スノードラゴンの悲しい事情
スノードラゴンの案内で俺達は謎の城に向かうことになる、
城には長老がいるそうで決め事は長老が全部決めるらしい、
まずはお互い挨拶するのが筋だと思うのだが・・・
俺達は北の大陸に上陸すると凍りつく可能性がある。
・・・
長老さんこっちに来てくれないかな?
「長老は城から動けないのです」
凄く心配なんだけど・・
「ご安心ください、僕があなた達を結界で守ります」
それを聞いて一安心。
ちなみに彼らが罠に入ったのは・・単純に空腹だったから、
たまたま近くで魚を探してた時匂いを感じ急ぎ駆け付けたらしい、
初めて食べる物ばかりで我を忘れ熱中していたそうだ。
気になる本体は1km位離れた所で寝ているらしい。
「ちょっと待っててください」
彼らの身体が光の球に変わり本体に向かって飛んでいく、
すぐにスノードラゴンが2体飛んできた、大きさは30m位だ、
スノーとはいえ初めて見るドラゴンの姿に俺は・・
平静を装ったが内心めちゃ怖かった。
するとスノードラゴンは目を光らせ俺達を結界で包んだ。
「これでどうですか?」
寒いのは寒いが結界内は氷点下2度位、これならいけそうだ。
とりあえず俺コウと・・・
ガルーダのジセル、グリフォンのルミナが同行を希望した、
他にも木人形が100体ほど荷物持ちとして同行する、
クリスティーナとデーヴィドは戦艦アリゾナでお留守番・・
「私も行きます!」
珍しくクリスティーナが同行を希望した。
クリスティーナが行くので俺はデーヴィドに交代するかと尋ねた、
だがデーヴィドは遠慮するとの返事、いつも一緒なのになぜだろう?
・・・
後から聞いた話だが・・
待ってる間他の艦にいたエルフお姉さんとデートしてたらしい。
・・・
彼の人生だから深く触れないでおこう。
俺達はスノードラゴンの背中に乗りあっという間に城に着く、
城の広場らしき所には3体のスノードラゴンが眠ってた、
兄妹はその横に眠り光の球が飛び出して人間姿となった。
「どうぞこちらへ、長老の所にご案内します」
彼に案内されて・・そういえば名前聞いてなかったな。
「あの~あなたのお名前教えて頂けますか?」
クリスティーナが俺の気持ちを察したように尋ねた。
「これは失礼しました、僕の名前は篠崎翔と言います、
ショウと呼んでください、こっちは下の妹で篠崎麗実と言います」
「わたしにもレイミと呼んで・・」
思いっきり日本人の名前だな。
ちなみにスノードラゴン名もあるが長いので使わないそうだ。
俺達はショウの結界に守られながら城の奥にある長老の部屋に入る、
長老と言う位だからぼさぼさ髭のお祖父さんを頭に描いていたが・・
中に入ると左に黒髪の美女、右にたくましい男、そして中央には?
・・・
金髪で髪が足元まである30代前後の美女が椅子に座っていた。
「ソニアお婆ちゃ~~~ん、お客さん連れて来たよ!」
ショウが笑いながら中央の女性に手を振る。
次の瞬間・・
女性が巨大なタライを投げショウが思いっきり吹っ飛んだ。
「何度言えばわかるのよ!ソニアおねえさまと言いなさい!」
タライを押しのけてショウが余計なひと言。
「孫がお婆ちゃんと言って何が悪いの?」
次の瞬間数えきれない量のタライがショウを襲う、
ショウはそれらをまともに受けタライの山に埋まった。
・・・
ごほん!
「ようこそ北の大陸へ!あなた達を歓迎します!」
俺達は何事も無かったように振る舞い各自挨拶をした、
ショウはタライの山に埋もれたままだが皆スルーしていた、
一通り挨拶が終ったあと美女たちが挨拶返しをしてきた。
「私はスノードラゴン代表のソニアと申します、
こちらは私の孫で篠崎紗由美と言います、
こっちは私の友人の孫で袖原武です」
「はじめまして、私のことはサユミと呼んでください」
「俺・いや私のことはタケシと呼んでください」
召喚された日本人は数多くいたんだな・・
ちなみにソニアという名は召喚して乗っ取った日本人の鞄の中、
その中に入っていたマッチ箱にこの名があったので引用したらしい。
・・・(キャバレーかスナック?)
名前に関してはこれ以上深く関わらないことにした。
俺達は木人形に持たせていた数々の食品をソニアに献上した、
それを見たソニアたちは食品に意識を奪われ話にならなかった、
先にそれらを食べてもらいようやく話が出来るようになった。
「あ~美味しかったわ~、甘い物なんて何百年ぶりかしら?」
歴史を感じるな。
「えっと、ソニアさん」
「ソニアでいいわよ」
「ではソニア、あなた達はなぜ氷の城にいるのですか?」
「純粋のスノードラゴンは絶対零度に近くないと暮せないのよ、
元々いた所から追い出されて各地を転々としてたんだけどね、
ようやくこの城に落ち着けたと思ったんだけど・・」
「何か問題でも?」
「ええ食糧がね・・私たちが近づくと何もかも凍るでしょ?、
離れていても冷気で察知されるから獲物がすぐ逃げるのよ、
そのせいでほとんどの仲間は餓死したわ」
気の毒な話だな・・
「孫から聞いたと思うんだけど・・私たちは焦ったわ、
このままじゃ絶滅だから生き残るために禁断の手を使ったの」
「それが異世界人召喚なんですね」
「そうよ、召喚なら都合のいい所に呼べるから乗っ取れたのよ、
その甲斐あって娘や息子たちは常温でも動けるようになったわ、
でも・・なぜか全員他の大陸に行ったまま帰ってこないのよ」
それはどうしてだろう?
疑問に思っていた俺達の頭に何やら女性の声が聞こえてきた、
この声は・・サユミさんのようだ。
「父と母をはじめ常温で動けるドラゴンは祖母から逃げたのです、
祖母がこの大陸にいると獲物が取れないので邪魔でしかありません、
私達は当時幼かったのと祖母が傍にいたので置いていかれたのです」
・・・
えーっと・・
どうまとめればいいのだろう?
するとクリスティーナがソニアに質問を始めた。
「ソニアさん、純粋のスノードラゴンは他にいますか?」
「今は私だけよ、この子達はハーフだから純粋ではないわ」
「お孫さんたちと・・どう違うのですか?」
「私は絶対零度近くでないと生きられないけど孫たちは違うの、
絶対零度に近くても常温でも自由に動けるのが大きな違いだわ、
それと冷気を体内に封印できるから普通に狩りが出来るの」
えっ?
ということは?
再びサユミさんからの声が聞こえてくる。
「お察しの通りです、私たちは祖母を養ってる状態です、
祖母は自分の周辺をほぼ絶対零度に保たないと生きられません、
そのため北の大陸は他の種族が入れない状態になっています」
さらに・・
「食糧を探す時だけ城以外少し温度を上げて獲物を探します、
ですがこの大陸では獲物が少なく私たちは苦しんでばかり、
今回兄と妹があなた達と会えたのは驚異の偶然なのです」
「サユミさん、あなた達は常温でも活動できると聞きました、
なら北の大陸から出て狩りが出来るのではないですか?」
「それはできません!」
「どうしてですか?」
「祖母が私たちを逃がさぬよう北の大陸に封じ込めてるからです、
ここの生活は超過酷なので私たちも出られたら絶対戻りません、
祖母も熟知していて1人で誰かを待つ生活を恐れているのです」
「お願いします、私たちをこの苦しみから開放してください!
先の見えない過酷な日々だけの生活はもう耐えられません、
あなた達と出会えたことは最初で最後のチャンスなのです」
・・・
ある意味クリスティーナの予想は当たっていたんだな・・
さてどうするか・・・
俺達は妥協点を求め考えこむ時間が続いた。