グリフォンからの宣戦布告
戦艦武蔵が鍾乳洞の中に新たに建設された専用ドックに入った、
先般の戦いで壊された箇所を修繕するため・・だけではない、
大幅なパワーアップが必要と祖母木人形が俺デーヴィドに教えてくれた。
ガルーダとの戦いで武蔵は主砲弾を相手攻撃魔法の相殺に使っていた、
それではこちらの攻撃力が格段に落ちるので対策が必要であると・・
ガルーダから仕入れたある金属を使い大幅な改修を行うそうだ。
「武蔵は当分使えないわよ、その間は大和が旗艦として頼むわね」
何でもコウとその祖父木人形が考えた新装備の試作品を載せるそうだ、
上手くいけば他の軍艦にも搭載したいと意気込んでドックに籠っている、
その間の総司令官は俺デーヴィドが担う事となった。
ちなみに・・・
エリーナさんも一緒に籠っている、コウに気があるのかな?
その辺をクリスティーナが俺に語るように途切れ途切れ愚痴っていた。
「お姉ちゃんは好奇心旺盛ですから・・」
「新しい物を見るとすぐ飛びつくんです!」
「私が曲やお菓子を作ってるといつも割り込んで邪魔するんです」
・・・
猫みたいな人なんだな(ドックではコウたちが翻弄されていた)
俺たちは修繕が済んだ王城に戻ろうとしたとき・・
お祖母さんが何やら危険を察知したらしく慌てて俺たちを追ってきた。
「デーヴィド!急いで艦隊を率いて西町に行ってちょうだい」
「お祖母さん、どうしてなんだ?」
「これからはお祖母さんではなくお姉さまとお呼びなさい!」
「いい年して・・」
俺はお祖母さん・・いやお姉さまに思いっきり頭を殴られた。
西町はルーム王国城から見て島の西端にある町だ、
ルーム王国は東端に王城がありその周りが首都になる、
西端の町は首都に次ぐ規模で大きな港も備えている。
「何か嫌な予感がするのよ、あそこが攻められそうでね、
あそこは手薄だから急いで備えを増やしておく必要があるわ」
お姉さまが危惧してるのは先般ガルーダから聞いた危険な存在、
話からしてグリフォンがこの国に攻めてくる可能性は高いだろう、
首都付近はある程度備えが出来たが他はまだ手付かずも多い。
特に西町は地形的に西の大陸に一番近い位置にある、
ここが狙われると予感するお姉さまの気持ちは理解できる。
「わかりました!行ってきます」
俺とクリスティーナは港に停泊している大和に乗り込み出港した。
その後ろに航空母艦翔鶴・瑞鶴、重巡古鷹・利根。軽巡阿賀野・
能代・酒匂、駆逐艦暁・響・雷・電と続く。
しばらく巡航したら古鷹が大和を追い越して一番前を護衛する、
他の艦もそれに続くかのように大和を囲み護衛体制に入った、
追加で海底の敵にも備えてと潜水艦伊400型2隻も合流した。
潜水艦は浮上して追ってきたが速度は17ノット程度(約34km位)
他の艦もそれに合わせて巡航したので予定より2時間遅れ現地に着く、
俺たちを待っていたのか上級ガルーダが西町の上空を何度も旋回していた。
上級ガルーダは瑞鶴に着陸、そのままエレベータに乗り収納される、
本体より光の球が出て若い女性が現れた、20代後半位の女性に見える、
彼女は俺たちがいる大和の艦長室に案内され入ってきた。
「はじめまして、私はカオス様から命を受けこちらに来ました」
どこ向いて喋っているんだ?
彼女はあさっての方向を向いて俺たちに挨拶している。
「すみません、私人間姿になると視力が各段に落ちるので・・」
近眼の魔物なんて初めて見た。
彼女とはその後も会話が成り立たず見かねた木人形が助け舟、
メガネを何点か持ってきてガルーダ女性にあれこれと試した。
「見えますわ!ありがとうございます!」
それはよかった。
「それと・・私にも人間の名前を考えて頂けるとありがたいのですが」
一応本体の名前を尋ねたが・・とても長かった。
近くにいた木人形にも応援を頼み思いつく名前を紙に書いた、
その結果・・
この名前が気に入った様だ。
「フレア・ジセル・ジェルメーヌ」
一応言葉の意味も伝えた。
フレアの意味はいろいろあるがここでは「太陽」を伝えた、
ジセルとはフランス語で「誓い」ジェルメールはフランス語で「妹」
太陽のように明るく正しく生きることを誓う大事な妹と適当に論理を並べた。
「ありがとうございます、私のことはジセルとお呼びください」
満足そうでなにより。
「ところでジセル、君はカオスから聞いていた情報通なのかい?」
「はい、私はあなた達にグリフォンの情報を伝えるのが役目です」
「では尋ねたい、グリフォンはこの国に攻める気はあるのか?」
「配下の魔物を使って入念に調べました、間違いなく攻めてきます!
遅くとも一週間以内、開戦に向け周到に用意してましたので」
「どんな用意なのですか?」
「あなた達の軍艦対策ですね、具体的には実射弾を弾く訓練、
他にも連携を組んで多方面からの魔法攻撃を入念にしてました、
彼らも私たちの対戦を視察してたようですから・・」
「手ごわそうだな」
その時ジセルの手下らしき鳩位の魔物が傷を負って飛んできた、
その口には手紙、近くにいたクリスティーナがその手紙を受け取る、
手紙を渡した魔物はその場に崩れ木人形が手当している。
「なんて書いてあるんです?」
クリスティーナがジセルに手紙を渡す。ジセルが急ぎ手紙を読んだ。
「明日からルーム王国を攻撃する、降伏するなら今の内だ、
無条件降伏してドラゴンの結界を解けば命だけは助けてやる、
尚、降伏以外は一切応じない」
「間違いなく宣戦布告だな」
「そうですね」
「どうします?」
「こんな無茶な要求は聞けない、戦う準備をしよう」
「わかりました」
各艦が慌ただしく戦闘準備を始めた。