罠で捕まえたスノードラゴンの兄妹
クリスティーナが画面越しで見つけた氷の城はかなり大きそうだ、
さらにズームで調べたが画像が荒くなり細かくはわからなかった、
だが氷の城の全体を計算したら日本の熊本城位の大きさだった。
熊本城は高校生の時家族で行ったことがある、かなり大きな城だ、
それに近いんだから人間が多数住んでいても不思議ではない、
だが疑問がある、なんで極寒の地に城があるんだ?
俺が悩んでいるとクリスティーナからロマンチックな回答!
「王子様を待ってるお姫様がいるんじゃないですか?」
・・・
陸海空の移動手段が閉ざされているのに?
どうやって王子様がこの城に行けるのだ?
ツッコミ処は満載だが・・
「ああ素敵・・」
ロマンチックに浸るクリスティーナにそれは言えなかった。
とても気になるので何らかの連絡が出来ないかと皆と相談した、
だがこちらからは色々試したが全部ダメで行く術がない。
人工衛星から通信する方法も考えたがこれもダメだった。
「あっちから来てもらったらどうなの?」
アイスクレープ片手にレイナが案を出す。
「城があるんだから何かしらの種族がいても不思議じゃないわ、
例えば罠を仕掛けておけば捕まえられるかもしれないわよ」
一理あるな・・
「私って天才でしょ?」
それは認めるが食べながら自画自賛のダンスを踊らないように!
行儀悪いぞ!
とりあえずやってみるか・・
レイナの案を採用し罠を造ることにした。
なぜか女性陣が積極的に案を出しまくりこんな罠が一応できた。
● 形は長方形の格子型で高さ3m位で大きさは8畳程度。
● 入口は一つで奥にアイスやケーキ等お菓子を満載。
● 外は格子だが中は机と椅子等を設置して喫茶店風。
● 冷蔵庫を設置しその中にお酒や飲み物を入れておく。
● 一番奥に置くケーキを持ちあげると入口が閉まる。
● 入口が閉まると照明弾が発射され捕獲合図となる。
・・・
なんで極寒の地に冷蔵庫が要るんだ?
「冷蔵庫に入れておかないと凍りすぎて飲めないからです」
なるほど。
昔聞いたエスキモーに冷蔵庫を売った話の応用だな。
一応罠が出来たので軍艦で運ぶことに・・
なぜか駆逐艦雪風が選ばれ艦尾に大型クレーンを臨時に備える、
一応島風や最上ではダメなのかとかと尋ねたが・・ダメらしい、
極寒の地に送るんだから関連の名の雪風で送るのが道理だと・・
・・・
名前のこだわりは要るのかな?
俺の心のツッコミは皆無視して雪風に罠を乗せ出港した、
念の為アリゾナ・蒼龍・愛宕・阿賀野・酒匂が護衛する、
北の大陸に近づき雪風は後ろ向きになり罠を大陸に置いた。
急ぎ雪風は北の大陸から離れた、他の艦も距離を取っている、
大陸の傍だと凍る可能性が高いので2kmほど離れた所で様子見、
今迄の経緯から皆長期戦と思い込み力を抜きリラックスモード。
「スパーン!」
捕獲合図の照明弾があっさり打ちあがった!
誰もこの展開は予想してなかったようで飲み物を吹き出した者もいた、
驚きと困惑が入り乱れた艦内は一時パニックになった。
何とか皆冷静を取り戻し急ぎ罠の所に向かう。
罠を見ると人間らしき姿が2匹・・いや2人入っていた!
1人は背の高い男性でもう一人は少し小柄な女性、どちらも金髪、
双眼鏡で見ると・・おとぎ話に出てくるような美男美女だ。
2人は慌てる様子も無く罠の中でお菓子とお酒を堪能していた。
「あなた達は誰なんですか~~~?」
クリスティーナが謎の男女に大声で質問する。
だが・・
こちらの言葉は無視され2人は罠の中で飲食に夢中だった。
仕方がないので雪風が後ろ向きに近づきクレーンで罠を吊り上げる、
UFOキャッチャーの景品のように謎の2人は罠ごと吊り上げられた、
それでも慌てる様子は無くひたすら飲食に夢中だった。
細心の注意を払いながら罠を載せ北の大陸から2kmほど離れた、
その頃謎の2人は罠の中にあった大量の飲食類を完食し周りを見る。
「あなた達・・誰?」
なぜか日本語で話しかける女性、見た感じ高校生位に見える、
隣の男性は見た感じ20代前半で2人ともなんとなく似ている、
もしかしたらこの2人は兄妹かもしれない。
謎の男性は俺達を見渡した後同じように日本語で問いかける。
「君たちは何者なんですか?」
よかった、話し合いは出来そうだ。
俺達は各自挨拶をした後この2人に今までの経緯を説明する、
その後戦艦アリゾナに移動してもらい艦長室で話をすること・・
あれだけ食べてたのに食堂を熱望されランチを喜んで食べていた。
ちなみに・・
本日のランチは魚の煮つけにハンバーグとフライドチキン、
ひじきご飯に野菜スープと日米混合のメニューだった、
それを5人分完食して・・やっと落ち着いたらしい。
「ご馳走様でした!(×2)」
なんとか話し合いが出来そうだ。
早速クリスティーナが彼女たちに日本語で質問する、
かなり勉強していたようだ、発音もしっかりしている。
「あなた達はどの種族になるんですか?」
「僕たち兄妹はスノードラゴンですよ、あっと!
正確にはスノードラゴンと日本人のハーフですけど」
「えっ?」
予期せぬ返事に皆驚いた。
「私たち普段は城にいるの・・」
妹の方は無口タイプらしい、すると兄が詳細を話してくれた。
それによると・・
彼らの住む北の大陸は元々多種多様な種族が暮していたらしい、
ところがスノードラゴンの大群が押し寄せ一気に寒くなった、
寒さに耐えきれず他の種族は逃げ出し今は城等一部が残るだけ。
そのスノードラゴンも飢えて徐々に数を減らし今では数えるほど・・
純粋のスノードラゴンは絶対零度に近い環境でないと生きれないらしい、
元いた所の食糧が尽き生きるため新天地として北の大陸に移住した、
だが他の種族が逃げ同じ苦しみを繰り返す皮肉な結果となる。
全滅を避けるため・・
彼と彼女の先祖たちはある方法を考えた。
それは異種族との交配、他の種族の遺伝子を受け入れること、
そうすればある程度温度が高い所でも住めるのではないか?
そう考えたが捕まえた相手がすぐ凍るので実現はできなかった。
切羽詰まった先祖達は最後の手として異世界人を召喚したそうだ。
「それが日本人なのですか?」
「はい、そう聞いています、ですが一人だけではありません、
様々な人種を召喚しましたが失敗続きでほとんどが凍りました、
たまたま成功したのが日本人だったそうです」
ちなみにスノードラゴンも人間姿になれるらしい、
ガルーダ達と同じで人間姿になると本体は眠り動かなくなる。
「召喚したあと瞬時に身体を乗っ取り凍結を避けたそうです、
急ぎ交配を行い子が生まれ何とか全滅は避けたと聞いています」
それで日本語が話せるのか・・
「ところで・・今はあなた達2人だけなんですか?」
「いえ長老と上の妹と幼馴染が城にいます、案内しましょうか?」
それはありがたいが・・
俺達すぐに凍るんじゃないのか?
スノードラゴンの男性は大丈夫ですよと微笑んだ。