ギルドからの貿易相談と白の大陸への高速鉄道計画
会議の翌日はお休みとなり警備以外は皆休日を楽しんだ、
特に天使族とギルドのメンバーはルーム国の鉄道に夢中、
各駅に降りてはグルメを楽しみ満面の笑顔を見せている。
その晩・・
天使族の主要メンバーとギルドの6人、それとヤマダさん達、
重鎮だけの相談会を希望するので俺やエリーナ達が集まった、
祖父木人形の提案で戦艦モンタナの艦橋に皆が集合した。
まずギルドのリオが話し出す。
「お疲れの所お集まりいただき誠にありがとうございます、
ルーム国の素晴らしさを体感し是非とも貿易をお願いしたいのです、
つきましては・・・」
・・・
リオはなぜか天使族を見てお辞儀、そして発した言葉は・・
「ぜひともルーム国や西と東の大陸との「直貿易」をお願いします」
この言葉にアリエノール達が怒る!
「な・・何言ってるのよ!そんな勝手許さないわよ!」
アリエノール達が怒りギルド達が俺達との直貿易を希望している、
その理由は・・わかってはいるが一応リオに尋ねる、彼の返事は・・
「て・・天使族さんの仲介手数料が高すぎるので・・」
納得。
ちなみに仲介手数料を聞いたら・・取引額の3倍だそうだ。
・・・
さすがに取りすぎだと思うが・・アリエノール達の言い分も聞く。
「北東の大陸と白の大陸の間の海は海賊や凶暴な魔物が多いのよ!
それらから守るんだから妥当な金額よ!こっちは命がけなんだから!
さらに各地の6天王が直に動いてるのよ、むしろ安い位だわ!」
それも納得。
だが・・
このままでは水掛け論なので妥協点を考えることにしたが・・
アズミがなぜか自信満々に立ち上がりある提案をする!
「ギルドとしては正直手数料等経費は抑えたいのです、ですが・・
天使族様たちの言い分もわかるので妥協点を提案させてください」
これを聞いた天使族達は・・
「いいわよ!言ってみて!」
「ありがとうございます!」
アズミは・・なぜか俺達を見てウインク!
・・・
なにか企んでいるな・・
「提案としては・・まず貿易港を現在の6か所から1か所に集約します、
そして北東の大陸と白の大陸との間が一番近い港で貿易を集中させます、
他の地の物資に関しては・・新たな陸路で各地を結ぶのです」
つづけて・・
「白の大陸の陸路は6天王様達のおかげで安全が保たれています、
ここにルーム国にある「鉄道」を開通させれば大量輸送が可能です、
危険で天候に左右される海路より効率よく輸送が可能なのです」
ここでベアトリスがアズミに尋ねる。
「言いたいことは大体分かったわ、でもそれだと首都は不利よ、
北東の大陸から一番近いのがアヤカの所で首都は一番遠いわ、
今の話だとアヤカだけが潤って私達は大損じゃないの!」
さらにアリエノールが不満口。
「いくら鉄道が大量輸送出来ても陸路だと時間がかかりすぎるわ、
白の大陸は山が多いんだから迂回してたらむしろ遠回りになるわ、
それにアヤカの所まで輸送するなら船で運んだ方が早いわよ」
ここで豆知識!
6天王の領地は東の大陸から見てアヤカ・サマンヌ・アリーゼ・
アリエノール・ベアトリス・レティシアの順に並んでいる。
東の大陸と白の大陸、東の大陸から見て北東の大陸方面は巨大な山だらけ、
山の中には毒をもつ凶暴な魔物が多いが海沿いの地域には降りてこない、
自分よりもはるかに強いドラゴンや天使族がいるので怯えているからだ。
ドラゴンや天使族達も・・魔物達に関しては関わりたくないようだ、
毒をもった魔物と戦っても益が無いので自分達から攻撃することはない、
そのためお互い暗黙の了解のように領地には立ち入らないようにしている。
白の大陸内は・・・
海岸や川沿いは平地が多いが一歩離れると1000m級の山脈地帯、
ほとんどの川は平地だとほぼ直線だが山脈地帯に入るとSの字の流れ、
崖も多く水流も速いので移動にはかなりの時間を要していた。
この異世界では転移魔法があるが荷物だけを転移することは出来ない、
そのため大量輸送に関しては時間をかけて陸路か海路で運んでいた、
アヤカ達は個々に北東方面に街と港を造り経由地として貿易を行っている。
だが首都にある巨大な川だけは・・ほぼ直線で北東の海にも繋がっている、
ベアトリスはこの川を使い巨大船で北東のギルド達と貿易を行っていた、
距離は一番遠いが・・一番貿易規模が大きいのがベアトリスだった。
ちなみにレティシア達はほとんどギルドと貿易を行っていなかった、
首都の方が近いのでそちらの商人たちと取引をする方が効率的だからだ、
その商人たちが川を渡り北東の大陸でギルドと貿易を行っていた。
豆知識はここまで!
ここでアズミが・・ニャッと笑う。
「確かに地形的な距離で言うと首都は一番遠いです、でも彼らと・・
私がいた世界では「新幹線」という超高速鉄道が存在していました、
これを実現化すれば・・例えば首都からアヤカ様の港まで約12時間です」
この言葉に・・天使族達は驚いた!
「えっ?」
「12・・12時間?そんなに速いの?」
「う・・嘘でしょ?首都からアヤカの港まで船で3日かかるのよ?、
陸路だとそれ以上だわ、それが半日で結べると言うの?」
天使族達が驚くのも無理はない、俺達も移動の際その位の時間を要している、
地図を見たが・・確かに直線でつなげばその位の時間での移動は可能だろう、
3日が半日に短縮されるんだからな・・驚くのも無理はない。
さらにアズミが気合いれて話を続ける。
「彼らの技術があれば「新幹線」は実現可能です、これはもう革命です、
新幹線は船のように寝泊りする必要がありませんので大幅に経費が浮きます、
さらに警備も集中できて負担も大幅に減らせるのです!」
確かに船員の経費は馬鹿にならないだろう、それに3日は・・片道だけだ、
往復を考えたら6日分の経費がいる、それが1日分で済むんだからな、
これは警備にも同じことが言える、だが問題もあるが・・
ここでアリーゼがアズミに尋ねる。
「時間が短縮されての経費削減はわかるわ!でも船員たちはどうするのよ?
彼ら彼女達も生活があるのよ!失業したら海賊や盗賊にもなりかねないわ!
そうしたら治安が乱れるじゃないの!それはどうするのよ?」
「ご安心ください、彼らの仕事を奪う気はありません、むしろ逆です、
忙しくなるので・・むしろ人員を補充しないと追いつかないのです」
「えっ?どういうこと?」
「船での遠距離輸送は時間もかかり・・海賊に襲われる事も多々あります、
船ごと拿捕されたら貿易どころではありませんので遠距離輸送は抑えます、
その代わりそれらの船には移動してもらい近距離輸送に徹してもらうのです」
この言葉を聞いて・・俺はある程度アズミの考えを理解した。
要するに・・
例えるなら広島の宮島、島と本土を複数の定期船が往復して大勢の人を運ぶ、
これの応用で大量の人と物の動きを活発にすれば貿易規模はさらに拡大する、
航路が決まっていれば発着時間も計算できるし警備も容易になる。
それに貿易規模が拡大すれば関連の商売人も集まりさらに活性化するだろう、
それらから幾らかの税金や輸送費を徴収すれば船員たちの給料も賄える、
さらに飲食店等も必要になるだろう・・確かに人手は大量に必要になるな。
ここで豆知識パートⅡ!
ちなみに俺達は輸送機やタンカー等大型の輸送専門関連は造っていない、
最大の理由は危険だから、武器を持つ軍艦でも魔物の攻撃で損傷が出る、
図体が大きく武器が乏しいタンカーだと魔物の的となり沈められるからだ。
輸送機に関しては・・
さらに滑走路と環境の問題で断念、遅く大きくうるさいので的になりやすい、
戦闘機はカタパルトとフックを使って1000m級の滑走路で抑えている、
ただ輸送機はカタパルトで離陸は出来るが1000mでは着陸が出来ない。
滑走路を延長する案も出たが・・各種族から環境に悪いと反対され断念、
戦闘機はまだ我慢できるが輸送だけの為に延長するのは我慢できないそうだ、
いざとなれば自分達が運ぶからと言って陸路と海路しか認めてくれなかった。
豆知識パートⅡはここまで!
となると・・
肝心の6天王たちの取り分をどうするのかな?
俺の考えを察知したかのようにアズミが答える!
「みなさまの気になる手数料ですが・・6天王様一人に付き全年間取引額・・
総額の3%ではいかがでしょう?もちろんコウたちには別途優遇します、
列車の運行や整備等があるので12%用意させて頂きます!」
!!!
天使族達にしてみれば・・・
関連のない取引も含めた年間3%は十分すぎる・・魅力的な数字だった。
今迄は取引額の3倍とはいえ・・高額のため取引中止も多かったからだ。
俺達は・・
列車の整備等で出費が嵩んでも各駅の物販等で補えるため・・
年間12%は・・十分採算が取れる数字だった。
ギルドは・・
天使族6人と俺達を合わせて年間30%の数字でも採算が取れた、
輸送と整備・警備など高額を要する出費の心配がないからだ、
貿易の相場は5~60%の為最低手数料10%は確実に確保できた。
さらに貿易額が増えれば・・
手間はほとんど変わらないので・・
その分だけ儲けが増える仕組みだった。