揺れ動くショウの心とアズミらしい本気の説得
俺は戦艦大和の艦長室でショウを特訓中、船は東の大陸へと急ぐ、
ショウは北の大陸で籠るように住んでいたので女性付き合いはない、
というか・・あそこには祖母と妹しかいなかったので当然なんだが・・
俺達との交流が出来てから他の女性と話す機会が出来ても長続きせず・・
ジェニー達がフォローするが身内愛が激しいので距離を取ることも多い、
愛想はいいのだが・・いつの間にかいなくなるので掴み処が無い状態だった。
サユミとレイミは・・
ショウを兄としては好きだが異性としては論外と見ている、まあ当然だろう、
彼女達は親同様身内婚を毛嫌いしているのでショウが来ると嫌がっている、
ショウが求めれば求めるほど背筋が寒くなり暴力行為に及ぶこともある。
タケシに対しても同様で・・・
タケシは一応他人なんだが・・
生まれた時からずっと一緒だったのでショウと同じ姉弟だと思い込んでる、
タケシも同じ目線のようで彼女達を異性とは見ておらず兄妹だと思い込む、
この辺はドラゴンの血を引いてる関係なのか妙に頑固で融通がほとんどない。
それもあってか・・
彼女達は野生の本能・・
好きな人の・・強い者の子を産みたいという気持ちは特に強かった。
北の大陸で絶望的な生活を送っていた時・・俺が現れサユミは自分の伴侶、
それはこの人だと直感し・・俺への想いを日に日に膨らませていった、
俺がエリーナ達との結婚後もその気持ちは揺らがずチャンスを待っていた。
レイミは当初そこまでの気持ちはなかったが・・あるきっかけがあった、
それは自分がホーリキマイラ猫を狙っていた時に俺が宥めたことだった、
野生では弱肉強食が当たり前だが・・俺はそれをせずにその場を収めた。
なにかが犠牲になるのではなく・・
共に生きようとする俺の考えに惹かれたそうだ。
俺としては当然の行為だと思っていたが・・
それがレイミの心を掴んでいたとは思わなかった。
だがショウはそんな妹たちの気持ちが理解できなかった、
そのため接すれば接するほど逆効果となり僻み籠る生活が続いた、
そんな矢先アズミからの連絡が来て・・これを転機にしようと俺は考えた。
アズミは意地が悪い所はあるが、人を大切にする優しさが特に強い女性だ、
事務員たちと頻繁に喧嘩はするが・・誰も彼女の元を去ろうとはしない、
本気で接してくれてるからと皆はわかっているからすぐに仲直りしている。
彼女ならショウの心を動かせるかもしれない・・
賭けに近いが・・ショウは彼女に任せた方がいいと俺は考えた。
この考えはショウに包み隠さず説明、彼とアズミとは挨拶程度の関係、
ショウはかなり違和感を感じていたが・・俺はアズミの性格も説明した、
どうしても嫌なら断っていいから・・見合いだけはしてみろと説得した。
このままではまずいとショウも考えていたようで・・
なんとか首を縦に振り・・お見合いを決意してくれた。
その後は俺とショウの特訓が続きジェニー達がサポートしてくれた、
男性と女性の価値観の違いや恋愛の考え方など広範囲に説明していった、
ショウもなぜ妹たちが自分を拒否するのかわかってきたようだ。
例外はあるにせよ・・
成長したら自立し家庭を持つことで自分の居場所を確保する考えも説明、
その時に重要なのは・・自分が大黒柱となり一家を支える覚悟がいる事、
大概の女性は権力を求めて男性と結ばれたい気持ちが強いことも説明した。
ここでショウからの質問!
「だからコウさんの所に女性達が集まるの?」
「それもある、俺の本意ではないが立場上そうなる場合もあるからな・・
特に女性は子を産み育てる使命感がある、そこを真剣に考えるから男性を選ぶ」
「僕なんかは・・なにもないから?」
「そうではない、君の場合は妹たちへの愛が強すぎるだけだ、だが・・
考えてほしい、例えば交流のない女性が君に好意を抱いたとしていてもな、
会ってもくれない君が・・その女性に交際を申し込むと思うか?」
「それは・・ないよね・・」
「そういうことだ、そのためには立ち止まり後ろを振り向く必要がある、
俺が君に望むのは・・機会があれば立ち止まりどんどん女性と話すことなんだ、
精神的に疲れるとは思うが・・進展が期待できない身内より先が見える」
「妹たちを諦めろと言うの?」
「今の状況でサユミとレイミが君に振り向くと思うのか?」
「・・・」
「俺としては君達全員に幸せになってほしい、だが無理な事もある、
自分が望んでも相手が受け入れるとは限らない、そこが難しいところだ、
そうなると・・新たな出会いを模索するのは当然だろう?」
「だからアズミさんとのお見合いを?」
「ああ・・あの後アズミにもショウ、君の詳細を説明している、そして尋ねた、
これでもショウとのお見合いを受けてくれるか?とな」
「返事はどうだったの?」
「今俺達は東の大陸に向かっている、それが答えだ!」
・・・
その後もショウはお見合いの特訓、妹以外の異性と話す練習を繰り返した、
元々頭もよくルックスもいいショウは精神面だけ鍛えれば相当モテるはず、
裏でジェニー達にも尋ねたが・・恋人にしたい男性の上位にいるそうだ。
2日後・・・
大和は東の大陸の港に入港、俺とショウは急ぎ拠点城に急ぐ、
既にアズミは部屋で待っていて・・着物を着て椅子に座っていた。
「それじゃコウあなたは退席して!私はショウ君とだけお話がしたいの!」
「わかった、別の部屋で待機している」
俺は退席して・・
部屋にはショウとアズミだけが残り何やら話をしている、内容は不明だ、
おそらく身内話から始まって趣味や価値観等をお互い尋ねているはず・・
そう俺は思っていたが・・どうやら違うらしい。
2時間後・・・
部屋を出てきた2人を見て・・
俺は驚いた!
意外にもショウとアズミは手を繋いでいた、一体どうしたんだろう?
「それじゃコウありがとね~~!」
「コウさん!僕・・アズミさんと付き合います!」
・・・
どんぐり眼の俺を尻目に2人は満面の笑顔で手を繋ぎ去っていく、
ショウはそのままアズミを北東の大陸まで送り拠点城まで戻ってきた、
俺はショウに部屋での出来事を尋ねた、その内容はこうだった。
「ねえ聞いたわよ、あなた妹さん2人に惚れているんでしょ?」
「は・・はいそうです!」
「妹さんを・・まだ忘れられないの?」
「そうですね・・お恥ずかしい話ですが・・」
「全然恥ずかしくないわよ、あなたの好きな人がたまたま妹だった!
まあ私のいた世界もそういうの多かったのよ、特に兄と妹の関係はね、
ネタにもなりやすいから大概怪しい系統の禁断の愛で使われているわ」
「そうなんですか?」
「そうよ、でもあなたの場合妹さんは相手にしてくれないんでしょ?」
「はい・・」
「なら今度はあなたが妹に嫉妬させたら?」
「えっ?どういうことですか?」
「簡単な話よ、私と仮に付き合えば妹たちの本音がわかるでしょ?
あなたへの想いが本当に無ければそのままだし振り向けばもうけもの、
そのときはあなたが妹を嫉妬させるように距離を置けばいいのよ」
「もし・・そのままだったらどうするのですか?」
「別にいいんじゃない?私と本気で付き合えばいいだけの話よ、
どの道身内婚は敬遠されやすいんだから深く絡んだら疲れるだけよ、
私はあなたがすごくタイプだからそのまま付き合いたいけどね」
「そんな・・駆け引きでもいいんですか?」
「恋色事は駆け引きだらけよ、主導権を握った方が勝ちというゲーム、
あなたが求めれば求めるほど妹さんは図に乗って拒否し続けるわ、
そんな相手に想いを寄せても玉砕されるだけ・・そうでしょ?」
「・・・はい・・」
「勘違いしてほしくないのは・・私アズミはあなたのことがマジで好き、
だからあなたが苦しむ姿は見たくないの、女々しい事はやめてほしいの、
妹さんだけが女性ではないわ、それを知ってほしいのよ」
・・・
「それに悔しくないの?妹さんだけしか女性と見れない自分を・・
世の中には女性は沢山いるわ!この世界は一夫多妻制OKなんでしょ?
あなたの傍にいい例がいるんだから見習いなさいよ!」
「えっ?それはコウさんとデーヴィドさんの事ですか?」
「そうよ、あの2人は大学受験落ちたからしぶしぶ軍隊に入隊したのよ、
あいつらは先祖の絡みが深かったからハーレムがあるのよ、運がいいだけ!
あなた強いドラゴンなんでしょ?ならそれを超えることを目指しなさいよ!」
「えっ?コウさん達を超える?」
「そうよ、あの劣等生たちが出来たんだからあなたにもできるはずよ、
妹しか見れない小さな男で終わらないで!似たようなの妻にすればいいのよ、
そうすればよりどりみどりよ!人生が楽しくなるわ!」
「そ・・そういう発想は考えもしなかったです・・」
「時には割り切りも必要なのよ、そうでないと自分が苦しむだけ・・
あなたには私のように背中押す存在が必要なのよ、それは感じるでしょ?
少しでもそう思うなら私と付き合いなさい!悪いようにはしないわ」
・・・
ショウはしばらく考えた後・・
「わかりました!ぜひ僕と付き合ってください!」
「オッケ~~~!」
と・・いうものらしい。
・・・
アズミらしい説得だな・・・
複雑な気持ちの俺を尻目に・・
ショウは満面の笑顔でアズミと電話していた。




