驚異の木人形の数と職人たち
海を見たら磯風と浜風が出港し千歳と千代田の元に向かってる、
あの2隻にはガルーダたちが欲しがっていた天然石を載せ運んでいる、
発掘権のあるルーム王国への対価は先般の食事で相殺した。
今俺とデーヴィドは今ルーム王国の城の傍で修繕工事を見守っている、
この城は丘の上にあり見晴らしがとてもいい。
それにしても・・木人形たちは何体いるんだろう?
まるで砂糖に群がる蟻のように無数の木人形たちが城を直してる。
「お待たせ!さあ行きましょうか!」
祖母木人形とエリーナとクリスティーナが俺たちに声をかける、
俺たち城と反対方向にある平地に向かって歩き出した、
先々に木人形がいて道路の補修や家の修繕等を手伝っていた。
「お祖母さん、木人形は何体いるんだい?」
デーヴィドがさりげなく問いかける。
「10万以上いるのは確実だけど・・私も正確な数は知らないわ」
俺たちはとてつもなく驚いた!
「10・・10万以上~?」
とんでもない戦力じゃないか・・
「ただの木人形じゃないわよ、それぞれが各分野のエキスパート、
戦死者に加え戦争から帰還して最近まで現役だった技術者もいるわ、
分野は建築・設計・医療・薬品・軍事・コンピュータ―など様々よ」
「それはすごいな」
ここでクリスティーナが祖母木人形に尋ねる。
「祖母様、芸術関連の方はいらっしゃいますか?例えば音楽家とか?」
「いると思うわよ、私と一緒に召喚された昔の友人がその経営者だったの、
多分弟子も何人かいるんじゃないかしら?紹介しましょうか?」
「はい!ぜひお願いします!」
「ちなみに・・どの分野に興味があるの?」
「召喚される前はピアノを習ってました、エレクトーンも少し、
買ってもらった3日後にこの世界に来たので・・」
「それは災難だったわね、でもエレクトーンね・・電気が要るわ、
まあ心配ないか~目途はついてるから安心しなさい」
「えっ?電気あるのですか?」
「あら?あなたが乗っていた大和の照明に気づいてないの?、
あれも電気で点いてたし機銃の制御も電気で動いてるのよ?」
ものすごい盲点だったな、クリスティーナは顔真っ赤だ。
「ちょっと待って!」
祖母木人形は立ち止まり広範囲にテレパシーを送ってるようだ、
待ったのは2分ぐらいだろうか?何やら返事が来たみたいだ。
「ティーナちゃん喜びなさい、エレクトーン作りの職人が複数いたわ、
他にもピアノやバイオリンとか作れるそうよ、どうする?」
クリスティーナをティーナちゃんか・・言い易いからそれもいいかな?
「ぜひ!!作れるのであれば全部お願いします」
即答だな。
「さて、行きましょうか!」
祖母木人形の先頭で俺たちはある場所へと歩いていく、15分位か?
祖母たち女性陣のお喋りであっという間に時が流れた気がする。
「ここよ」
俺たちは本日2度目の大きな驚きだった!
そこには・・・
すでに実っている無数の野菜や果物の光景だった!
玉ねぎ・ジャガイモ・みかん・イチゴ・メロンにスイカ、大麦、小麦、
とうもろこしにピーマンになすび・・他にも見慣れない薬草等多数ある。
「嘘?ここは平地で草しか生えてなかったはずよ?」
「私たちの植物魔法よ、植物の成長を促す魔法で育てたのよ、
その分土が痩せるからたまにしか使えないけどね」
「種はどうしたの?これらの植物はこの世界にはないはずよ?」
エリーナが興奮気味に問いかける。
「育てたというか・・作ったと言った方が正解かな?
この世界にある植物の遺伝子を操作して食べられる実を作ったのよ」
俺たちはあっけにとられた。
そんなことまでできるのか・・・
でも疑問もある。
「お祖母さん!肉類はどうしたんだ?」
「あれは正確に言うと「にくもどき」かな?(笑)、
大豆で豆腐を作るでしょ?あんな感じで大豆とかを遺伝子操作したのよ、
もちろん人体に害は無いようにしてるから安心してね」
「卵とかはどうしたのですか?味は卵そのものでしたが?」
「あれも似たようなものよ、まあ他の卵の遺伝子を応用したけどね」
「他の卵?」
「その辺に飛んでいる鳥の卵」
・・・
「魚に関してはその辺で泳いでいるのを海草を操作して捕まえたのよ、
もちろん馴染みのある味に近い魚を厳選したんだけどね」
「どう?これだけあれば当分食糧には困らないでしょ?」
もう言葉が出ない。
「どうだ!まいったか!」
祖母木人形が勝ち誇ったように雄叫びを挙げる!
「恐れ入りました」
俺たちは感服しひたすらに頭を下げた。