理不尽な裁判と転送の鏡に要する費用の確保
俺は妻たちと猛烈に争っていた、まあ暴力ではなく裁判の話だが・・
向こうは精神的慰謝料としてrcブランドの全譲渡を訴えてきた、
具体的には店舗を含む全経営権と使用権の譲渡等全般を要求してきた。
これに対して俺やブルーアイズ、コロや猫は拒否、共同ブランドがその理由、
俺はともかく猫達は妻達の管理下ではない、よって譲渡する必要は無いと断言、
特に名付け親となったホーリーキマイラ猫が女性の人間姿となり訴える!
「こんな暴論受け入れるわけにはいきません!」
普段ホーリーキマイラ猫が人間姿になることは少ない、だが今回だけは別、
自分が発案したブランドを関わってもない妻たちに譲渡する理由が無い、
これは数の暴力だと訴える、これには妻達も言葉を詰まらせる。
俺はこのホーリーキマイラ猫に期待、彼女なら妻たちの理不尽も蹴散らせる、
対する妻たちはホーリーキマイラ猫の言葉は正当論なので打つ手が無くなる・・
だがここで神族のアフロディーテがホーリキマイラ猫に注目した。
アフロディーテは急ぎサーラとエマツーを呼ぶ、この2人はこの猫の飼い主、
サーラとエマツーは対面に座りホーリーキマイラ猫に帰るように訴える!
「あなたは私達の従属でしょ?なんでコウの所にいるのよ!」
「そうよ、今なら許してあげるからもどっていらっしゃい!」
これにはホーリーキマイラ猫も迷う、確かにサーラ達は飼い主的立場、
だが俺と出会ってから彼女はほぼ猫の姿で生活を共にしていた、さらに・・
俺が実質養っていてサーラ達は知りながら放置していた。
彼女は悩む、だが苦楽を共にして正当な報酬を支払う俺コウと・・
八つ当たりばかりされて頻繁に頭にコブが出来たサーラとの時間・・
・・・
先を考えたら圧倒的に俺の方が信頼できるのでここは拒否した!
「なに言ってるのですか?確かに一時期飼っていましたがその後は無視です、
反面コウさんはきちんと養ってくれて報酬も頂きました!なので戻りません!」
これにはサーラもエマツーも言葉を詰まらせる、当然だろう、その通りなのだ、
ただ彼女達も無視していたわけではない、俺コウが猫好きだから黙認しただけ、
それと新たに俺達の世界に来て仕事に取り組んでいたので忙しかっただけ・・
・・・
ホーリーキマイラ猫のおかげで裁判はこちらに有利な空気に包まれる、
だがエリーナ達も引き下がる訳にはいかない、それには大きな理由がある、
それは・・先般アポロンが言っていた「転送の鏡」に関してだった。
転送の鏡はこの異世界のどこかにあるのだが・・
はるか昔の話に加え神族も話を聞いた程度、なのでどこにあるかわからない、
今後の事もあるので転送の鏡を使い他の異世界との架け橋を構築しておきたい、
そのためには莫大な調査費がいるのでアフロディーテも悩んでいた。
それに加え転送の鏡はこの異世界に一つだけ、他の異世界も調査する必要がある、
さらに調査費が嵩むため何かしら益を生み出す産業が欲しいと考えていた、
これには天聖族はじめ女性幹部達は知っている、だが最重要機密としている。
というのも・・
転送の鏡は神族の領域に絡むため管理は神族が全体管理するのが望ましい、
だが何かしらの理由、例えば都市部の地下にあった場合立ち退きが必要、
神族が転送することは出来るが穴が出来るので立ち退き埋める必要がある。
さすがに無料でそれらを行えと言うのは虫が良すぎる、なので対価が必要、
そのような場合も想定して予算を構築する必要があるので頭が痛かった、
特に今はスマホがあるので無理難題言うとたちまち各地に発信されるからだ。
そのため・・神族の威厳を保つためにもその辺の対応は慎重を要していた。
そんな矢先俺達が構築したブランドが予想以上の売上げを営んでいた、
これはチャンスだと考え妻達に権利を譲渡させて運用すれば面目も立つ、
俺に多妻・・天聖族も娶らせたのはこういう側面も考えていたからだ。
さらに妻たちに運営させれば長期の利益も確保できる、まさに渡りに船、
妻達もアフロディーテの考えは聞いていたので全面協力を約束していた、
だが俺コウにそれは言えなかった、言うと俺の性格上必ず妥協するからだ。
アフロディーテ達は俺コウの斬新な発想力に一目置く、だが問題もある、
俺の発想力は自由な状態でないと発揮しない、仕事にすると妥協するからだ、
そのため依頼や仕事ではなく放置にすることで本領発揮すると見抜いていた。
実際俺は放置されてしがらみが無い時は自分でも驚く位アイデアが出る、
だが仕事に関わるとバランスを重視するので妥協してしまう事が多い、
そのため妻たちは自分で出来ることは自分達で行い俺を放置させている。
・・・
アフロディーテはじめ妻達は考える、ホーリーキマイラのこの抵抗は予想外、
俺やブルーアイズやコロに関しては問題外、怒って睨めば確実に勝てるからだ、
だがこのホーリーキマイラ猫は自分達と同じ女性、無理難題は控えたかった。
ここで天使族のソネットがある案を出す、それは彼女を自陣に迎え入れること、
名付け親なのは確か・・裏を返すと彼女を通せばブランドを使う事が出来る、
そうすれば俺達は卸問屋扱い、商品だけ納入させ手数料を払えばいいだけとなる。
この案を聞いたアフロディーテは閃いた、そしてホーリキマイラ猫とメスの猫、
これらを別の部屋に招き詳細を説明、さらにある約束をする。
「そ・・それは本当なのですか?」
「ええ約束するわ、あなたも自分のブランドを着れないのは切ないでしょ?
そちらの猫もそうでしょ?せっかく女性に生まれたのに寂しくないの?」
・・・
アフロディーテが約束したこと・・
それはホーリーキマイラ猫と子猫のメス2匹を人間姿に固定することだった、
これには3匹は悩む、自分のブランドを自分で着ることができなかったからだ、
次々と売れる自身のブランド服を着れないのは寂しいと感じていた。
さらにアフロディーテはダメ押し!
「コウたちを考えるのはわかるわ、でもあれはほっらかしでもいいのよ、
ほったらかしの方が彼らも本領発揮するわ、あなたはブランドを守りなさい、
そうすればあなたも私達も・・コウたちも丸く収まるわ!」
なんなんだよそれ・・
ホーリキマイラ猫達はしばらく考えた後・・
・・・
「わかりました!仰せに従います!」
「そう・・ありがとう!」
そうして・・
「コウさん!ごめんなさい!!!」
ホーリーキマイラ猫のメス達は離脱、これで俺達の敗北が確定した。
ホーリーキマイラ猫とメスの子猫2匹は俺に頭を下げその場から離れる、
以降彼女達は人間姿となりエリーナの屋敷で住みブランドを守ってゆく、
残された俺達は妻たちの睨みで撃沈!店舗や土地などを没収された。
さらに倉庫は空、既に妻たちが中の品を奪っていたので俺達は放心、
武士の情けと言われ通帳の残高はそのままだが・・以降の振込は無し、
各店舗は妻たちの監視下となりさらに賑わいを加速させていた。
こうして裁判は確定、俺達は敗訴となり仲間3匹も失う羽目となった。
俺達は・・・
・・・
構築したブランドが根こそぎ奪われ・・
・・・
涙が止まらなかった。