聖域から落ちるヘミニとカオルを抱いたクリスティーナ
ヘミニはエスコルピォから何とか逃れ海に向かって一直線に落ちている、
彼女はエスコルピォが苦手のようで・・この先どうしたらいいのかしら?
下手に戻ると・・間違いなく怒られ厳罰で独房に入れられるだろう・・
これは戻れそうにないわね・・
そう考えながら落ちていたら・・
真下にいる第1艦隊に気が付いた。
幸い第1艦隊はまだ誰も気づいていない・・
見張りがヘミニに気づいた!
「お~~い!美女が空から落ちてくるぞ~~?!」
「なんだと?・・ああ・・確かに落ちてくるな・・」
「やばい!気づかれた・・」
デーヴィド達が驚きの目線でヘミニを見ている、完全に気づかれた、
ヘミニは考えた、このまま逃げると自分が完全に天聖族とばれてしまう・・
なんとか誤魔化し・・
苦し紛れに雲から巨大な鳥を出し攫われたように見せる。
そして・・
「た・・助けてくださ~~い!」
ヘミニは鳥に攫われ落とされたフリ、それを見たクリスティーナ!
彼女は・・こう叫ぶ!
「彼女を助けるのよ!急いで!」
「オ~~~~~!」
ガルーダはじめ各種族はシートを広げ空を飛ぶ、そしてヘミニを受け止める、
ゆっくり戦艦モンタナの艦首に降ろした後・・ヘミニは大ウソ泣きをする!
「あ~~~ん怖かったわ~~~~!」
皆は疑いながらも・・ただ巨大な鳥は自分達もしっかり見えていた、
疑う余地はなかったのでヘミニを慰める。
「もう大丈夫よ!運が悪かったわね攫われるなんて・・」
これを聞いたヘミニは・・誤魔化せたと内心ほっとしていた。
「ところで・・あなた誰?」
上級グリフォンのルミナがヘミニに尋ねる、ヘミニは仮の証明書を出した。
「わ・・私こういうものです・・」
ルミナはそれを見て・・
「あら?あなたヤマダさんの村にいたの?でも初めて見る顔だけど?」
ルミナは以前東の大陸に行った時ヤマダさんの村で数日過ごしたことがある、
その際村人たちと親交を深めていたのでほとんどの村人たちを知っていた、
そのルミナが知らないとなると・・
・・・
空気を察したヘミニは・・さらに誤魔化しの行動に出る。
「そうですね、えっと・・あなたはルミナさんでいいのですか?」
「そうだけど?」
「それなら私の事は知らないと思います、だって私いませんでしたから・・」
「えっ?どういう事?」
「私幼い時に村から出ていたんです、いわゆる口減らしで村から出ました、
しばらくの間他の村を転々としてましたが・・あなた達のおかげです!
村に食べ物が豊富に出来たから戻ることが出来るまでにはなりましたが・・」
ヘミニはルミナがスマホでヤマダさんに確認しようとすることを察知し・・
「たぶんヤマダさん達も私の事は知らないと思います」
「えっ?でもあなたはヤマダさんの村から来たんでしょ?」
「はい、でもあくまで私は生まれが・・ヤマダさんの村というだけです、
ご存じだと思いますが・・基本生まれた所から来たと言う場合がほとんどです、
でないと・・異なる種族の村から来たと言ったら最悪戦争になりますから」
・・・
ルミナ達は黙り込んだ、当然だろう、これに関しては俺達とは感覚が異なる、
生まれた所だと・・当然同じ種族で暮らしているので問題ないが他の村だと・・
種族が異なる場合が多いので、そこから来たと言えば攫われたと誤解されやすい。
ルミナ達は・・
この言葉を聞いてこのこと・・昔の慣習を思い出し納得したようだ。
というのも・・
口減らしの為各地に散っている全員が様々な理由で元の所に戻っていない。
俺達が来る以前は・・
この手を使い仲間を救うためと・・侵略の正当性を主張する種族が多かった、
そのため・・あえて豊かな村の傍に乳児等を捨てその住民たちに育てさせる、
子供がある程度の大きさになったらその村を尋ね子供に質問をする。
当然子供は育ててもらった村しか知らないので・・
「わたし・・この村の出身です」
この言葉が侵略開始の合図となる。
「何言ってるんだ?お前は俺達と同じ種族だろう?探したんだぞ」
「貴様ら!俺達の子供を攫いやがったな!」
「ひどいことしやがって!こんな村滅ぼしてやる!お前らかかれ!」
こうして村を侵略し・・それらの村を滅ぼす事が後を絶たなかった。
ヘミニはこの昔の慣習を話すことで・・・この場を乗り切った。
その後俺達異世界人が来たことで客観的な判断が出来るようになった、
結果そのような理不尽な行動をする種族は追い払われ淘汰されていった、
今ではそれらの種族も改心して滅ぼした村に供養を欠かさないそうだ。
・・・
これに関しては・・
あまり深く関わらないようにしよう。
「そう・・あなたも相当苦労したのね・・」
少し涙ぐむルミナ、彼女は完全にヘミニの事を信じたようだ、が・・
物陰で隠れて見ていた上級ガルーダのジセルは・・ヘミニを疑っていた、
ヘミニの誤魔化しに関してはその通りだと納得はしていたが・・
・・・
ヘミニが出した鳥の幻影、あのような鳥は見たことがなかったからだ、
以前ガルーダ達は天然石欲しさにルーム王国を長く攻めていた経緯がある、
そのためこの付近の生態系に関しては深く熟知していた。
それと・・
あれだけの大型の鳥を自分達が見逃すはずはない・・それは確信出来た、
さらに人間を攫うとなると・・そんな危険な鳥は自分達が駆除している、
実際ガルーダ達は危険な鳥類は追い払いルーム国から遠ざけている。
このことから・・
ジセルは・・ヘミニが天聖族の可能性が極めて高いと確信していた、
だが表だって話すと・・レイミも敵わない天聖族を刺激させることになる、
艦の中で暴れられると手に負えないので・・クリスティーナと相談した。
ジセルからこのことを聞いたクリスティーナは・・
「そう・・私もなんとなくそう思うわ、なにか強大な力を感じるの」
「どうする?艦の中で暴れられたら手に負えないわ」
「そうね、でもある意味チャンスだわ!」
「えっ?どういう事?」
「彼女達が本気で私達と対立する気なら・・こんな芝居はしないと思うの、
それに彼女には・・何か調べたい事があるから私達の所に来た・・
そうでないと力を抑える意味が無いわ、だから・・」
クリスティーナはジセルに耳打ちして・・
「そうね、その方が手っ取り早いかもね」
「じゃあどうする?このモンタナの艦橋に案内する?」
「その方がいいわね、彼女との話は私がするわ」
「それは危険よ!私がするわ」
「大丈夫よ、私カオルを抱いてるから・・攻撃はされないわ」
「・・・わかったわ、私は万一に備えて待機するわ」
クリスティーナはあえて自分がヘミニと話すことにした、と言うのも・・
以前天使族から聞いた聖域でのしきたりが気になったからだ。
● 神に使える私達は暴飲暴食を控え無駄なく食を取ること。
● 一日3回神に祈りを捧げる事。
● 地上を監視し危険な輩に天誅を加える事。
● 規律正しく日々を過ごし各種族の模範となること。
● 贅沢は厳禁、最小限の衣食住で日々を過ごす事。
● 色恋事は厳禁、神が認めた相手と子孫を残す事。
このしきたりの中で・・
● 地上を監視し危険な輩に天誅を加える事。
● 規律正しく日々を過ごし各種族の模範となること。
この2つに注目したからだ、、もし自分達が危険な輩と見られていたら・・
当然自分達を攻撃するだろう・・だが現時点そのような動きはなかった、
そしてもう一つ、模範になるということは闇雲には動かない・・
・・・
子供を抱いた自分には絶対攻撃してこない、こう確信したからだ。
そうしてクリスティーナはカオルを抱いたまま艦首に移動、ヘミニに挨拶、
ちなみにデーヴィドはジセルの胸押し付け攻撃により部屋に閉じ込められていた、
それに興奮したのか・・ジセルと営みをはじめて当分出てこなかった。
「はじめましてヘミニさん、私は戦艦モンタナの副艦長クリスティーナです」
「えっ?ああはじめまして、ヘミニ・ヴァレンシアと申します」
「ヘミニさんこの度は災難でしたね」
「あっ・・はい、鳥に攫われるとは思わなかったので・・」
「よろしかったら・・この艦で休まれてはいかがですか?」
「えっ?いいんですか?」
「それはもちろんです、お茶を用意していますからこちらにどうぞ」
「あ・・ありがとうございます」
ヘミニはクリスティーナの後ろを歩き・・艦橋に案内されたが・・
どう見てもここは艦の指令室、そこに案内されたということは・・
・・・
「どうぞお座りください、飲み物はどれがいいですか?」
クリスティーナはカオルを抱いたまま席に座る、それを見たヘミニは・・
・・・
「なるほどね、全てお見通しということですか・・」
「えっ?そんなつもりは全然ありませんが・・」
「誤魔化す必要はもう無いようですね、私は天聖族の隊長です」
ヘミニは変装を解き・・本来の姿に戻って席に座る。
「私に話があるようですね、答えられる範囲でお答えしましょう!」
「あっ・・その前に!!」
クリスティーナはカオルをヘミニに預ける。
「すみませんが・・その子をちょっと抱いていてください」
驚くヘミニ・・そっとカオルの顔を見ると・・・
「ダァダァ・・アハハハハハハハ・・」
ヘミニに抱かれて喜ぶカオル、その顔を見たヘミニも笑顔となる。
そしてクリスティーナは・・艦橋のドアを一気に開く、すると・・
ダダダダダダダ~~ン・・・
ドアに耳を澄まして・・会話を聞こうとしていたルミナ達が倒れてきた。
「いたたたた・・クリスティーナひどいよ~~!」
「盗み聞きは許しません!」
「えへへ・・ごめんなさい・・」
そして・・
なぜかクリスティーナ達は一列に並び・・
・・・
ヘミニに向かって土下座をしていた。