エリーナの命令と戦艦武蔵搭載人工AI「国衙」
エリーナは武蔵の牢の中で黙り込む、檻の外には見張りが2名、
乗組員達は操縦士等艦の進行に関わるものを除き部屋に閉じ込められた、
医務室や会議室は帆船艦隊の獣妖族達が寝てるので使えないからだ。
「このまま隣の星に向かえ!下手なことをするとこいつらを殺すぞ!」
スパイ達は本性を現す前に俺達の行動を細かくチェックしていた、
その結果乗組員を人質に取るよりも帆船艦隊の重傷者を人質に選んだ、
訓練を積んだ乗組員よりも遙かに安全だと判断した上での行動だった。
ある程度の話は聞いていたが武蔵は異世界の超主力の一角だ、なので・・
自分達が知らない知識や装備があると考え不必要な発言は控えている、
何気ない言葉から自分達の正体を分析されるのを恐れているようだ。
そのためなのか・・・
スパイ達は脅し以外は黙り込む、武器は没収したが乗務員にも手を出さない、
目を光らし艦の中での動きは見逃さないよう細心の注意を払っている、
そのためか武蔵の中は不気味なほど静かな雰囲気が漂っている。
尚ピンキーなどの初級の種族は艦尾に集め倉庫に閉じ込められてしまう、
乗組員達の武器は甲板に集められスパイ達が見張っている。
だが・・
スパイ達は知らなかった・・
・・・
この行動が既に筒抜けであることを・・
キュウウウウウウウウウウウーーーーン!!!
そして・・
武蔵自身が意思を持ち既にこの出来事を僚艦に伝えていたことを・・
・・・
武蔵が向かう隣の星とはほぼ正反対の位置にいる大和・紀伊・モンタナ、
武蔵からの緊急送信を受信していてスパイ達の行動を把握していた、
尚この緊急通信はルーム国はじめ各地にも伝わり皆把握していた。
「こいつらは・・隣の星のスパイのようだな・・」
「ああ武蔵を乗っ取るため帆船艦隊の重傷者を利用したということか・・」
「でも重傷者達は応急処理程度しか施していないわ、危険な状態よ」
「スパイ達もそれを狙っての行動だろう、重傷者達がいたら下手に動けない」
「なら早く救援に向かわないと!!!」
「まあ待て!そのことはエリーナさんが一番わかっている、だが動かない、
おそらく彼女は本丸を突き止めるため黙り込みあえて動かないのだろう、
彼女達なら本気を出せばスパイ程度はすぐ倒せるからな」
「では俺達はどうする?この位置だと今から追っても間に合わないぞ?」
「それは心配はない、既に援軍は別に出発している!」
「ああ彼女が動いたか・・なら安心だな」
「だが念のために俺達も動こう、急ぎ出発するぞ!」
「了解した!すぐに準備する!!!!!!」
「大和・紀伊・モンタナの3隻は反転して武蔵の後を追え!」
「了解です!!!!!!!」
「わ・・私達も連れて行ってください!」
「それは構いませんが・・」
「大丈夫です、この4人は信頼できます、私が保障します」
マーリットがこう言うので俺達は了承、来賓として招待する事にした、
4人は大和に乗り込み出発、ちなみに海賊達は頭領1人が懇願する、
他は一旦アジトに戻り身内に状況報告した後待機する事になった。
一応頭領も来賓として招待、先を考えると海賊も仲間にするべき、
そう俺に進言したのは卿魔族のアリスィ、見た目は中学生位の女性、
だが見た目に似合わず冷静沈着、度胸もあり状況判断も速かった。
その意見に賛同した俺達、海賊頭領も是非にと同行を希望した。
そのころ・・・
武蔵の援軍として急遽向かっているのは・・
「信濃全速前進!武蔵の援護に向かいます!!!」
「了解です!転送の鏡離脱後浮上して武蔵の後を追います!」
ゴオオオオオオオオオーーーーーーー
転送の鏡から急ぎ出てきたのが航空戦闘母艦信濃、そのまま空を飛ぶ、
先般カオス達が海を調べトラップが無いことを確認していた、なので・・
信濃は全速力で空を飛ぶ、この早さなら2時間程度で追いつけそうだ。
ちなみに信濃の新電磁カタパルトはなんとか調整が終了していた、
それとルア達がなぜか同行、サユミは危険だと拒否したがエナが猛懇願、
何か予感があったらしく・・とても気になるからというので許可していた。
その頃武蔵は・・
20ノット(約37km)の速さで隣の星とつながる海の近くまで来たが・・
「ここで止まれ!乗務員達はそのまま動くな!!!!」
シュウーーーーーーーーーーーー
武蔵は一旦停止、スパイ達は急ぎ誰かにテレパシーを送っている、
これにはエリーナも感じていた、スパイ達がボスから指示を仰ぐ、
すると・・無数の帆船艦隊が現れ武蔵を取り囲む。
「はい・・わかりました、仰せに従います」
スパイ達がニヤリと笑い急ぎ全員甲板に出る、そして・・
「よし!この船から離れるぞ、直に総攻撃が来る!」
この言葉を言い残しスパイ達は全員飛び武蔵から逃げた、牢にいるエリーナ、
彼女は聖級上位クラス、このクラスになるとテレパシー程度は傍受出来る、
そこで聞いたスパイとボスとの通信、その内容とは・・
「ほ・・本当にこの船を攻撃するのですか?」
「ああアヌビスが言っていたがこいつらは我らの軍事力より遙かに上だと・・
ほんと笑わせてくれる、図体だけでかいこの船が我らより上だと?
アヌビスはわかっておらんのだ、我らの力をな・・」
「それでこの船をおびき寄せ・・袋だたきにするということですな」
「ああ見せしめとして叩きのめす、アヌビスには適当に言っておけ、
こいつらが攻めてきたからやむなく攻撃したとな、まあ・・
一緒に乗っている同志には気の毒だったが止むなかった・・と伝えろ」
「わかりました、そう伝えます」
こう命令したのは隣の星の王族・・星を統治している王だった、
アヌビスが俺達の詳細を説明に何度か伺っていたが・・
王はアヌビスに敬意は払ったが内心怒りで穏やかではなかった。
王にしてみたら・・・
突然現れた得体の知れない者が自分達より遙かに上と聞き・・
プライドが引き裂かれた思いと怒りで冷静さを失っていた、
なら自分達の力を見せてやろうと武蔵をここに連れてこさせた。
そうして・・
「全艦総攻撃開始!その木偶の坊を木っ端微塵にしてしまえ!」
ドガーーーンドガーーーーン!!!!!
「火炎!!」
「爆列!!!!」
「灼熱!!!!」
ドガガガガガガガガガーーーーーーーーン!!!!
帆船艦隊は昔の大砲らしき砲弾とあらゆる特級魔法を武蔵に浴びせる、
それらは武蔵に直撃、武蔵は炎と爆裂を受け揺れる、だが・・
見た目は猛烈な攻撃で武蔵は大打撃を受けているように見えるが・・
・・・・
「炎の防火壁」
艦長エリーナは武蔵とシンクロ(同期)し全体を炎の防火壁を展開、
その厚みは2センチほどだが猛烈な灼熱を放ち特級魔法を阻んでいる、
なので猛攻炎上炎上しているようには見えるが・・武蔵は無傷だった。
「武蔵急速潜行、撃沈したかのように見せかけます」
ドガガガガガガガガガーーーーーーーーン!!!!
エリーナはダミーの爆発を展開、武蔵は大爆発したかのように見せた、
そして沈む武蔵、それを見た帆船艦隊の乗組員達は大歓声を挙げる、
エリーナはさらに確認の為に獣妖族達の人形を何点か海に浮かせたが・・
「おいあいつあの船に乗っていたヤツじゃないのか?」
「ああめんどくさいな、ついでに吹き飛ばしてしまえ!」
「そうだな、焼き払ってやる!!!」
「火炎」
ブッシュ~~~~~~~ン!!!!!!
人形は跡形もなく焼き払われた、これで完全に敵とみなしたエリーナ、
あえて部屋から動かなかった乗組員達に牢の中から命令を下す!
「ご覧の通り隣の星は我らの敵と判断しました、艦長として命令します、
武蔵浮上後五月雨攻撃を仕掛け敵帆船艦隊を総攻撃します!!!
各乗組員は所定の位置に戻り敵殲滅の役目を担ってください」
「了解!」
「了解です!」
「仰せに従います!!」
すると・・・
突如エリーナに語りかける者が現れた。
「初めまして、私は戦艦武蔵に搭載された人工AIの「国衙」と申します、
これより国衙はエリーナ様の命に従い敵を殲滅するための行動を開始します、
ご用命いただければ国衙はエリーナ様の手足となり万全を尽くします」
「そう・・ありがとう」
「それじゃ早速働いてもらおうかしら?」
「御意!」
「戦艦武蔵浮上!敵帆船艦隊を殲滅します!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~~~~~~~
突如海面が揺れ帆船艦隊の乗組員は驚く・・
ザッバーーーーーーーーーーーーン!!!!!!
沈めたはずの武蔵が現れ各砲が帆船艦隊を狙う・・
グィイイイイイイイーーーーー
「武蔵全砲発射!敵を殲滅せよ!!」
武蔵に狙われた帆船艦隊は・・
ズガガガガガガガガガガーーーーン!!!!!
次々と被弾し・・
猛烈な爆発で大破していくのだった。