不幸の召喚娘と政略結婚を迫られる孫娘
サウスの大陸の港から出港する輸送駆逐艦、これにはヘリ等は無い、
その代わり高速バスのような客室が新たに設置され大勢の人も運べる、
武装は俺達が使う輸送駆逐艦とほぼ同じ、なので海賊とも余裕で戦える。
ヘリ等を搭載しなかったのは・・単純に整備が出来ないから!
戦闘機とヘリの共通点は空を飛べることだが構造はまるっきり違う、
そのため大掛かりな整備の時は近くの空母に移動し点検を受けていた。
だがこの世界の人間界はまだまだ発展途上すぎるので基地は無い、
空母を派遣・・これには神族が猛反対、理由は空母そのものの整備、
もし空母が故障して裏世界で留まったら厄介なので俺達も了承した。
だが帆船だけでは海賊に襲われる可能性が高い、なので神族は妥協、
輸送駆逐艦だけ派遣し定期便で使うことを許可、当面はこれで凌ぐ、
ほとんどの海賊は前に駆逐しているので俺達も了承した。
尚乗組員などは現地の軍人を使う、俺達からも派遣はするが人数限定、
特に優秀だと判断した兵士などを鍛え定期便に就航させている。
一隻の輸送駆逐艦がサウスの大陸からクレール島に向かって巡航、
船内はほぼ満員、新天地に希望を求めて移住を決意した者達が乗る、
その中に・・1人俺が元いた世界から強制召喚された女性がいた。
彼女の名は・・
「山崎澪」、19歳の女性だ!
彼女は中学・高校といじめにあい学校を中退、通信制高校に通っていた、
卒業したその日家に帰る途中建設現場の足場が崩れ下敷き・・息絶えた、
だが目が覚めると・・なぜかこの裏世界に強制召喚されていた。
「えっ?ここはどこ??」
その後彼女はこのサウスの大陸の奥地で百姓の仕事を手伝い生活していた、
運よく穏やかで優しい老夫婦に引き取られ何とか生きていたのだが・・
この地にも破壊神の出来損ない達が攻撃、老夫婦は殺されてしまう。
彼女は事前に老夫婦に地下倉庫に閉じ込められ何とか難を逃れた、
だが倉庫から出ると・・老夫婦が殺され家も焼かれすべてを失った。
「お・・おじいさん!!おばあさ~~~ん!!!」
ウワアアアアアアアアアアアアアアアア~~~~ン!!!
自分を受け入れてくれた老夫婦の無残な姿を見て泣き喚くミオ、その後・・
当てもなく彷徨っているとある要塞に辿りつく、そこにガブリエルがいた。
彼女はガブリエル達に保護され・・以降ここで畑仕事を手伝っていた。
後日俺達がこの地を収めガブリエルに国王就任を依頼、彼は頷き国王となる、
以降サウスの大陸は徐々に落ち着いてきてミオも買い物で出歩く事が増えた、
その最中見慣れた果物を見て驚く、その後も俺達の品を見て驚いていた。
ミオはこれらを見て・・
自分の他にも同じ世界の人間が複数召喚されていると確信した!
その時俺達の世界で移住者を募集していると聞き即座に申し込んだ、
そして彼女は輸送駆逐艦を見てさらに希望を膨らませ艦に乗り込んだ。
ミオの隣に座るもう一人の女性は・・
・・・
俺は彼女を 「零」と名付ける、大体20歳位の女性だ。
レイはガブリエルの孫にあたる、数少ないガブリエルを支持する親族だ、
彼女は畑仕事を手伝いながら・・ガブリエルの身の回りを世話していた、
ガブリエルもレイを信頼していて特に溺愛していた。
ある日ガブリエルが総司令官・・つまり俺の存在を知りあることを考えた、
それは政略結婚、強固な後ろ盾が欲しいガブリエルは孫娘を俺に嫁がせる、
自分の大事な孫娘を俺に嫁がせればサウスの大陸は安泰と考えたようだ。
前にピィシィズ達がガブリエルと話し合い後ろ盾を約束してはいたが・・
ガブリエルはそれだけでは不十分と判断し孫娘と深く話し合い説得した、
というのも・・他の大陸でもその動きがあり女性達が次々と動いていた。
俺達の異世界もそうだが・・
各種族は確固たる地位とさらなる進化を遂げるため俺達を深く求めた、
神族も一目置く俺達の戦力は各種族にしてみたら驚異としか見えない、
それに加え最新技術のスマホや食事等を知り・・深い結束を求めた。
そういう意味で俺という存在は各種族には好都合、単に嫁がせればいい、
それだけで深い結束は約束され最新技術を優先的に配備してもらえる、
さらに俺と交わればさらなる進化を遂げられる・・迷いは無かった。
それもあり俺には次々と婚約話が舞い込み妻達がチェックしている、
基本俺には拒否権は無い、ただ本気かどうかだけは事前に尋ねている。
ガブリエル達の裏世界でもこの動きは常習化していた、というのも・・、
小国は大国に侵略されることも多いので政略結婚でその難を逃れていた、
そのため王や重鎮の娘や孫は16歳位になると強制結婚させられていた。
ある程度落ち着いたとはいえ・・
ガブリエル達はその歴史を繰り返していたので内心焦っていた、
この不安を取り除くためには政略結婚しかないと考え孫を説得、
孫のレイも愛する祖父の言葉には逆らえず政略結婚を了承した。
そしてレイは・・ミオと一緒に輸送駆逐艦に乗りクレール島に向かった、
ミオの移住を聞いたガブリエルは孫娘との同行を希望、ミオも了承した、
ミオは単独行動を考えていたがガブリエルの言葉には逆らえなかった。
「まもなくクレール島に到着します!船が停まってから降りてください」
艦内のアナウンスに従う庶民たち、艦は港に到着し乗組員が誘導している、
ミオとレイは別室に案内される、ガブリエルの連絡があったからだ、
ちなみに現時点ガブリエル等の王や重鎮だけに簡易スマホを支給している。
「ミオとレイ様ですね、私が今後担当するシェーヴルです!」
対応したのはギルドの代表の1人シェーヴル、その姿を見て2人は驚く、
その顔を見たシェーヴルは笑い自分は異世界から来た種族だと説明する、
ここで以前書いた彼女の立ち位置を一部抜粋、レイたちにも説明した。
「今自分達が召喚されたこの異世界では一時期召喚が流行っていた、
召喚された異世界人達がギルドを立ち上げて統治をはじめ規模を拡大、
シェーヴルもそれに加わり天使族はじめ各種族と貿易をしている」
「天使族のアリーゼの担当の女性で見た感じ・・なんかヤンキーっぽい、
なんか暴走族にいそうな風貌だが意外と大人しくおしとやからしい、
故郷は山脈地帯、頭に小さなヤギのような角があり同年代も一緒にいる」
・・・
ミオとレイはこの説明を聞いて・・ポカンとしていた。
!
ミオは正気に戻り疑問を細かく質問、シェーヴルはその質問に全て答える、
話についていけないレイを無視して2人は熱弁、そしてミオが悟る、
今から行く俺達の異世界は・・自分のいた世界に近いことを!!
・・・
まあ魔法があるので違う所も多いけどな・・
「状況は大体説明した通りです、移動・移住を希望しますか?」
「それはお願いしたいのですが・・もし相性等が合わなかったら?」
「その時は全力でサポートします、ご希望があれば帰ることも可能です、
私達は強制はしません、犯罪などを除き基本自由に行動してもらいます、
その中で適した職種があれば働いてもらい生活すればいいだけです」
ミオはそれを聞き安堵していた。
が・・・
ここでレイが・・自分の不安を口にする。
「祖父から聞いたと思うのですが・・私は政略結婚させられる身です、
なので急ぎ相手方の元に向かいたいのですが・・」
これを聞いたシェーヴルが意外な返事!
「嫌なら帰ってもいいのですよ!コウさんはそういうの嫌いますから!」
「は・・はい??」
「私達の総司令官・・コウさんには既に100人を超える妻がいます、
なので貴方が無理に嫁ぐ必要はありません、私達はそれで差別しませんよ」
「で・・でも私達の立場を考えると・・」
「その心境は理解できます、ですが我々としてはそれは迷惑でもあります、
念の為お伝えしますが・・コウさんの妻は全員コウさんを本気で愛してます、
好きな人に嫁ぐ・・それでいいのではないでしょうか?」
「それは理想ではありますが・・」
「貴方が不安なのは理解できます、なので一度コウさんと面会を設けます、
そこで本音を伝えてください、コウさんは貴方の気持ちを尊重するでしょう、
そこで改めて考えてはいかがですか?我々は全然急ぎませんから・・」
「わ・・わかりました、それでお願いします」
こうしてミオとレイは・・
俺達の異世界に向かう事となった。