運河の建造と衝撃破砲の意外な活用法
俺達の世界の各種族が大勢集まり転送の鏡付近の平地をどんどん掘り下げる、
一週間もすると8割が完成し同時進行で巨大水道管も配管しバルブもつける、
かなり豊富な水脈のようだが念のため開閉が出来るようにしてある。
これで転送の鏡付近は目処がついた、次は海までの輸送経路に着手する。
当初俺達は海の方向に中継港を造り陸路を整備して海までトラック輸送、
要所に倉庫やバイパス、休憩所を造って輸送しようと検討、さらに・・
海に港を造り獣妖族達の帆船を使い各地に輸送しようと考えていたが・・
!!!!!!!!!
「ちっ・・ちょっと待ってください!!!!」
この話を聞いたアヌビスが大急ぎで戻り一目散に俺達がいる休憩所に来た、
部下の獣妖族達・・知らない顔もいるからおそらく各地の重鎮達だろう、
それらを従えアヌビスが鼻息荒くどアップで俺達に訴える!
「陸路は絶対やめてください!是非とも水路で海と結んで欲しいのです!!」
「ま・・まあ落ち着いてください、どうして陸路じゃダメなんですか?」
「まず積み下ろしの手間が膨大です、それらの管理の必要性も出てきます、
それと盗賊の問題ですね、陸地なら隠れる所が多いので襲われやすいのです、
もし輸送中に狙われたら厄介なので陸路はできるだけ避けたいのです。
さらに訴えが続く・・
「それと我らが帆船は武装が貧弱で輸送量は限られ木製のため嵐に弱いのです、
貴殿達の輸送艦なら頑丈で嵐に強く武装も充実していて大量に荷物を運べます、
なので何が何でも海と転送の鏡を繋ぐ水路を確保していただきたいのです!」
「そ・・それは理解できました、でもそれらの工事費はどうするのですか?
その要望に応えるとなると膨大な工事費となりますけど・・」
「プィ!!!!」
・・・
次の瞬間アヌビスはじめ獣妖族達の幹部は全員目を逸らした。
・・・
建造費は出せないが艦が通れる水路は確保して欲しいと目で訴えてくる、
どうやらこの調子だと輸送重巡等も無償でよこせと言い出しかねない、
俺達にしてみれば過剰過ぎる要求なのでスルーしたかったのだが・・
だが・・卿魔族達もなぜか俺達に思いっきり懇願の目を向けてくる。
・・・
どちらの種族も本音は言わないが・・
・・・
私たちにこれだけ苦労かけたのだからしっかり優遇してね!の眼だった。
・・・
確かに元はと言えば同盟仲間デーモン達の過剰召喚が原因ではあるのだが・・
・・・
だがこの要望を応えたら俺達は債務超過に陥りそう・・
・・・
さらにマーリット達も戻れたら関連の開拓を要望してくるに違いない、
今回のように山奥だと経費が嵩み俺達は大赤字になるのは間違いない、
だがこれだけ深く関わった以上今更掌返しは絶対出来ない・・
・・・
目で訴えてくる獣妖族達と卿魔族達に押され・・俺達は頷くしかなかった、
なので予定変更、海までの約100kmの道のりを運河で繋ぐこととなった、
だが獣妖族達にも卿魔族達にも出来る援助は最大限提供するように要望した。
これには二種族とも快諾、これにより運河を建造することとなった。
しかし・・
参考にするのはパナマ運河、しかしパナマ運河は所々川などがあるのだが・・
今回は完全な密林、さらに付近に大きな川は無く小川程度が複数あるだけ、
さらにパナマ運河より18kmも長いので海まで掘り進むだけでも超大変だ。
他にも海と転送の鏡の間には標高があるので所々に水門エレベーターがいる、
超難易な工事となるので重機や魔法を駆使しても1年以上かかるのは確実、
途中岩などにぶち当たるとさらに工期が伸びるため俺達は頭を抱えていた。
・・・
俺達は一旦神殿に戻り対策会議、環境を再分析して他に方法が無いか考えた、
正直あまり工期は伸ばしたくない、というのも各地の軍備の問題がある、
いつ破壊神が来るかわからないので備えを急ぎたいのが最大の理由だ。
かなり環境が整ったとはいえまだまだ訓練不足なのでしっかり鍛えたい、
しかし湖の開拓のために軍事関連の種族は真っ先に応援に呼んでいる、
単純作業で楽しそうではあるが本音は・・軍人はまず戦いの訓練をさせたい。
それと連携の問題、各地に軍艦が配備されたので戦力はかなり向上、
だが軍隊は各地の連携があればあるほどより力を増していくのだが・・
現時点ではまだまだ単種族行動の域が多く中途半端な状況だからだ。
・・・
打開案が出ない俺達、なので今回もスマホを使い皆から案を募集した、
いろいろな案が送信してきたがどれも決定力には欠けていたが・・
数時間後ミノタウルスの中学生位の子供がある案をメールで送ってきた。
その内容は以下の通り。
● 穴を掘るのは大変なので艦砲射撃で地面を吹き飛ばし水路を造る。
● 海面より深い水路を艦砲射撃で造りギリギリまで海の水を流す。
● そこからパナマ運河のように水門エレベーターを造り艦を上下させる。
● できれば川を2つ造り往路と復路と分ければ効率的に船が通れる。
● 水門エレベーターも2つ造り交互に水を流しシーソーのようにする。
● こうすれば2隻を上下に同時移動でき水も必要最小限に押さえられる。
● 片方が壊れた時に備えどこかに離合出来る湖を造れば何かと便利。
・・・
問題解決の最適案じゃ無いのか?
俺はこの案に期待を膨らませ実現可能か調べることにした。
この案なら水路建設の手間は最小限、吹き飛ばす事は完全に想定外だった、
第7艦隊が使えると言う前提ではあるが各艦が飛び一旦海に出て艦砲射撃、
そうして出来た水路に海水を大量に流せば水の心配はほとんど無くなる。
ただ海は満潮と干潮があるが・・一部に水門を築けば問題なしと判断。
転送の鏡の近くまで川を造れれば水門エレベーターはそこだけ造ればいい、
案にあるようにシーソー状にすれば往路復路の2隻が同時に行動出来る、
これに関しては山を筒状に掘り水門をつけポンプで水を移動すれば可能だ。
俺は獣妖族のアヌビスと卿魔族のマーリットを呼びこの案を細かく話した、
そして俺の懸念を話す、まず艦砲射撃で・・環境に影響が無いか訪ねる、
もう一つの懸念はそこに住む様々な種族を一時移動出来ないか?を訪ねた。
ちなみに以前マーリット達は人間の裏世界で人間達を大量に移動させていた、
それを思い出した俺はマーリットも呼び相談することにした。
まずアヌビスが腕を組み考え・・語り出す。
「どちらにしても掘る行動には変わりないので問題ないと思いますよ、
確かにこの案なら後々貿易が増えても問題なく輸送出来ると思います、
まあ船がある程度余裕で通れる幅で抑えれば環境負担も最小限です」
水路を艦砲射撃で造るのは問題なさそうだ。
次にマーリットが語る、その顔は自信満々だった。
「私達の特殊能力を使えば一時的にそこに住む全種族の移動は可能ですよ、
事前に行き先を準備してもらえればそこに誘導することは容易いです、
なのでご質問の答えはイエスです、お疑いは晴れましたか?」
「ああ十分だ、あとは第7艦隊が使えるかどうかだな」
「それに関しては・・先日別件でヘイゾウお兄さまの所に伺いました、
信濃以外の艦は今週中に試運転が出来るまで改装は進んでいると聞きました、
たた信濃に関しては新たなカタパルトを備えるため来週になるそうです」
「そ・・それは本当なのか?」
「ええ間違いありません、信濃を除く4隻は既に元の姿でしたから・・」
これを聞いた俺はすぐにヘイゾウお兄さまに電話、いつ出航出来るか尋ねた。
「孫よ、2日後には大和と武蔵、翌日に紀伊とモンタナを出航できるぞ、
だが信濃は来週中頃になるのと戦闘機の離発着を細かく確かめたいんだ、
なので信濃以外は使える、だが一体何のために使う気なんだ?」
「ああそれなんだけど・・」
俺はミノタウルスの案を説明し水路を造るため艦砲射撃を行うと説明、
それを聞いたヘイゾウお兄さま、しばらく考えた後・・
「孫よ、それならもう二日待て、衝撃破砲を調節して一気に水路を造る」
「えっ?そんなことが出来るのか?」
「多分大丈夫だろう、4隻で一斉に砲撃して一気に水路を2つ造る、
だが衝撃破砲の威力がありすぎるから適度な所で止まるように調節する、
その調整に二日欲しい、その間お前達は他の仕事を進めておいてくれ」
「わ・・わかった」
こうしてこの案は採用された、尚この案を考えたのはミノタウルスの子供、
褒美に何がいいか尋ねた所新しいデスクトップパソコンを欲しがっていた、
地形調査が好きらしく3D化できる高性能パソコンを懇願してきた。
この懇願を俺達は了承、翌日パソコンを送りとても喜んでいた。
2日後・・
ヘイゾウお兄さまに呼び出された俺達、そこで目にしたのは・・
・・・
異様な雰囲気を放つ第7艦隊の4隻だった。




