メイドさんたちへのご馳走とホリーが熱望する輸送駆逐艦
俺は列車に乗りホリーの待つマスカットの町に向かっている、
途中食事が出て・・俺専用の献立をライアン達が用意してくれた、
俺は喜びそれらを食べて・・絞めのデザートが2種類出てきた。
1つは様々な果物を適度に冷やした高級ゼリー、俺の大好物だ、
もう一つはモンブランにアイスを混ぜたパフェ仕立てが出てきた、
それらが俺の目の前に・・ゆっくりとスプーンを取りまずは一口・・
「うっ・・ううん・・」
・・・
俺の監視で隣に座るメイドさんが横を向き目を閉じ静かに口を開ける・・
俺は一旦パフェにスプーンを戻す・・メイドさんが目を開け前を見る、
再びスプーンを取ると・・またメイドさんが横向き目を閉じ口を開ける。
・・・
この場合どうしたらいいんだろうか?
先にデザートをメイドさんの口に入れたら・・間接キッスになるよな?
それしたら・・またなんだかんだ言われそうだし・・
・・・
10秒後・・・
「美味しいわ~~!」
「そうね~絶品だわこの味!」
「爽やかでほんのりの甘味・・最高ね!」
・・・
俺はデザートをメイドさんたちに丸投げして静かに見守っている、
デザートは惜しいが・・後でいちゃもん言われる方がよっぽど怖い、
それならデザートは我慢してこの場を凌いだ方がいい!と割り切った。
それを見た料理人ライアン達は・・
気の毒だからと追加で同じデザートを用意してくれた。
ありがとう!
改めて俺はデザートを食べる・・
・・・
まるで燕の雛たちが口を開けてるみたいにメイドさんが口を開けている、
それも俺の座る椅子を囲んで・・ひたすら目を閉じデザートを待っている・・
待っている・・
・・・
俺はライアン達に頼み材料がある分だけデザートの追加を頼んだ、
それをメイドさんたちに配り・・喜んで自分の席に持っていき食べている、
皆が喜んで食べてるが・・少し足りなかったので俺の分はなかった。
その後料理人ライアンが・・請求書を持ってきた。
・・・
かなりの額だな・・
「一食ならサービスしたのですけど・・仕入れがあるのでお願いします」
・・・
俺の今月の支給額から差し引くそうだ。
・・・
なんか俺動くたびに支給額どんどん引かれてないか?
この調子だと支給日にはすっからかんになりそうだ・・
・・・
メイドさんたちが満足そうな顔してるので・・まあいいか・・
深く考えるのはやめることにした。
「ご乗車ありがとうございます、当列車は3分後に・・・
ま・・ま・・マスカットステーシュンに到着いたします」
こちらのブラックのお姉さんも・・まだ慣れてないようだ。
おねえさん!マスカットステーションですからね・・
「マスカットステーション・マスカットステーションです!」
俺のツッコミを読んだのか・・妙に力を入れてアナウンスをしてきた。
俺はメイドさん達に囲まれ列車を降りる・・
デザートご馳走したんだからご満悦のはず・・
「コウさん!今度逃げたり隠し事したら承知しませんよ!!!!!!」
デザートの効果は無かったようだ。
列車を降りてしばらく歩くと管理者のホリーが手を振っている、
俺達を待っていたようで・・わくわくしながらこっちへ走ってくる。
「ようこそマスカットの町へ!みなさまを歓迎いたします!」
満面の笑顔のホリーが・・すごく可愛かった。
・・・
次の瞬間俺はメイドさんにお尻をつねられた。
「早速ですが見てもらいたい所があります、ご同行願います」
俺達はホリーについていき外に出る、すでに垂直戦闘機とヘリが来ている、
ヘリは大和から発艦していて・・ホリーの部下が満面の笑顔をしている、
その横でパイロットたちが・・とても複雑な顔をしていた。
・・・
このヘリも・・大和には戻れそうにないな・・
俺はホリーとヘリに乗り離陸、10分程飛んでいたら海岸線が見えてきた、
着陸したところは広大な空き地で周りは海、ここは白の大陸の端っこらしい、
少し肌寒い風が吹き・・ホリーが俺に向かって話しかける。
「ここに軍事拠点を設けようと思います、兵器の提供をお願いしたいのですが」
「戦闘機の他に何が欲しいんだ?」
「出来れば軍艦が欲しいですね、ここは海賊が多いですから・・」
「海賊とは頻繁に交戦してるのか?」
「いえ・・大半の海賊は私達の貿易相手です、敵対はほとんどありません、
というか・・敵対する海賊とは・・すでに話し合いが済んでますので・・」
可愛い笑顔だが・・
眼だけは凶暴な雰囲気を隠せてなかった。
・・・
深く聞くのはやめることにしよう。
現在ルーム王国では駆逐艦ルースをベースにした輸送駆逐艦を複数造船、
これは東の大陸からの要望で従来の駆逐艦より倉庫スペースを広げている、
そのため攻撃力は落ちるが輸送能力は3倍に増している。
東の大陸では海の守りに加え各地の貿易の為に新たな艦を欲しがっていた、
ただ戦艦のような大型ではなく駆逐艦クラスが欲しいとの要望が多かった、
これは港の小さい島に住む種族との貿易の為に必要だと要望されたからだ。
そのため輸送力を優先とした輸送駆逐艦を急きょ建造することにした。
その分各種族・・特に上級クラスが護衛で乗り込むことで攻撃力を補う、
それらが乗り込むことで十分な戦闘力が得られると判断し量産を決めた、
20隻ほど造船完了、うち10隻はすでに東の大陸に配属が決定している。
他は北東の大陸とメロンの町を繋ぐ輸送船として配属を検討していたが・・
そうなると帆船の船員たちの仕事が減るのでアズミ達は慎重になっている、
かといって輸送駆逐艦を彼らに任せるには戦闘力不足なので保留中・・
「その10隻こちらに配属していただけませんか?」
ホリーが目を輝かせながら懇願してくる。
「ここには上級クラスの部下は沢山います、十分戦えますのでお願いします、
それに10隻あればミアのいるチューリップの町とも海上連携が可能です、
ここでの貿易は船が重要なので・・宜しくお願いします」
ホリーが深々と頭を下げる、詳しく聞くとこの地域も島が多いそうだ、
海賊たちの拠点も多くそこでは野菜などの栽培も大掛かりにしている、
それらを運ぶため駆逐艦クラスの輸送船は特に欲しいと懇願された。
「海賊が野菜を栽培してるのか?」
「ここらでは普通ですよ!彼ら彼女達も生活がありますからね」
「俺のイメージと全然違うな・・」
「何がですか?」
「俺の住んでた世界だとな・・海賊は手当たり次第船を襲うのだが・・」
アハハハハハハハハハハハ・・
ホリーにも大笑いされた。
「そんな無謀な海賊がいるんですか?それだと敵が強かったら全滅ですよ?
普通海賊は生活困難者をいじめる悪徳商人等を懲らしめる為に襲うだけ・・
根は真面目です、コウさんの世界の海賊は余程切羽詰まっているのですね」
・・・
言われてみればそうだな・・
「話は戻しますが・・輸送駆逐艦の配備宜しくお願いします」
「わかった、すぐにルーム国に連絡しよう、君はミアと話をしてくれ」
「わかりました」
俺はすぐにルーム国に連絡、未配備の輸送駆逐艦10隻を派遣させた、
ミアとホリーは相談の結果・・ミアには輸送駆逐艦3隻を配備した、
ホリーには7隻、ホリーの地域の方が島が多いのでこの配分となった。
5日ほどしたら輸送駆逐艦が到着、ついでに地対空ミサイルも持ってきた、
それらはミアとホリーの湾岸基地に設置され空の守りを固めた、その後・・
輸送駆逐艦は近辺の島との貿易で大活躍していた。
その間・・
「私のところにも特産品をお願いしますね」
「ここではどんなものが獲れるんだ?」
「海産物と・・あと野菜ですね、新鮮な野菜がたくさん獲れるんですよ、
他にも穀物類が多いので海賊たちの主食となっています」
ホリーの地域ではタピオカの材料は無かった、そのため青汁を提案した、
試作品を作ったが・・とても苦いので果汁を混ぜて再チャレンジ、
すると・・すごく美味しい青汁が出来上がった。
「これはいいですね!早速お店に出しますよ!」
喜んでもらえてなにより。
「他にもありませんか?」
「そうだな・・」
俺はこの付近にいる海賊や商人の種族を尋ねた、それらはほとんどが人間、
魔族等もいるが大半は人間らしい、それを聞いた俺は・・ある提案をする。
「なら・・ビールはどうだ?」
「ビール・・ですか?」
「穀物類が多いんだろう?それらからビールを造れば大量に生産できる!
他の地域でもビールはあるがここは濃いめのビールにして売れば儲かるぞ!」
「そうですね、挑戦してみます」
これは・・大当たりした!
海賊と言うからには血気盛んな男も多いはず、彼らが求めるのは女と酒だ、
最初は躊躇していたが・・一口飲むとクセになり次第に樽ごと買っていった、
俺の予想通り彼らはアルコールが濃いめのビールを愛用している。
「ほんと美味しいですね~癖になりますわ~~」
・・・
ホリー君とその部下の方々・・
君達が彼らより飲む量が多いのはおかしくないか?
売るより飲む方が多いのは問題だと思うが・・
「あはは~~~もう一杯!」
・・・
当分話にならなかった。