第3話 迷い晴れ
第一回編集(2022/12/3)
誤字脱字の修正、文章の修正、文章の追加、ふりがなの追加、言い回しなど編集しました。
グデンクラトニアの聖騎士、【ドラグニクル】部隊隊員、ハイ・アルフォナインは動揺を目の前に立ちはだかる敵達に対して必死に隠していた。
それでも思考は全てにおいて憧れている存在一色に染まる。
「(アレクがなぜ……、これはいままでのわがままなんかじゃない。依頼にしても聖騎士が受けるものでも、それをあいつが了承するとは思えない。じゃあ、なぜ……)」
信じたくないが、一人それを命令もしくは頼み事ができる人物がいる。
「(本気で……、【ダモクレス】を手に入れようとしているのか……)」
アレクの幼馴染であり、自国の王。
「(くそっ……、戦争でもする気かよ)」
源素の流れに迷いが生じる。
それに気が付きもしないまま、翳した手の先に今だ座り込んでいる一人の生徒がいる。
グラインド・リキュール・アミラ。
学園長であるイェールから知らずに再試験に巻き込まれた生徒。
学園一位の座に君臨しているであろう、この生徒を始末してしまえば、生徒達に一気に動揺を与えることができる。
「(俺は……、グデンクラトニアの人間だ)」
王が望むなら、聖騎士として決断しなければならない時がある。
掌に源素が集中していく。
「(……………………)」
――役割を果たせ。
まるで、言い聞かせるように覚悟を決め――――ようとした瞬間、掴まれた肩がおもいっきり左右に揺さぶられた。
「どどどど、どうするよっ⁉」
いまだ正体不明の存在、そんなわけのわからない存在が、動揺全開、焦りMAX、おおっぴろげに慌てふためいて、邪魔をしてきた。
「お、お前なっ!」
「そ、そうだな、こんな時こそ逃げることを考えなくちゃ!」
「は、にげ……、違うだろ! こんな時は――」
「考えろっ、考えろっ、こんな時こそ、自分勝手に逃げることだけ考えろ!」
どこかで聞いた言葉。
それを聞いた瞬間、
「はっ、ははははははははっ! そうだよな、こんな時こそ勝手に行動するべきだよな!」
アルの迷いが消えた。
翳していた掌は力強く握られる。
「とっ捕まえて、今度は俺が教えてやる! んでもって、ぶん殴る」
聖騎士は守る為に存在しているってことを。
だから今は、
「シルフィっ!」
『やきもきさせてくれるわね、どうするの?』
現れた蝶のような羽根に緑掛かった長い髪の風の上位精霊が、アルの頭上で舞う。
「今は全力で逃げるぞ!」
『そ』
風が辺りを取り囲んだ。
そんなわけで四巻のプロローグはここまで、次回から本編突入になるはずです!
お付き合いぜひともよろしくお願いしまーす!




