・・・
「・・・を希望します、是非とも働かせていただきたいのです」
!!!
俺は内心驚いた、というのも彼女は戦艦大和の戦略軍師を希望してきた。
「先日貴方方の艦を拝見した後王が私を呼び感想を聞かれ私は答えました、
あの艦には何か独特な雰囲気を感じ・・私は自分ならこう使うと答えました、
それを聞いた王は・・私に総司令官であるコウさんの元に行くよう命じたのです」
「そうなのですか・・それで・・その時どう答えられたのですか?」
「私なら・・例えば先般姉妹艦の武蔵が獣妖族達の帆船を数多く撃沈しました、
あれは正直やり過ぎだと思います、私なら別の方法を実行してたでしょう」
「ほう・・具体的にはどのように?」
「私なら旗艦だけを総攻撃し指揮系統だけを粉砕し他には降伏をさせます」
・・・
得体の知れない敵に旗艦が狙われたら周りが総攻撃すると思うのだが・・
・・・
俺は考える、聞いた話だとティーラーは卿魔族達の司令部で働いていたようだ、
だが周りとの考えがズレているのか・・かみ合わずいつも案は却下されていた、
そこで今回自分と同じ人間が指揮している俺達の艦に乗り込み采配したいそうだ。
同じ人間なら自分の考えが評価されるであろう・・と考え来たらしい。
・・・
正直俺は戸惑う、この手の申し出は初めてだからだ、さらに問題もある、
本人は自分の采配に自信を持っているようだが・・成果は未だ0らしい、
なんか性格は生真面目な天聖族のエスコルピォに似てる感じだな・・
・・・
まあ・・・
ある意味自画自賛タイプらしく自分の活躍の場を求めていたらしい、
心意気は素晴らしいとは思うが・・・逆をいうと凄く危なっかしい、
だからケイオウはこの際彼女を俺に押しつけたのかもしれない・・
・・・
俺は厄介払いの受け皿では無いぞ!!!!!
まあこれはさておき・・
本人はかなりの自信ありげなので俺はあるテストをすることにした、
俺達の歴史の中で転換点とも言うべき出来事を2つ問題として出した、
その結果がどうなったのかをティーラーに予測してもらう。
ちなみにアメリーとルアは猫達と一緒に俺のTVゲームで遊んでいた。
「わかりました!では問題をお願いします」
「よし!では最初の問題はこれだ!」
1問目は・・三国志の赤壁の戦いの勝者をティーラーに予測してもらう、
俺は大雑把に内容を伝え・・重要箇所を2つヒントとして彼女に伝えた、
そのヒントは密偵の行動が見抜かれたことと片方が火攻めにあったこと。
2問目はミッドウエー海戦を題材とした、これも大雑把に内容を伝える、
重要ヒントはアメリカ軍の通信機器が日本より遙かに上回っていたこと、
もう一つは日本空母4隻が先行して戦艦大和等は後方にいたことだった。
ティーラーは3時間ほど考え・・書面に経緯を書いている。
「こ・・答えはこれです!」
俺はその書面の内容を見る、はっきり言うとどちらもハズレ!
彼女は赤壁の戦いは曹操軍、ミッドウエーは日本軍の勝利と断言していた、
単純に勢いがあり数で勝りイケイケどんどんの方が勝つと考えたらしい。
・・・
俺が・・両方とも不正解だと伝えると・・
「えっ?えっ?そうなのですか??自信あったのに・・」
・・・
ティーラーは思いっきり落ち込んでいた、ちなみに後から参加したルア達、
ルアはこの歴史を知っていたので除外、アメリーはミッドウエー海戦は正解、
沖合いの戦闘に関しては先見の目が働いたようで見事な予測でほぼ完璧だった。
・・・
ますます落ち込むティーラー、この様子だと暴走しそうなのでなおさら不安、
上の立場の者にも自分の意見をしっかり言える度胸は評価する俺なのだが・・
・・・
正直大和常務には足手まとい、かなり我が強いみたいで予測を見ても的外れ、
自分がこう!だと思ったらそれに突き進まないと気が済まない性格らしい、
なので皆からも距離を置かれてるそうだ、見た目は可愛いのに勿体ない・・
・・・
「君の心意気はわかった、だが今のままだととても軍師にはなれないぞ、
君はまだ若いんだから焦らず基礎を学ぶべきだ、でないと馬謖のようになる」
「えっ?馬謖って誰ですか?」
おっと!彼女は俺達異世界人ではなかった!
俺は改めて三国志の歴史をティーラーに伝える、彼女は相当気に入ったらしい、
そして肝心の馬謖の内容だが・・
「泣いて馬謖を斬る」
という諺が出来るくらいの大失態を犯した事を知り彼女は身にしみたようだ、
若いがゆえに功績を焦り取り返しのつかない失態を犯した事を知った彼女、
これは自分にもかすかに当てはまりそう・・と考えたらしい。
・・・
いや十分すぎるほど当てはまるんだけどな・・
・・・
今のままではとても使い物にならないと判断した俺は・・考える、
一応礼儀は正しいが彼女は周りの言葉を素直に聞こうとしない・・
・・・
めちゃくちゃ面倒くさいな!
さてどうするか?
・・・
!
俺はある案を考え・・・
・・・
それをティーラーに実行するよう命じた。
「そ・・それはどういう意図なのですか?」
「君は俺から見ると下積みがなさ過ぎる、だから表面しか見ていない、
俺から見て君は・・まず人の意見の聞き見聞を広める必要がある、
まずはこの艦の船長ライアンと話をしろ!連絡するからすぐ向かえ!」
「わ・・わかりました!」
ティーラーは急ぎその艦に向かう、それを見たアメリー達も後を追いかけた。
・・・
「ふぅ・・・」
俺はため息をつき・・
ある艦の船長ライアンに連絡し詳細と自分の考える意図を伝えた。
「意図はわかりました、お任せください」
「すまないが頼む、しっかり話して欲しい」
「了解しました!」
俺が依頼したある艦・・それは第4艦隊所属の駆逐艦雪風の・・
今はライアンとなっている艦長だった。