サラマンダー駆逐作戦
私たちの艦隊は夜間の進行は控え碇を降ろし川中央で止まってる、
各艦乗組員に食事を取らせ夜番を除き風呂や睡眠を取っている、
私エリーナは今艦長室のベットで寝ているが・・
・・・
気が張って眠れないので甲板に出て風を感じながら気分転換、
すると話し声が聞こえてくる・・
「・・という訳です、ご協力お願いします」
「わかったわ、時間が来たらここに行けばいいのね」
「はいお願いします、その際は目立つよう暴れてください」
「了解、それじゃね」
エマと話していたのはガルーダとグリフォンの女性達だ、
彼女達は転移魔法でどこかに飛んで行った」
「眠れないのですか?」
エマは私の存在に気づいていたようだ。
「ええ見知らぬ大地ですもの、気が張ってね」
「それならご相談があります、お時間頂けますか?」
私を心配して見に来た祖母木人形と一緒に艦長室に帰る、
艦長室で私と祖母木人形がエマの作戦を聞こうとしたが・・
「すみません、友人が来るので乗艦許可お願いします」
私は疑うことなく許可した、すると??
入ってきたのはサーベルタイガーだった。
「私の幼馴染で一番の親友です」
サーベルタイガーはまるで子猫のようにエマに甘えている。
私は正直すごく驚いて・・
あと一歩で攻撃しそうに・・
それを察知したエマがクスクス笑ってる。
「驚かせてごめんなさい、ですが明日の作戦はこの子たちが、
すごく重要なのでエリーナさんに御挨拶に来て頂きました」
サーベルタイガーは私に向かって一吼え、それが挨拶らしい。
「どういう作戦なの?」
「はい、サラマンダーは凶暴ですが強い相手だとすぐに逃げます、
この艦隊が驚異の強さを持っていることを彼らはまだ知りません、
この先からはサラマンダーも多くなるのである芝居を行います」
「どういう芝居なの?」
「実は・・」
エマの作戦は大胆だけど・・私達から見たら子供騙しにも見えた、
だがエマはむしろその方がいいと自信たっぷりに語ってるの、
私たちはこの土地のことはわからないのでエマに任せた。
ちなみに・・
この作戦(芝居)に関しては全艦に書面で伝え魔法伝達は禁止、
万一サラマンダーに魔力で読み取られると台無しなので徹底した、
各乗務員は食堂に備えた詳細を見て内容を理解した。
翌日・・
艦隊が動きだし森の中を進行してると敵が現れた、
現れた敵はサーベルタイガーの群れ、魔法を放ち攻撃してくる。
「ドカーン・ズガーン!」
各艦は被弾しあちこちから煙が立ち込める!
「反撃開始!撃て~!」
各艦の主砲が火を噴く、だがそれらは初級魔法を大袈裟にしたもの、
サーベルタイガーはあっさりかわして火魔法を乱射してきた、
各艦に火がたちこめ木人形たちが一生懸命消火していた。
その先に・・
偵察に来ていたサラマンダーが複数隠れていた。
どうやら未知の敵を探りに来ているのだろう、
レーダーで位置は丸見えだが各艦あえて無視した。
「応援に来たわよ~~」
ガルーダとグリフォンが駆けつけ大袈裟な魔法攻撃を放つ、
サーベルタイガーはこりゃかなわんとばかりに逃げ出した、
その後消火を手伝ったガルーダとグリフォンはすぐに去った。
「こいつらは大したことないな」
そう考えたかは知らないけどサラマンダーがレーダから消えた、
どうやら芝居に引っかかったようで全部巣に戻ったようだ、
おそらく明日あたりに総攻撃してくるだろう。
当然ながら・・
この戦い(というか芝居)で傷ついた者はいなかった、
相手のサーベルタイガーも傷ついた者はなし!
と連絡があった。
翌日・・
艦隊は海と川の境に到達し各艦スピードを上げる、
海に入ると縦並びを解除してそれぞれの配置についた、
航空母艦は後ろに下がり響と暁が左右を護衛する。
一時間ほど経ったら・・
約500匹ものサラマンダーがこちらに向かってくる、
戦闘機は全機発進!音速機は左右に展開し敵の後ろに回る、
プロペラ機は各艦の援護として上空待機している。
私の乗る戦艦扶桑と山城が艦隊の一番前に出て横向きになる、
各主砲が向きを変え上空から来るサラマンダーを狙う。
ここで豆知識。
戦艦扶桑と山城は異世界で大幅に改装され独特の艦橋は低くなる、
主砲の配置はそのままだが高角砲や機関砲、ロケットランチャー、
魔法レーダ等備え以前とは比較にならない位攻撃力は増している。
大和武蔵同様主砲は拡散弾、魔法弾、装甲弾と撃つことが出来る、
特にこの2隻はそれぞれ35.6センチ主砲が6基12門もある、
各主砲を使えば要素の異なる弾も同時発射出来る優れものだ。
また水中の敵にも攻撃できる水中魚雷も搭載している。
それに加え今回試験的に配備したイージスミサイルシステム、
これは相手のボスらしき相手に直接攻撃をする巡航ミサイルだ、
扶桑と山城にそれぞれ6発左右主砲近くの甲板に収納されている。
この2隻と金剛・榛名・比叡・霧島にも同等の装備を備えた。
豆知識はここまで。
パワーアップした戦艦扶桑と山城の主砲がサラマンダーを狙う、
装填された拡散弾と装甲弾、イージスミサイルも発射準備、
群れの奥にいるボスらしきサラマンダーにロックオンした。
私たちを舐めきっているサラマンダーがどんどん近づいてくる、
逃げられたら困るので駆逐艦の主砲が届く位置まで引き寄せる。
「サラマンダー射程内に入りました」
「全艦主砲発射!各艦対空戦闘始め!」
扶桑と山城はじめ各艦の主砲が一斉に火を噴く!
無数の拡散弾と装甲弾がサラマンダー達を貫いた!
ギャァァァァァァァ・・・
瞬く間に100体近いサラマンダーが海に落ちた、
イージスミサイルが放たれ相手のボスに一直線に向かう、
自分が攻撃されるとは思ってないボスにミサイルが直撃。
サラマンダーのボスらしき個体はまとめて海に落ちた。
各艦の猛烈な対空砲火と航空機の攻撃でサラマンダーはパニック、
指揮系統を失い混乱するサラマンダーに容赦なく攻撃を仕掛ける、
逃げる個体にも航空機が容赦なく背中を撃ち次々と落としてく。
一見残酷な光景だが皆そんなことお構いなしと攻撃を緩めない。
というのも・・
エマから聞かされた話だとサラマンダーは子供でも容赦なく襲う、
各種族サラマンダーに子供を多数惨殺されたので恨みは半端ない、
一部の艦には我が子を殺された親がいて敵討ちとばかり攻撃してる。
サラマンダーも反撃してくるが単調な攻撃で皆それを余裕でかわす、
弱い物いじめばかりしていたサラマンダーと鍛え抜かれた精鋭たち、
勝敗は目に見える位明らかで次々と落ちるサラマンダー・・
すると巣の島から新たなサラマンダーの集団が出てきた。
多数の応援が駆けつけ先陣のサラマンダー達が活気ついた、
それを待っていたかのようにエマが合図を出す。
「頼みます」
「OK!」
駆けつけたサラマンダーの後ろに複数のガルーダとグリフォンが現れた、
彼女達は転移魔法を使い目印となる音速機に目がけて飛んできた、
完全に囲まれたサラマンダーは青ざめた顔をしていた。
「攻撃開始!」
ガルーダとグリフォンは上級魔法を放ちサラマンダー次々と落とす、
魔法を吸収するサラマンダーでも上級魔法は吸収しきれず粉々にされた、
さらに音速機からミサイル、下からは各艦の対空砲火の攻撃が止まらない。
なすすべもなく落ちていくサラマンダー、それを海の魔物が喜んで食べてる、
今にして思うとコウやデーヴィド達を連れてこなくて良かったと思う、
彼ら男性は優しい面があるからこの光景を見ると敵でも助けるだろう。
だけど・・
エマたち女性陣、もちろん私も子供を殺した相手は決して許さないわ、
命をかけて生んだ愛しい子供を殺した相手に同情する気にはなれない。
最期の一頭が落とされたサラマンダーは全滅したかに見えたが・・
巣の島にはまだサラマンダーがいるらしく音速機で攻撃を・・・
「巣の島には攻撃しないでください」
エマのこの言葉に私エリーナは驚いた。
「どうして?一気に殲滅するチャンスよ?」
「彼らを全滅させると生態系が崩れる恐れがあるからです」
「でも驚異を残していたら・・次はあなた達が攻撃されるわよ」
巣の島では親を殺されたサラマンダーの子供が憎しみの目を向けている。
「それはしょうがありません、それが自然で弱肉強食の掟だから」
エマは寂しそうに呟いた。
各艦の被害はほとんどなく完全勝利でこの戦いは終わった。
全機空母に戻り各艦巡航体制となりドワーフの村に向かう。
だが・・
誰一人この勝利に喜ぶ者はいなかった。
私エリーナとエマは花束を海に投げ黙とうを捧げた。