南の民族救出とオリハルコン発掘
南の大陸を攻撃して半日以上が過ぎた、もう少しで日が暮れる、
気になるエニウェアドラゴンはリシャール達が追っ払った、
だがヒドラの数が多すぎる、5万ほど駆逐したがまだ半分だ。
「どうする?日が暮れたらこちらが不利だぞ」
カオスの言うように夜になるとヒドラたちが勢いつく、
奴らは昼夜関係ないがこっちは夜目が効くのはワイバーンだけだ、
それに各艦主砲弾を使い果たしてる、このままだと危ない。
「ここは南の民族を救出してから一度撤退しよう」
デーヴィドの案に皆が頷いた。
「それならあたいらが迎えに行く、援護を頼むよ!」
アデールとマイラを先頭にワイバーン達が各地に向かう、
それらを援護するためグリフォンと音速機が後を追う、
ガルーダとプロペラ機は各艦の上空護衛で残った。
30分後・・
アデール達が背中に各民族を乗せて戻ってきた、
音速機が複数落とされたがパイロット木人形達は無事だ、
落とされる直前転移魔法が働き航空母艦に戻っている。
「各艦後退せよ!南の大陸から離れるんだ!」
まず航空母艦がアデール達を乗せ急ぎ南の大陸から離れる、
ヒドラが何匹か飛んできたが駆逐艦の対空砲火で蹴散らした、
続いて重巡、軽巡、戦艦、駆逐艦の順番で撤退した。
それを見たガルーダとグリフォン達も撤退し航空母艦に戻る。
人工衛星で南の大陸を再調査したがヒドラは同士討ちを繰り返す、
あの様子だと俺達を追ってくることはないだろう、
それと結界で耐えていた民族は全員連れてこれたようだ。
「各艦戦闘域を離脱せよ!ルーム島に戻れ!」
各艦はスピードを上げ急ぎ南の大陸から離れた。
ルーム島に戻ったのが深夜、すぐワイバーンが偵察で飛ぶ、
各艦港に入り急ぎ弾薬等の補充を急がせすぐに守衛に出した、
今回航空機を30機ほど失ったが陸奥以外の艦はほぼ無傷だった。
ガルーダとグリフォン達も危機はあったが鱗の盾が防いだらしい、
あれがなかったら危なかったらしく酒飲みながら笑って話していた。
・・・
あれ?
航空機にも鱗の盾は備えていたはずだが?
なんでもワイバーンを守るため特攻して鱗ごと壊れたそうだ、
南の大陸の民族を乗せてる最中にヒドラに襲われたらしい、
それを守るため航空機でヒドラに体当たりして難を逃れたそうだ。
本当に危機一髪だったんだな・・
俺はアリゾナから降りて急ぎルーム王国城の病室に駆け込んだ、
陸奥の艦長アイザックが入院していると連絡があったからだ、
病室の前では長門の艦長リシャールが待っていた。
「アイザックは大丈夫です、数日で起きれるそうです」
それを聞いて一安心した俺だった。
「お話があります、各種族の代表の集合お願いできますか?」
リシャールが神妙な顔をしている。
「なにかあったのか?」
「はい、エニウェアドラゴンのことで・・」
俺とリシャールは城の会議室で各種族の代表を待った、
カオス達に加え今回はソニア達スノードラゴンも全員呼んだ、
まずはリシャールがドラゴンとの会話を皆に話した。
各種族ある程度予想していたようで特に驚きは見せなかった、
だが予想が確実になったことで皆の緊張は一気に高まる、
話の流れからすると今後エニウェアが攻めてくる可能性は大だ。
「どうするの?」
「もちろん攻めてきた時は戦うまでだ」
「だがエニウェア一匹に陸奥があそこまでやられてるからな、
複数で攻められたら・・まずいな」
気まずい雰囲気の中・・
「あの・・発言いいですか?」
声を出したのはスノードラゴンソニアの孫のサユミだ。
「今回戦いに参加させていただきましたが驚きの連続でした、
正直あなた達の力がこれほどとは思いませんでした、でも・・
今の状態ではエニウェアには勝てないと思います」
確かに彼女の言うとおりだろう・・今は・・
「提案ですが・・私が住む北の大陸を急ぎ調査してください、
あそこにはオリハルコンが埋まっています、あれがあれば・・、
間違いなく今より各段に攻撃力が高まるでしょう」
確か魔法力を増幅させる物質だったな。
俺は前に北の大陸を調査した木人形たちを急ぎ呼んだ、
緊急なのでオリハルコンだけ発掘するのに要する時間を聞いた。
「ソニアさんたちの協力があれば3日で発掘できます」
「すぐに実行してくれ!ソニア頼む!」
「まかせて!」
ソニアたちはドラゴンの姿に戻り急ぎ北の大陸に向かった、
だがサユミだけはなぜか祖父木人形がその場に留める。
「君と話がしたい、いいかな?」
「それはかまいませんが・・」
祖父木人形はサユミを別室に連れていき何やら話をしていた。
・・・
セクハラだけはやめてほしい。
「こんな時に何考えてるんだ!大事な話をしてたんだ!」
俺は久々にお祖父さんに脳天ゲンコツで叩かれた。
サユミはしばらく部屋から出てこない、どうしたんだろう?
俺達はその後もエニウェア対策を話し合った、その結果・・
しばらくはルーム国と西の大陸の守衛に専念することにした、
話し合いが終った頃サユミが部屋から出て来た。
サユミは祖父木人形の所に行き・・
「先ほどの話・・受けます!」
「ありがとう、頼む!」
祖父木人形はサユミの手を掴みそのまま連れて行った。
皆が部屋から出て各部隊に戻ったがリシャールだけ残る、
俺とだけ話がしたいと言うので別室で話をすることにした、
椅子に座ろうとした時寝てるはずのアイザックが入ってきた。
「俺も混ぜてくれ」
「構わないが大丈夫なのか?」
「大丈夫でしょう、こいつは殺しても死にません」
「俺はゾンビかよ?」
「似たようなもんだ」
俺達は笑いながら席に座る、まずはお茶を飲んで気分転換、
その後2人は真剣な顔に変わりある提案をしてきた。
「我らも特級魔法を使えるように手配をしてほしいのです」
この言葉に俺は驚いた。
「先般ドラゴンと対峙しましたが・・今の俺達では勝てません、
今回は相手が油断してたのでつけ入る隙がありましたが次は・・」
彼らも知っているが特級魔法はこの世界の人間には負担が大きすぎる、
俺達異世界人は元々魔力が無いので身体に原核や魔力を詰める隙間が多い、
だが彼らの体内には既に原核と魔力が詰まっていて入り込む余地が無い。
そのため上級魔法でも危険なのだが・・
リシャールとアイザック、それとルーム国王に関しては手を打った、
彼らの体内に潜む数多くの初級・中級原核のほとんどを逆に放出した、
空いた隙間に上級原核を詰め込み何とか使える等にしたのだ。
ちなみにこの世界の魔法は相手の苦手分野(例えば火の魔物には氷攻撃)
それらを体内の原核が判断して最適な魔法を放出するようになっている、
状況次第では混合魔法も加わりミックスした魔法が出ることもある。
術者は魔法と念じるだけで魔法攻撃は出来るが、ある程度の選択も出来る、
例えば食事の準備をするのに火を熾したい時は「火」と唱える、
必要な範囲だと原核が判断したら火の原核だけが反応して火を出せる。
「方法ならあるわよ!」
部屋に入ってきたのは特級グリフォンのレイナと祖父木人形だった。
「あなた達の体内には無理だけど戦艦に詰め込むなら話は別よ、
だけど使えるのは艦内にいる時だけ、それに加えて木人形の魔力が要るわ、
戦闘中上級魔法は使えないし撃てるのは2発が限度よ、それでもいいの?」
「撃った後は?」
「おそらく全乗務員の魔力が尽きた後麻痺して動けなくなるわ、
それでもドラゴンのブレスを防げる保障は出来ないけどね、
相当な諸刃の剣よ、負担が大きすぎるから使いたくないけど・・」
「構わない!使えるようにしてくれ!」
「わかった、ただ2艦同時には出来ない、まずは陸奥を直してからだ、
長門は当面ルーム島の守衛に専念してくれ」
「わかりました」
アイザックとリシャールは気合いを入れて部屋から出ていった、
俺は祖父木人形にどうしても気になることを尋ねた。
「お祖父さん、サユミをどうする気なんだ?」
・・・
祖父は黙って俺の腕を掴みある場所に連れて行った。




