島民たちの拉致とイリュージョンフェアリーの守りたいもの
水平線の先から突如現れた巨大な艦船を見て島民は大パニックを起こす、
島民たちは慌てて自宅に戻り荷物をまとめ山岳地帯に逃げようとした、
だが・・
「そうはさせませんよ!」
戦闘機とその背中に乗る天使族達は先回り、山岳地帯に向かう道を爆破、
村から出る道を次々と爆破し村は孤立状態、逃げ道は完全に塞がれた。
「各艦主砲発射用意!」
グゥゥゥゥゥゥゥン・・・
各艦の主砲が島にある村に向けて発射体制、艦砲射撃の準備は完了した、
だが主砲弾は装甲弾ではなく幻覚魔法を詰め込んだ幻覚魔法弾を使う、
これだと被弾した箇所は大掛かりに爆破したように見えるが・・
幻覚のため・・
しばらくしたら元通り!
もちろん破壊威力は全然ない、これは映画用にと造った偽造弾だ、
その都度セットを壊したら勿体ないからとワイバーンが教えてくれた魔法、
これなら爆破シーンも撮れてしばらくしたら元通りになる便利な魔法だ。
ただ生き物にはかなりの悪影響があるらしいので当てるなと言われた。
なぜこの幻覚魔法弾を使うことになったか・・
先般ブラックの領地を攻めた際民家を壊し全戸建て直した経緯がある、
この異世界の住民は穏やかだが・・相当したたかなので被害を与えると・・
次から次へと便乗してくるので物資などの不足は俺達が補うことも多い。
特に俺は・・なぜか工場建設の費用まで賄い10年ローンを組まされる羽目に、
管理者のリサは夫の俺が払うのは当然と断言、皆もその流れで目を光らす、
まあ当然かもしれない、俺達の作る物は元々この異世界には無い物ばかりだ。
そのため・・
その希少価値を熟知した今では・・
各種族は・・
俺達から貰える物は何でも貰おうとする魂胆が見え見えなのだ。
だが・・
各種族は魔力と労働、戦闘などで対価は払っているからまだ許せるが・・
今回に関してはイリュージョンフェアリーとフェニックスに備えた。
特にイリュージョンフェアリーは天使族も用心するほど性格が悪い、
それに結界の管理を任せるフェニックスも相当意地が悪いと各種族は見ている、
それらに同情の余地を与えるとろくなことが無いと進言されたからだ。
・・・
進言に素直に従うことにした。
戦艦隊は主砲を村には向けるが・・まだ発射はしない、それには理由がある、
幻覚魔法弾は生き物には悪影響があるので先に島民を攫うことにしたからだ、
一部の幹部を残して島民を眠らせ拉致して安全地帯に運んでから攻撃する。
そうして・・
フェニックスの幹部達がどういう行動をするのかで今後を決めることにした。
天使族達とその配下が次々と離陸、村に攻め込み麻酔弾で民衆を眠らせる、
それらを転移魔法で安全地帯に送り俺達が保護していた。
当然そのことを知らないフェニックス達は・・
さらにパニックになっていた!
島民の親達が次々と襲われ姿を消す、子供達が急ぎ逃げるが天使族達が先回り、
逃げ道を塞がれた子供達は・・恐怖のあまりその場で膝をつく・・
「あっ・・ああ・・」
「やめ・・て・・殺さないで・・」
「ごめんなさいね・・しばらく寝ていてちょうだい」
天使族達は子供には麻酔弾を使わず睡眠魔法を放ち子供達を眠らせた、
それらをハーピーやコカトリス達が丁重に扱い安全地帯に連れていくが・・
それを見た白いドラゴンが人間姿で泣きながら叫ぶ!
「やめてください!子供達には手を出さないで~~~!」
彼女には子供が攫われてるようにしか見えないだろう、それは当然だが・・
だが声だけでその場から動かない、それを見た天使族が意地悪な微笑み・・
「なに甘いこと言ってるの?叫ぶだけじゃなく取り返しにきたら?、
こうなったのも元々あなた達が約束守らないのが原因でしょ?」
・・・
白いドラゴンは睨んでいるが・・足が震えてその場から動けないようだ、
おそらく彼女の戦闘力は中級程度のようで上級の天使族の睨みで怯んでいる、
戦っても勝てないと本能で察知し恐怖で動けないのだろう・・
「取り返しにこないなら連れて行くわよ!」
天使族が優しく子供を抱きかかえ飛ぼうとするが・・・
!
突如茂みの中から棒を持ったイリュージョンフェアリーが襲ってきた!
「子供たちを返せ~~~~~!!!!!」
泣きながら棒で攻撃してきたが・・上級天使族の前にあっさり棒を掴まれる、
イリュージョンフェアリーはそのまま投げ飛ばされ茂みの中に突っ込んだが・・
また立ち上がって・・今度は素手で子供達を取り返そうと躍起になる。
「うっとおしいわね!」
今度は蹴り飛ばされ茂みに飛び込み、それでも起き上がり子供を取り返そうとする、
いつの間にか10人のイリュージョンフェアリーに囲まれた天使族だが・・
初級レベル程度の相手に飛びかかられても余裕なので全員蹴り入れて吹っ飛ばす。
「ウワァァァァァァァァァァァ・・・・!!!」
何度も蹴られてもふっとばされてもイリュージョンフェアリーは起き上がる、
イリュージョンフェアリーは魔法能力は高いが攻撃能力はほとんどない、
勝てない時はなりふり構わず自分達優先の卑劣な種族と天使族から聞いたが・・
そのはずなのに・・
ボロボロになっても子供達を取り返そうと必死に襲い掛かってくる。
「子供をかえせ~~!」
「かえして~~!」
狂ったように飛びかかるが・・その都度ふっとばされてもうフラフラだ、
それでも動きをやめようとはしない・・
これを見た天使族達は・・理解した。
イリュージョンフェアリーが問答無用でヒドラに俺達に攻撃させたのは・・
未知の敵からなんとしても子供達を守ろうとしたのだと・・
・・・
天使族達は・・イリュージョンフェアリーを見直した。
だがイリュージョンフェアリーはもう限界だ、それでも子供達を取り返そうとする、
さすがにこれ以上は危険と判断し麻酔銃でイリュージョンフェアリーを眠らせ・・
なんとイリュージョンフェアリーは自分の腕を噛んで踏ん張っていた。
「こ・・こどもを返せ~~」
あまりの執念に驚く天使族だが・・
「あなた達の執念は認めるわ、でももうお休みなさい・・」
天使族は麻酔弾を連射、さすがに耐え切れずイリュージョンフェアリーは眠る、
それを一部始終見ていた白いドラゴンは・・だだその場で震えていた、
そこにカレンが飛んできた、カレンは部下から詳細を聞いた後・・
白いドラゴンの傍に近づきこう言い放つ。
「あなたは一体何のためにいるの?イリュージョンフェアリーより最低よ、
まあ彼女達は必死で子供を守ろうとしたからまだ許せるけどね、でもあなた?
見てるだけで子供を助けようともしないの?それが上に立つ者の行動なの?
白いドラゴンはカレンの一睨みでさらに委縮している・・
・・・
それは逆効果だと思うのだが?
だがそれが白いドラゴンの心に響いたようだ。
泣きながらカレンに訴える・・
「わ・・私はどうすればいいのですか?」
「さあね、出来ることを考えてみたら?あなたフェニックスの子でしょ?
だったら親と相談してみたら?それが今あなたに出来る事だと思うけどね」
カレンはそう言いながら・・白ドラゴンに何かメモのようなものを渡した。
カレンは部下に指示を出す、部下たちはイリュージョンフェアリーに転送魔法、
イリュージョンフェアリーは全員その場から姿を消し安全地帯に転送されてきた、
すぐさま治療、相当弱っていたので急ぎ点滴などで体力を回復させた。
「じゃあね、ここは危険だから親元にでも行きなさい」
カレン達も子供を抱きかかえ空高く舞いその場を離れていく、
残された白いドラゴンはその場に立ち尽くす・・
カレンは各艦隊に状況を報告する。
「お待たせしました、一部を除き島民は保護しました」
「了解!直ちに攻撃を開始する!」
「全艦隊幻覚魔法弾発射せよ!」
ドカカカカカカカカ・・
ズガガガガガガガ・・
無数の幻覚魔法弾が島に飛んでいき村を次々と破壊していくが・・
・・・
白いドラゴンはこれが全部幻覚だと瞬時に見切った。
そうして・・
メモを見ながらドラゴン姿に戻り・・
急ぎフェニックスの親元に向かって飛んでいった。