小人族の懇願と破壊神の雫
俺達は各地に戻る・・その前にそれぞれが各地の戦場に訪れる、
ここで犠牲になった者たち・・敵味方問わずに供養するためだ、
この行動にはタナトス級のアシュラをはじめ小人族達も参加している。
戦場各地に供養塔を建て・・黙とうを捧げ犠牲者への供養とした。
2日後・・
各地の慰霊も済ませて・・
俺達はルーム国の大会議室に移動、幹部達が集結している、
ここにアシュラを始めフレイやフレイア、光輝族と聖皇族、
小人族や破壊神のグリム・ヘル級の幹部たちも集まっている。
進行役に立候補し採用されたエルフのエマが宣言する!
「これより今後に向けての話し合いと会議を行います!」
全員が立ち上がり軽く礼、アシュラたちも見よう見まねで真似した、
まず話し合うことは彼ら彼女らの今後をどうするのか?を確認する事、
現時点で思いつくのはこの3つ。
● このまま俺達と一緒にこの異世界で住む。
● 元いた異世界に戻り生活再編をする。
● 他の異世界に移動して新たに開拓する。
尚・・
元いた異世界に帰る、または新天地を探す場合神族が対応するそうだ、
俺達が海底に艦隊を潜める際に用いた空気玉のようなものを展開する、
その中に入れば宇宙空間でも移動が可能で他の異世界に移動できる。
だが・・・
それぞれが距離が遠すぎることもあり・・
最短でも移動は3~4か月程度、一度帰ったらもうここには戻れない、
さすがの神族でも往復すると疲労が蓄積するので戻るとすぐ眠ってしまう、
再び起きるのは最低1年、その間神族は戦えないので危険と言われた。
そのため・・その後は交流は完全に途絶えてしまう。
これを前提に話が進むことになる。
まず小人族の考えを尋ねた、ちなみに彼ら彼女達は・・
・・・
なぜかサーベルタイガーの子供達の背中に乗っていた、まるで馬扱い、
だがお互い仲がいいようで・・・
・・・
食べられないか不安だが・・
・・・
本人たちが納得しているので・・俺はほっとくことにした!
「小人族としては・・仮に戻っても魔獣に震える日々に戻るだけです、
ここはみなさん優しいので・・総意としてここでの生活を希望します、
もちろんお手伝いできることは全力で手伝いますのでお願いします」
小人族達は俺達とここで住むことを希望していた。
ちなみに小人族はある特殊な魔法が使える、それは物を小さくする魔法、
生き物は無理だが・・俺達の感覚で30センチ位の物は小さく出来るそうだ、
例えばスマホ、拳銃、料理や折り畳んだ服などは自分サイズに小さく出来る。
小さくしても性能はそのまま、そのため小人族もスマホが使える。
ただ条件があり・・自分から10m以上離れると魔法が切れ元に戻る、
だが重要な物はプロテクトできるそうだ、数は限定されるがそれは固定、
自らの意志で解除しない限り自分サイズでそのまま使えるそうだ。
この魔法でスマホや洋服、靴や銃等を支給、銃は護身用として渡した、
発射時は小さいが即解除又は10m離れると弾丸が元に戻り威力も戻る、
これなら大型の敵と遭遇しても自分を守れると支給を希望されたからだ。
食事に関しても同じ、自分サイズに小さく出来るのでそのまま食べられる、
当初は俺達のサイズのまま提供してそれを小分けにして与えていた、が・・
「私達も同じように扱ってください!」
この扱いに怒った小人族の女性陣は料理を魔法で自分達サイズに変える、
その後俺達と同じように食を楽しむ、以降これは当たり前となってしまう、
料理人達はわざわざ同じ料理を作る羽目に・・さらに思いっきり量が減る・・
あれ?
食べた食材が元通りになるとまずいんじゃないのか?
体内で膨らみお腹が破裂するんじゃないのか?
「食べた物はそのまま消化されるので大丈夫です!」
失礼いたしました!
小人族の希望を聞いた各種族は賛成、特に反対する理由は無いからだ、
小人族達はルーム国での生活を希望しているので国王が了承した、
今後は出来る仕事を模索しながら一緒に暮らす事となった。
次に光輝族と聖皇族たち、彼ら彼女らの王子と王女が挨拶をする、
息子と娘は俺達の世界の名を希望したので俺が考え提案をした、
その名前は・・
王子は・・カウノス!
王女は・・ビュブリス!
この名前はギリシャ神話に出てくるある兄妹の名前なのだが・・
兄を愛しく思う妹と禁断の愛を拒否する兄、これを2人は本で知る、
アメリカ人のライアンがこの話が好きで小説を書いていたからだ。
なぜか2人はこの小説にのめり込み・・
この名前がいいと言うので俺達は了承した。
光輝族と聖皇族は元居た異世界に帰ることを希望してはいるが・・
・・・
俺達の世界も魅力的なので1か月ほど考えさせてほしいそうだ、
当面は東の大陸で暮らし気持ちが固まったら連絡すると言っている。
ちなみに日本人の武士らしきタナトス級の忘れ形見の女性だが・・
こちらはちゃんとした名前があったのでそのままにしてある、
その名前は・・
「 武田 夏姫」
ほとんどの日本人が知ってる武田ではなく一地方の同名の大名、
そこの一人娘だったらしく山奥で静かに暮らしていたらしいが・・
ある日突然敵が攻めてきて家は焼かれ絶体絶命に追いやられた。
自分の護身の武士のタナトス級と一緒に炎に焼かれ・・即座に転送、
その後は人質とされタナトス級は苦しみながら破壊神に操られた、
彼女はほとんど眠らされていたので詳細は知らなかった。
ただ・・
ある日一度だけ面会が許され・・
その時にある品を受け取っていた。
「これです!」
透明な涙のような水晶・・まるで雫のような形をしている、
なんでもお守りだと渡され、その後彼はその場を去っていった、
それが夏姫とタナトス級の最後の面会だったらしい。
会議前に技術者ライアン達が預かり調べたが・・わからなかった、
他の種族たちも同じ、天使族や天聖族達も見たことが無いと言っている、
危険は無さそうなので夏姫に返していたが・・どうも気になる。
ここでエリーナがリィブラに尋ねる。
「リィブラさん!神族ならわかるんじゃない?尋ねてくれます?」
「わかりました!問い合わせてみます。」
ちなみに俺とリィブラは一番離れた席にそれぞれ座る、俺が逃げた、
既に大嫌いと言われていることもあり怖くて目も合わせていない、
下手に彼女に近づくとまた悪夢を言われるので距離を取っている。
そのため俺は天聖族とのやりとりの時タウロに全部お願いしている、
それが気にいらないリィブラは時々俺を睨みつけている。
リィブラはアルテミスに尋ねている、そのアルテミスは知っていた!
「それって・・もしかしたら破壊神の雫かもしれないわよ!」
「えっ?何ですかそれ?」
「破壊神が時々出す涙よ!これを持っていたら魔除けになるわ!
破壊神の気配がある雫をもっていたら魔物が怯え近寄らないの、
あのタナトス級がなんらかの形で手に入れたようね」
「持っていても大丈夫なのですか?」
「この異世界なら大丈夫よ、破壊神の管轄外だから問題ないわ!」
アルテミスはそう言った後さっさと電話を切り食事に没頭していた、
前の戦いで相当消耗したらしく前に献上した食べ物を食べまくる、
詳細を知った夏姫は・・タナトス級を思い出し涙を流す。
その時・・
彼女の涙が破壊神の雫に落ちる、次の瞬間雫が光り出した!
驚く俺達、一番近くにいたアリエスが即座に雫を奪い取る、
そして空いた空間にそれを急いで投げる・・
ボ~~~~~~~~~ン!
なにやら煙が立ち込め・・あたり一面は煙に包まれた、
だが不思議だ、この煙は煙たくないし涙も出てこない、
しばらくした煙が晴れていき・・
・・・
・・・
俺達の目の前には・・
・・・
一匹の柴犬が現れた。