浮かぶ要塞艦、航空戦闘母艦「信濃」
俺と祖父木人形は城から出て軍港に向かって移動している、
なぜか祖父は転移魔法を使わないので列車で移動している、
まるで時間稼ぎしているようで正直落ち着かない。
「こうして一緒に列車の乗るのは久しぶりだな」
昔話をしてきたので俺はそれに付き合った。
30分後軍港・・ではなくドラゴン鍾乳洞駅に俺達2人は降りた、
異世界で最初に出会った鍾乳洞に向かって俺達はゆっくり歩く、
その間も昔話は続き・・20分ほど歩き鍾乳洞の中に入った。
現在ほとんどの艦は別の場所にある軍港で整備を受けている、
空とはいえドラゴンの住処だった所は危険と判断し移動した、
今では臨時の休憩所として使っている程度だ。
その奥に進むと・・
戦艦でも余裕で通れそうなとても大きな洞窟の中に扉があった。
「開門!」
祖父がそう言うと大きな扉が開き俺達は扉の向こうに入る、
すると扉がすぐ閉まり外の気配が消え別世界に入った感じだ。
「この洞窟の出入り口はこれだけだ」
さらに進むと階段が見えてきた、俺達は階段を上ってゆく、
頂上には部屋があってそこは明るく中に誰かがいる。
「どうかね?構造や仕組みは理解できたかな?」
そこにいたのは木人形から何やら指導を受けているサユミだ、
彼女は何やら書いてある紙の山を細かく見ていたようだ、
読み終わったらしくサユミが席を立ち祖父木人形に一礼する。
「ええ正直驚きました、でも何とか使いこなせそうです」
「それは頼もしい、期待してるよ!」
「はい!お任せください」
サユミはそう言って俺にも一礼したあと別の階段を下りていく。
・・・
どうやらセクハラはなかったようだな・・
俺は再び祖父から脳天ゲンコで叩かれた,なんでわかったんだろう?
「お前の考えること位わかるわ!」
ちなみにサユミは祖父が大好きな演歌歌手に雰囲気が似ている、
比べればサユミの方がさらに美人だから手出さないか心配だった。
それはさておき・・
サユミが降りた階段の先には何かがいる。
暗くてよく見えないが・・
初めて見た大和武蔵・・
いやそれ以上の巨大な力を感じる、あれは一体何なんだ?
俺が戸惑っていると祖父が笑いながら照明のスイッチを入れる、
見えたものは・・
巨大な・・異形を放つ航空母艦だった。
「大和級3番艦!航空母艦・・いや航空戦闘母艦「信濃」だ!
初めて見る信濃の姿に俺は正直驚きを隠せなかった、
端から見ると自衛隊のヘリ搭載型の護衛艦に似てはいるが・・
目の前にいる信濃は独特の雰囲気を放ち別格のようだった。
「信濃はもうすぐ出港できる、これで大幅に戦力が上がるぞ」
だが疑問がある、なんでサユミを必要としたんだろう?
俺の疑問を察知したかのように祖父が答えてくれた。
「信濃に関しては艦長の人選が難しくて難航していたんだ、
航空母艦は構造上真上から来る敵の攻撃には脆いからな、
新兵器を多数搭載したが複雑すぎて人間だと扱えなくなった」
「それでサユミを?」
「ああドラゴンの彼女なら一目見て信濃を扱えると感じたんだ、
さらに日本人の血を受け継いでいるから木人形たちも抵抗がない、
今迄の言動や性格を見ていて彼女が一番適してると判断したんだ」
そういうことだったのか・・
ちなみに祖父がのんびりここに来たのは単純な時間稼ぎだった、
艦の仕組みを習うサユミの気が散らないように配慮したそうだ、
俺が早めに来ると・・確かに質問だらけで気が散っただろう。
ここで警報が鳴る、どうやら敵襲みたいだ!
「南の大陸の方から敵が飛んできます、数は約500匹程度、
人工衛星で確認したところ敵はブラックキマイラのようです」
おそらくエニウェアドラゴンからの命令で攻めてきたんだろう、
祖父はその言葉を聞いて信濃にいるサユミ艦長に通信を送る。
「聞いての通りだ、出陣できるかね?」
「大丈夫です!お任せください!」
「門を開け!信濃を出港させる、各部隊に通達しろ!」
「航空戦闘母艦「信濃」出陣します!」
信濃が雄叫びを挙げるようにエンジンを始動させ動き始めた、
門が開き信濃がゆっくりと門に向かって巡航を始める。
「俺も乗せてくれ、信濃の力を見たいんだ」
「どうぞ!」
サユミの転移魔法で俺は信濃の艦長室に移動した。
「そちらにお座りください」
俺は信濃の艦長の椅子に座り静観することにした、というのも・・
サユミは部屋の中心に立つ何かの杖のような前に立ち離れない、
おそらくあれは操縦桿だろう、動くたび信濃も動きを合わせる。
門の近くでは多数の木人形が激励に訪れていた、それを見たサユミ、
笑顔で右左と敬礼したり手を振ったりとアイドルみたいだった、
それを見た整備担当の木人形たちが大声を挙げ歓喜に沸いていた。
俺も真似をしたが・・皆に一生懸命に手を振ったんだが・・
俺には関心がないらしくお義理程度でほとんど無視された、寂しい。
それを見ていたサユミがクスクス笑っている・・
・・・
サユミさん、このことは忘れてくださいね・・
信濃はさらに加速して単独鍾乳洞から出て来た、
連絡を受けたワイバーンやグリフォン達がその雄姿に驚く、
他部隊から駆けつけた駆逐艦が信濃を囲み護衛体制に入る。
「おい、あれが信濃だぞ!」
「ああ初めて見たが頼もしいな、これなら期待できそうだ」
「すげ~な、大和と武蔵より大きいんじゃないか?」
「いいな~俺も信濃に乗りたいよ」
駆逐艦に乗る木人形たちも信濃を見るのは初めてのようだ、
大きく手を振ってくれるので俺とサユミも手を振って応える、
こちらは俺にも同じように手を振ってくれたので心が和んだ。
しばらくしたら他の部隊と合流して信濃はほぼ中心にいた、
かすかに見える敵に向けて各艦主砲を撃つ準備を始めた、
他の航空母艦から順次戦闘機が離陸して上空を飛んでいる。
「全戦闘機発進してください!」
サユミの指示のもと信濃のエレベーターから戦闘機が出て来た、
その姿はFー35とF-4ファントムを合わせ2で割ったようだ、
その色は青紫というのだろうか・・今までにない色だった!
この機体は日本人航空技術者木人形が独自に開発したらしい、
F-4を見本にしたのは長く航空自衛隊で活躍してる機体だからだ、
アメリカ製ではあるが愛着があるんで見本にしたらしい。
「信濃艦載機 ブルーシャーク隊出撃するぞ!!」
カタパルトに乗った戦闘機パイロット木人形が敬礼をする
それを見たサユミと俺は同じように敬礼で応える。
「発艦OK!幸運を祈る!」
キィィィィィィィィィィ~~~ン!!
次から次へと戦闘機が飛び立つ、全機発進したようだ、
50機ほどの戦闘機が一度信濃の上空を旋回して敵に向かう、
新たな戦闘機に気を取られ気付かなかったが・・
信濃の甲板には・・
不気味に光る無数の巡航ミサイル発射管が備わっていた。