精密射撃の下準備とサユミとタケシの突然の心揺らぎ
フェニックスの裏世界で住んでいる地底人たちは各地に点在している、
あまり近いと養分が無くなりやすいようで一定の距離を保っているようだ、
今回会った親子のご近所さんは一番近くても3kmほど離れている。
今回は親子の家から半径100km以内にいる地底人が同行を希望してきた、
他の地域の地底人は遠いこともあり今回参加は見送り経過を見守るようだ。
裏世界にいる12隻の艦船は分散し近隣は艦で、遠方はヘリで迎えに行く、
約500人の地底人が集まり各艦に分散して乗り込み出港を待つ。
というのも・・
天使族とヘリが各地の地形を調べているためまだ戻っていないからだ、
例の物質・・腐葉土石と名付けたこの物質を地下に埋めるための下準備、
上空から地形を撮影しておいて後日精密射撃用の資料として使うからだ。
現在考えているのは・・
腐葉土石の横に円状の結界を展開、その中に大量の砲弾を集中して撃ち込む、
その爆発で大穴を開けて・・そして腐葉土石の周りを爆破して穴に落とす、
かなり大胆だが一番手っ取り早い方法なのでこれを採用することにした。
ただ周辺の環境に悪影響が及ばないよう事前に地形を徹底的に調査する、
もし水脈などを塞ぐと・・それを糧としている種族に迷惑かけるからだ、
その地に住む地底人にも詳細を尋ねながら用心に用心を重ねる。
後日その資料を元に各艦で精密射撃を行い火口のような穴を開けていく、
穴が空いたらダイナマイト等で足元を砕き腐葉土石を穴に転がり落とす、
あとは地底人の魔法で土を埋めれば地震前の状態に戻るそうだ。
しばらくしたら天使族とヘリが戻ってきた、全員回収して各艦動き出す、
裏世界への出入り口に戻る各艦、途中ブイを回収しながら戻ってきた、
全艦無事出入り口を通過、大和と第1艦隊と合流した。
合流後は戦艦モンタナを旗艦として全艦チューリップの港に戻る、
総指揮をデーヴィドに任せ俺は最初に出会った地底人親子と面談、
どうやら地底人たちは俺達との同盟・交流を希望しているようだった。
それは構わないが・・
まあ・・まずは俺達の世界を体験してから今後を決めようと提案、
普段地中で過ごす地底人がすぐに地上に馴染めるとは思えない、
まずは深く考えずに俺達の世界を堪能してほしいと提案した。
地底人もその言葉を聞いて安心したのか・・笑顔で頷いてくれた。
2日後・・
艦隊はチューリップの港に全艦戻る、ここで地底人たちは乗り換え、
地底人に配慮した高速列車を用意して東の大陸に移動してもらう、
ヤマダさんに詳細を説明したら・・任せろと言うので任せることにした。
地底人は東の大陸のヤマダさんの村に全員移動、俺達の植物の説明・・
なぜか地底人たちは村の壁に描いてあるアニメキャラに大興奮していた、
自分達も描きたいと言うので・・滞在期間の大半は描くことに専念していた。
地底人はあまり動かずじっとしていることが多いので・・・
絵描きは自分達に適した趣味だと張り切っていた。
・・・
俺達の植物を観察に来たんじゃないのかな?
目的が思いっきりズレてるような・・
俺の心配を他所に・・地底人たちは満面の笑顔でキャラを描いていた。
・・・
当分ほっとくことにした。
各艦ルーム王国に向かって巡航開始、途中東の大陸の港で補給、
その後ルーム国に帰り各部隊から派遣された艦はそれぞれの部隊に戻る、
大和は帰還後そのままドックに入り総点検を受けていた。
俺はルーム国にある自分の部屋・・事務所と言った方がいいのかな?
ここで天使族達が調べてくれた資料を読みながら今後の対策を考える、
腐葉土石を埋めた後の事を考えていたら・・サユミが部屋に入ってきた。
「コウさん挙式のことなんですが・・」
・・・
タケシがフェニックスの女王と婚約の流れになったので俺は観念した、
まあサユミは大好きだし彼女が望むのなら喜んで受け入れようと思う、
と考えていたんだが・・・
「私との挙式はしばらく延期してほしいのです・・」
・・・
あれ?
一体どうしたんだろう?
「コウさんは大好きなのですが・・少し考える時間が欲しいのです」
それは構わない。
ただ理由が聞きたいので尋ねてみると・・どうやらタケシが気になるようだ、
今迄は単なる幼馴染だと思い込んでいたが・・彼が別の女性と結婚する・・
いきなり現れた女王に自分の幼馴染が奪われることに懸念が出てきたようだ。
なるほど。
「なぜかはわからないのですが・・気になってしょうがないのです」
それは当然だろう。
タケシが気になる女性とはいえ・・あの女王は相当わがままに見える、
そんな女性に自分の大事な幼馴染が奪われると考えたら落ち着かないだろう、
これは・・サユミがタケシを初めて男性と意識したからに違いない。
ならば・・
「君の気持ちはわかった、焦る必要はない、しっかり考えてくれ」
「はい!ありがとうございます!」
サユミは笑いながら事務所から出て行った。
1分後・・・
・・・
???
俺の目の前に突然タケシが現れた!
「コウさん・・相談があるのですが・・」
それは構わないが・・
転移魔法で突然出てくるのはやめてくれ!
俺の心境を無視して・・・タケシが深刻な顔をして話を進める。
「サユミのことなんですが・・」
「サユミがどうしたんだ?」
「なぜかはわからないのですが・・なぜかすごく気になって・・」
あれ?
そのセリフさっきも聞いたような気がするが・・
「今までは単なる幼馴染としか考えていなかったのですが・・」
「それは?女性として意識し始めたということか?」
「それはわかりません、でも気になって仕方がないのです」
・・・
おそらくタケシは女王と付き合って・・なんか違和感を感じたのだと思う、
自分が描いていた女性と実際付き合ってみたが・・理想と現実の大きな違い、
外見だけ理想の女王と・・心身とも心許せるサユミとの差が出たのだろう。
「どうしてでしょうか?こんな気持ちは今まで無かったのに・・」
「それは君達が超がつく鈍感で頑固だからだよ!」
俺がそう言うと・・タケシは崩れた。
「そ・・そうなんですか?」
「前にも言っただろう?君達は俺から見てもベストカップルに見える、
ただドラゴンの血が頑固だからお互いそれを受け入れるのを拒んだ、
俺には君達を見ていて・・そうにしか思えない」
・・・
「それで?今後はどうしたいんだ?」
「それがわからないので・・相談に来たんです・・」
「ならサユミとお見合いするか?」
「えっ?どういうことですか?」
「ショウの事は知ってるだろう?」
「えっ?ええ・・アズミさんと結婚するんですよね?」
「ああ、アズミはショウの事を事前に知ったうえでお見合いした、
まあ彼女はショウの短所を理解して自分が補えると思ったんだろう、
君達もそんな感じでお見合いしたらどうだ?自分の短所を補うために・・」
「俺の短所・・思いつきませんが・・」
自信過剰もいい加減にしろ!
「確かに君達は優秀で非の打ちどころ・・一つだけあるかな?」
「それは何ですか?」
「お互いに対しての素直さがないことかな?」
「あっ・・それは・・はい・・確かに・・」
「一度その気持ちを話し合ったらどうだ?」
「できるでしょうか?正直すごく不安なんですが・・」
「それはサユミも同じだと思うぞ、今までが近すぎたから猶更な、
今はものすごく照れ臭いから本音と異なる言葉が出るかもしれない、
その時はタケシ!お前が本気だと語るんだ」
「えっ?俺が・・ですか?」
「当り前だろう、本来お前がサユミを早く受け入れたら済んだことだ、
こういう時は男が引っ張るんだよ!俺について来いとな」
「ですが・・俺女王と付き合ってるので・・」
「女王にその辺は言ってるのか?」
「いえ・・コウさんだけです」
「なら・・その辺は俺に任せろ、女王はお前を利用しているだけだ、
まあ・・ある程度は本気だとは思うがな、だが自分の保身を優先している、
彼女には確固たる地位を与えればお前に執着はしないだろう」
「わかりました、お願いします」
「わかった」
俺はこの後エリーナ達の所に出向きサユミとタケシの事を説明する、
この2人をお見合いさせたいから準備を任せたいと伝え妻たちは頷く、
妻たちは急ぎ・・見合いの準備をした。
翌日・・
ルーム国の来賓室が用意された。
その中では・・
顔を真っ赤にしたサユミとタケシが向かい合っていた。