戦艦の再結集とスノードラゴン達の悲惨な結末
白いドラゴンは人間姿となり・・ひたすら謝るのを繰り返している、
見た感じサユミよりも少し年下のようで気品ある女性に見えるが・・
ただ彼女は下っ端らしく決定権はなにも無いようだ。
「謝るだけでは済まないわよ!代表者を呼んでちょうだい!」
「それは・・ごめんなさい!ごめんなさい!」
女性はひたすら頭を下げ謝罪を繰り返しているが・・
凶暴な魔物に俺達を襲わせたフェニックス達への怒りは当然消えない、
謝るだけの女性と話しても進展しないと考えた天使族は・・
「あなたの誠意はわかったわ、でもそれとこれとは別問題よ、
あなた達の代表の意思を直に聞かない限り私達はあなた達を許さない、
後日戦力を整えて総攻撃するから・・そう伝えなさい!」
「そ・・そんな・・」
彼女には気の毒だが・・俺達は今回に関しては天使族に同意する、
悪戯を遙かに超えた・・殺意を向けた敵に対しては容赦できない。
天使族達は島から離れ俺達のもとに帰ってくる、女性は膝をつき涙、
後ろ髪を引かれる思いだったが・・それを振り切りチューリップの町に戻る。
そうして・・
緊急連絡を各地に送る、白いドラゴンの対応も含めた内容だ、そして・・
現時点敵になる可能性が大なので総攻撃して撃滅する必要ありと伝達、
各種族も同意したので結界を破るため戦艦を全隻呼び寄せることにした。
ルーム国にいるエリーナやレティシア達もこの考えに同意、天使族も動く、
結婚式の準備を中断して武蔵に乗り込み白の大陸に急ぎ戻ってきた。
5日後・・
戦艦武蔵をはじめ全戦艦がチューリップの港の沖合に集合した、
上空護衛の為信濃が同行、輸送駆逐艦5隻も途中から同行していた、
輸送駆逐艦は既にいる各艦に食料や弾薬などを補給していた。
補給を終えた大和・武蔵・信濃・紀伊・モンタナ・アリゾナ・オクラホマ、
長門・陸奥・金剛・比叡・榛名・霧島・伊勢・日向・扶桑・山城、ビスマルク、
ティルピッツ・ホーネット・レキシントン・ヨークタウン。
そして海底からの攻撃に備え重巡クインシ―と駆逐艦ルースも同行する、
戦艦18隻と航空母艦4隻、重巡1と駆逐艦1の総数24隻が揃った、
白黒天使族はじめ各種族の精鋭も各艦に乗り込み戦闘準備をしている。
「全艦出撃!フェニックスの結界を叩き壊すぞ!」
「了解しました!」
各艦はゆっくり動き始め沖合いに移動、フェニックスの島に向かう、
その途中・・結界近くで隠れていたイリュージョンフェアリー達、
俺達の艦隊を見て・・驚きと震えが止まらなかった。
「な・・なにあれ?あんなのが他にも沢山いたの?」
「あれだと・・結界もやばいよ~~」
「こ・・こわいよ~~どうするのよ?」
「どうするも・・あたしたちがあいつら怒らせたんだもん・・」
取り乱すイリュージョンフェアリー達、それを見た白いドラゴンが呟く。
「素直に謝るしかないですね、たとえ殺されても謝るしかありません」
・・・
イリュージョンフェアリー達もそれしかないと考えてはいたが・・
先般の戦いを見て・・とても勝てない相手がさらに増強して攻めてきた、
あまりの迫力に怯えるイリュージョンフェアリー達、震えが止まらない、
白いドラゴンは決意を固め・・イリュージョンフェアリー達を抱えて飛んだ。
各艦はフェニックスの結界に向かって巡航、結界増幅弾の準備をしている、
天使族達もライフルランチャーに増幅弾を装填、飛び立ち上空から攻撃準備、
結界への射程距離までもうすぐだ、各艦は主砲を結界に向ける・・
「お願いです!攻撃をやめてください!」
白いドラゴンとイリュージョンフェアリー達が結界の前に現れた。
「前の事は謝るから攻撃をやめて~~」
「ごめんなさい~~ごめんなさい~~」
「お願い・・結界を壊さないで~~」
「あれが壊されたら私達終わりなのよ~~」
・・・
自らの身を盾にして結界を守る白いドラゴンとイリュージョンフェアリー達、
どうやら結界を壊されたら相当まずいらしく泣きながら自らを盾にしている、
さすがにこれを見たら・・ベアトリスがマイクを取りドラゴン達に語りかける。
「理由を話したら攻撃は考えるわ!言わないなら攻撃するわよ!」
・・・
「わかりました。理由を話します、だから攻撃はやめてください」
「わかったわ、こちらに降りていらっしゃい!」
「全艦攻撃一時中止!戦闘態勢のまま待機せよ!」
各艦は指示に従い戦闘態勢のまま待機、戦闘員は急ぎ交代で食事を取る、
戦闘機も一旦母艦に帰り整備を受け再出撃の準備を怠らない、そして・・
上空にいた天使族達も一旦艦に降りて水分補給と武器の点検をしていた。
白いドラゴンとイリュージョンフェアリー達は武蔵に誘導し着地させる、
天使族が銃を構え会議室に連れて行く、イリュージョンフェアリー達は・・
自分達の深く考えない悪戯気分が大参事を招いた事を深く後悔していた。
「こちらにどうぞ!」
人の姿の白いドラゴンとイリュージョンフェアリー達を席に座らせる、
そこには俺とデーヴィド、ベアトリスとシャーロットが脇に座る、
アリエノール達は用心のため各艦に分散して奇襲に備えた。
一応お茶とお菓子は出しているが・・震えているので手を付けていない、
恐怖と緊張の為言葉もまともに出ないようだ、さてどうするか・・
端から見ると俺達が彼女達を苛めているようにしか見えないだろう・・
だが礼を仇で返すような対応をした彼女達を用心するのは当然のこと、
苛める気はないが・・返答次第では交戦もあり得るのでこちらも備える、
だが今の状態では会話にならないのでしばらく待つことにした。
だが・・
10分程待っても変化がないので・・
俺達は一旦席を外し・・
落ち着くまで会議室をカメラで監視することにした。
20分後・・
少し落ち着いたのか白いドラゴンがドアをノックして俺達を呼んでいる、
俺達は会議室に戻って席に座って・・こちらから尋ねることにした。
「聞きたいことがある」
「は・・はい・・どうぞ・・」
「結界を壊すとまずいようだが・・その理由を教えてほしい」
「は・・はい・・結界で外敵からの攻撃を遮断しているからです」
「そういうことは・・君達は戦闘向きでは無いと言う事か?」
「そうで・・す、結界の中にはフェニックスとスノードラゴンが少数、
それとイリュージョンフェアリー達、あと配下が複数種類いますが・・
戦闘が出来るのは・・前あなた達が倒したヒドラだけです」
「スノードラゴンがいるのか?」
「はい、でもほとんどは精神を病んでおり日常生活がやっとの状態です、
過去に同胞を見捨てたことが相当ショックだったようで・・・」
「君は・・スノードラゴンではないのか?」
「私はスノードラゴンの母とフェニックスの父の間に生まれた子供です、
父は重傷を負った母を助けて介護して・・そのまま結ばれたと聞いています」
「ということは・・フェニックスも人間姿になれるのか?」
「はい、というか・・人間姿になれないと困ることが数多いので・・」
「例えば?」
「結界の出入りですね、人間が数人通れる程度の穴しかないので・・」
「君達はそこから出入りしているのか?」
「そうです、でもヒドラだけは結界の外で管理していました」
その後も俺達は質問を繰り返す、わかったのは結界内はほとんど非戦闘員、
フェニックスは少数でほとんどがスノードラゴンと結ばれ子を設けている。
「スノードラゴンとはどうやって知り合ったの?」
「スノードラゴンがこちらに逃げてきたと聞いています、それも重傷で・・
北の大陸からこちらに向かう途中に魔物と遭遇し交戦したと聞いています、
ですがスノードラゴンは飢えの為力が出せず大苦戦、急ぎ逃げましたが・・」
「その後はどうなったの?」
「大半は魔物にやられました、島にたどり着いたのは一部の女性だけです、
その女性達も瀕死の状態で・・島民が治療し何とか生き延びました」
この言葉を別室で聞いていたタケシとサユミが顔色変えて会議室に入る、
そして自分の親の名前を連呼!フェニックスの島にいるか必死に訴える。
だが・・
「残念ながら・・その名のスノードラゴンはいません・・」
「嘘だ!そんなはずはない!」
「そうよ!嘘だと言って!」
だが・・白いドラゴンは目を閉じて首を横に振る。
タケシとサユミは・・
その場に崩れ・・
「ウァァァァァァァァァァ・・・」
狂ったように泣き叫んだ。